(前回からの続き)
これまで綴ったことからすると、約2兆元(日本円換算で約33兆円!)もの巨大債務を抱える中国の大手不動産会社「中国恒大集団」(China Evergrande Group)の破綻は、ほぼ避けがたいと考えられます。となると、同社債務の大半はデフォルトとなるのでしょうが、中国(当局)のことですから、わずかに残った同社の資産は自国の債権者救済に回すでしょう。その逆に、外国人投資家の返済順位はボトム、というわけで彼ら彼女らは恒大につぎ込んだマネーのほぼ全額を失うことになりそうです(?)。その損害額は195億ドル、日本円で2兆円あまりとなります・・・
もっとも前述のとおり、その程度の(?)金額であれば、(最近の金融市場はちょっとしたことで何が起こるかわからないので正直、自信はありませんが、)それほど大きなリスクにはならないでしょう(?)。が、問題は・・・中国では第二、第三の「恒大」が続々登場してきそうなこと。上記のように、恒大の債務危機は、これ以上の不動産バブルの膨張をおそれた当局が「三道紅線」(3つのレッドライン)と呼ばれる不動産融資規制を敷いたために生じた面があります。ということは当然、恒大の同業他社も一転、厳しい経営状態に直面しているであろうことが推測されます。
実際、先月あたりからは、株価が急落したり、地方政府に公的支援を要請する文書がネットに流出(って真偽は不明?)したりする会社が出てくるなど、中国の不動産関連企業は全体として恒大と同様の危機的状況を迎えつつあるようです。まあそりゃそうでしょうね、いきなり、負債を自己資本の100%までに減らせ!って急に命令されて、はい減らしました、なんてサクッとできる会社なんて、まずないでしょうから。ということで多くは、見た目のバランスシートだけは言われたとおりにして、それ以上の負債は簿外に隠しているとのこと。恒大も自己資本に対する資本比率は6月時点で177%と、公表値(もちろん100%)を大きく超過しているそうな・・・(トムソンロイター)
といった感じで、同国の不動産業界は、恒大に代表されるように、いまや構造的な資金繰りリスクに見舞われているとみるべきでしょう。そして不動産セクターは、中国のGDPの約1/4を占めています。そんな大きなセクターがこうして激しく動揺すると、不動産の含み益が急減し、あるいは不動産債権が不良化し、それによって資産効果が失われ、消費や投資にも強烈な下押しの力が働いて、中国経済を一気にシュリンクさせそうです。そうなれば他の様々な業界の企業等の資金繰りまで悪化して・・・最終的に、そのダメージは欧米投資家に及ぶことは避けがたい・・・のでしょうね・・・
ということで、恒大の債務危機とは、現在、欧米投資家が抱える、少なく見積もっても5千億ドル超もの対中債権全体の不良化と、ほぼイコールである、といっても過言ではないでしょう。このスケールは、なかなかにスゴいですよ・・・