(前回からの続き)
ここまで綴ったように、戦後のアメリカの通貨ドルの信認を維持する目的のスキームは「金本位制」→「石油本位制」→・・・→「不動産本位制」(土地本位制)と変遷してきたといえるわけですが、1971年の金本位制の終了(「ニクソン・ショック」)後に開始された石油…そして不動産…は前述のとおりインフレに「甘い」(受容的・喚起的だ)から、これらのもとでは、どうしてもドルの価値の低下のペースは速まってしまいます。
にもかかわらず、ドルはいまでも基軸通貨の地位を保っています。本来ならば、金…以降は上記のとおりその価値は下がる(インフレになる)ばかりだから、ドルはもっと早くその地位を失っていてもおかしくはない・・・はずなのに。ということは、この間、ドルのインフレ化を相当程度食い止める効力のある仕組みが働いてきた、と考えるのが自然でしょう・・・って石油…や不動産…以外で・・・
そのあたりに関するところは本ブログのあちこちに書いていますが、ドルを支えるべき「〇〇本位制」という見地から指摘できるねらいは次の2点。1点目は、日本にドルと米国債を買わせること、2点目は、日本に買わせたそれらを売らせないこと、になります・・・っても、これらは表裏一体で同じことですけれどね・・・
で、1点目。ニクソン・ショック以降の為替取引は、それまでの固定相場制(1ドル360円)から変動相場制へと移行しましたが、こちらの記事等で書いたように、円はその後、対ドルでほぼ一貫して上昇し、一時は同80円以下の円高ドル安になりました。これ日本からみれば、同じ360円で4倍以上のドル(1ドル→)4ドル超)を買えることになります・・・が、とはいっても、この為替差損リスクがあるために(ドル建て資産を含む)ドルに手を出そうという気にはなれないというもの。それでは上記のねらいの達成が危うい・・・となって、その買い手として登場するのが「日本」・・・政府となります。もちろん、上記リスクの手前そのへんは正直にはいえないので、ドルを買い支えることを正当化(?)するべく円高リスクを喧伝するわけです。つまり・・・円高ドル安は輸出企業の円換算の収益を減らすうえに産業空洞化等を引き起こす・・・から、その進行を食い止めるために円売りドル買い市場介入を行います、といった具合・・・
次に2点目。これは橋本龍太郎元首相の米国債売却に関する以下の発言等から察しが付くでしょう。1997年6月、訪米中の同元首相が大学での講演の際、聴衆からの質問に答えるかたちで、大量の米国債を売却したいという誘惑にかられたことが幾度かある、と述べました。もっとも、アメリカが世界経済に与える影響を理由に挙げて、米国債を売って外貨準備を金(ゴールド)に替えようとしたい誘惑に屈することはない、と続けています(しかし、大量の米国債ホルダーである日本の首相がその売却に言及したことが大きく注目され、米株価は一時下落しています[以上Wikipediaより])。これ・・・つまりはそういうこと―――(わが国としては本心ではドル・米国債を手放して金に替えたいけれど)アメリカが日本にドル・米国債を売らせないようにしている(のが分かっているから仕方なくこれらをホールドし続けている)ということ―――ですよね・・・