原爆の被害を覆い隠すために進められた「原子力の平和利用」という方向性。
2度の原爆被害を受け、その後も第5福竜丸の乗組員がビキニ環礁での水爆実験の際の「死の灰」を浴び、機関長だった久保山愛吉さんが死亡するという悲劇を体験した日本。
他のどの国や地域よりも「核の被害」に敏感であるはずの日本が、今日再び「原発事故」により破滅的被害を受けるに至ったのはどうしてか。
元外交官で、広島の平和研究所で仕事をしていた浅井基文氏が「原子力平和利用神話」と題して解説している。
初めて、実験の意味もあって日本に原爆を投下したアメリカはその被害の実態が日本から世界中に発信されることを恐れた。
そこで「原子力の平和利用」という考え方を広める必要があった。
「原子力の平和利用」という考え方は、原爆被害の生々しい現実が強かった1950年代に、被爆者の団体にすら容認された考え方だった。
私は手塚治虫さんの漫画は読んでないが、「鉄腕アトム」はまさにアトム=原子だし、ウランちゃんという少女も出てくる。
手塚さんの中にもそんな考え方があったのかもしれない。
太平洋戦争で、アメリカに徹底的にやっつけられた日本。それまで日本を支配していた階層の中からアメリカの協力者になることによって、敗戦後も変わらず支配層として生き延びようとした人達がいる。
その中の一人正力松太郎(読売新聞社長・後科学技術庁長官)は、アメリカの意を受けて原子力の平和利用→原子力発電所の建設を強力に進めた。その結果地震国日本での「原子力発電所」の林立となる。
私は原発で使われた使用済み核燃料が強い放射線を発し続け、その処分の方法がない状態での「原子力発電」の恐ろしさは感じていた。
しかし今回の事故で、いろいろな解説を見たり聞いたりして、「原発」の問題点はまだまだいろいろあることを知った。
「原発」は一度運転を始めたら、その出力を下げたり、また再起動したりすることがむつかしく、また時間もかかる、そのために定期点検で止める以外はとにかく昼も夜も運転し続けなければならない。そのための「深夜電力の利用」であり、「オール電化住宅の普及」だったのだ。
「原発」を稼働し続けるために、多くの火力発電所が止められている。
火力発電は地球温暖化の元凶CO2を出すが、原発は出さない、だからクリーンだと言うが、放射能を出すんじゃダメでしょう。
原子力発電で発電量の3割をまかなっているというのは、そういうふうに意図的にされているということだったのだ。
福島原発の30キロ圏内にはもう戻って元の生活をするというのは無理だと思う。
原子力発電所の立地には最初大反対が起こる。
それが札束を積んで、「安全だ」とウソを言って、住民は分断され、沈黙させられていく。
使用済み核燃料の保管場所を引き受けさせられている青森県の六ヶ所村は過疎の村で、結局村に残っていくのは高齢者ばかり。
国と大企業が手を組んで迫って来ればとても対抗できないのだ。
津波と原発事故でこれからゴーストエリアが増えるだろう。
日本列島の地域の形が変わってしまう。変わらざるを得ない。
首都圏で実施されている「計画停電」だが、あまりにこの地域にすべてが集中されていることの危うさが浮き彫りになった。
これからの日本は分散して住むことを考えなくてはならないと思う。