木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

味方も敵も蝕む「アメリカの戦争」。

2011年02月06日 | Weblog
「枯葉剤の傷跡を見つめて」。
先週のNHK教育テレビの特集。
坂田雅子さんの作ったドキュメンタリー映画『花はどこへ行った』がマスコミの注目を浴びたのは2008年。
ベトナム戦争でアメリカ軍が使った枯葉剤が、その後いかに悲惨な傷跡をのこしているかをベトナム現地に取材した映画だったが、坂田さんの映画はそれから静かな広がりになっていった。
あの映画ではベトナム枯葉剤を浴びた親から生まれた子供達にさまざまな障害が出て、その実情を冷静に、自分の主観を抑制して伝えていて、それが見る者の心に深く沁みる映像になっていた。
実は枯葉剤の被害はベトナム人だけを襲ったのではなく、ベトナムで戦ったアメリカ兵をも蝕んでいた。
坂田さんの夫だったグレックさんはまさにその1人だったわけで、劇症肝臓ガンとも言うべき症状で亡くなっている。
枯葉剤を浴びたベトナムからの帰還兵から生まれた子供達にその影響と思われる障害が現れていた。
その1人ヘザー・バウザーさん(38歳)は、片足が欠損し、両手の指にも欠損部分がある状態で生まれた。
彼女の父は「子供まで戦争に連れて行ったとは」と、嘆き苦しんだ。
そして彼女の人生は「何でこんなことに」という苦しみと差別の中にあった。
しかし彼女はパートナーに恵まれ、二人の子供も得た。子供達は元気で過している。
アメリカでも上映された『花はどこへ行った』。これを見たバウザーさんは一歩踏み出し、ベトナムにおもむき被害者やその家族を訪ね対話する。
坂田さんがそれに同行し、この番組ではその過程を伝えた。
アメリカが次々に起こす戦争は相手とされた国や地域の人々だけでなく、戦争に狩り出された兵士にも将来にわたっての被害を与えていることにアメリカ人自身がもっと目を向ける時が来ている。
国内での核兵器製造工場での放射能被害に枯葉剤、そしてイラクで使った劣化ウラン弾。
自国民の心身を将来にわたって蝕む戦争と兵器製造に終止符を打たなければ、アメリカのこれからは暗い一方だ。
ベトナムの「枯葉剤被害者の会」の推計では枯葉剤被害者は300万人。その内ベトナム政府によって被害認定されているのは60万人だという。
この枯葉剤を製造した37の化学薬品会社を訴える裁判を04年にベトナム原告団が起こすもアメリカ連邦地裁は却下している。
バウザーさんは今、第二世代の枯葉剤被害者の肉声を聞く活動を始めている。
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