木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

社会保険料の負担でも金持ち優遇のカラクリ。

2012年02月25日 | Weblog

社会保険料でも優遇されているお金持ち。
元大蔵官僚の経済ジャーナリスト武田知弘氏の「週刊金曜日」誌上での連載も9回目をむかえた。
今回のタイトルは「金持ちの社会保険料負担率アップ」を。
最高税率が小泉・竹中コンビの「構造改革」で下げられたことを問題にしない民主党政権、経済評論家や経済学者及びメディアであるが、社会保険料の負担率でもお金持ちは「応能負担」をしていない。
今、将来の年金はどうなるのかと大問題になっていて、だから「消費税」という話に持っていかれそうになっているのだが、ここにも「落とし穴」があった。
現在の社会保険料は原則として収入に一律に課せられている。たとえば厚生年金の場合は約8パーセントである。
そして社会保険料の対象となる収入には上限があって、厚生年金の場合は月62万円。つまり62万円以上の収入がある人はいくら収入があっても62万円の人と同じ額の社会保険料しか払わなくていいのだ。
毎月620万円もらっている人の保険料は0・8パーセントになる理屈だ。普通の人の10分の1である。
社会保険料の掛け金があまり多くなると見返りの方が少なくなるという理由でこんなことになっているのだが、そもそも社会保険料というものは国民全体の生活を保障するために各人が応分の負担をするという性質のもであるから、人によって掛け金よりももらえる額が少なくなっても仕方の無いもの、当たり前というふうに考えなければならない。
掛け金に応じて見返りがあるのなら、それはいわゆる民間の年金保険とかそういうものになる。
現在の年金問題で真っ先にやらなくてはいけないのは金持ちの社会保険料の負担率を他の人と同じ率に引き上げること。そうすれば年金の財源はすぐにまかなえる。
国税庁の08年の民間給与実態調査によると、会社員で年金保険料の上限を超える年収800万以上の人が12・2パーセントもいる。これらの人が他の人と同率で年金保険料を払うなら概算でも5兆から10兆円程度の上乗せとなる。
現在年金保険料収入は25兆円前後なので一挙に2割から4割増しになる。
これに自営業者や配当所得者、不動産所得者の社会保険料を上乗せすれば10兆を超える財源が確保でき、年金問題の財源問題が解決する。
武田氏は言う。「社会の恩恵を最も受けているのは金持ちである。彼らは日本の社会が安定し、順調に経済運営が行われているからこそ金持ちになれたのだ。だから社会保障に対して相応の負担をしなければならないのは当たり前のことである」。
武田氏は大蔵省でも税務関係部署にいたようで、その経験から「金持ちは税金に非常に渋い」ということを強く感じたという。
これは一般的にも「金持ちほどケチだ」とはよく言われている。それをイメージではなく、実務で体験してきたということだ。
金持ちは「税金は無駄な支出」と思っており、税金だけは絶対に払うまいとしているように見えるという。「税金には費用対効果がない」と思っていて、その典型が財界だ。
自分達の言うことを聞いてくれる政党や政治家には多額の寄付をするが、法人税は下げろと迫る。
「貧乏人から1万円の税金を取るより金持ちから1円の税金を取る方がむつかしい」のだそうだ。
それだけよく税金に関して研究していて、今のところ「消費税は公平な税だ」と人々に思わせることに成功している。
「金持ちや大企業は放っておいたら限りなく増長する」だから規制をかけなれればならないのだ。それが政治の仕事である。

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ドラマ『平清盛』に民主党政権の無能振りを見る

2012年02月19日 | Weblog

NHK大河ドラマ『平清盛』の評判がかんばしくないとか。
やれ画面が汚いだのとまるで自分達の地域の観光宣伝と勘違いした知事発言もあったりして。
清盛を主人公にした大河ドラマはたしか吉川英治原作の『新平家物語』があったと思うが、どんなドラマに仕上がっていたか、見ていないのでわからないが、
私はこの時代の混乱ぶりに対して、朝廷にたむろする公家達が何の方策も出せず、自分達の荘園のあがりさえ確保されれば他はどうでもいいという態度に現在の民主党政権の無能ぶりと重ね合わせられる気がしている。
そこがみんな気に入らないのか。英雄のすっきりした物語を見て、自分が英雄になった気分にでも浸りたい人が多いのか。
私は昨年までカルチャーセンターで「源氏物語」の講座を受講していたが、講師先生によると、源氏物語の書かれた時代、すでに非常に治安が悪く、貴族の屋敷はしょっちゅう放火と盗賊の被害にあっていたとか。
それでも大した対策も取らず、貴族達は贅沢な遊びにふけっていたとか。
警備のための武士を雇うようにもなっていくのだが、武士というものはろくに教養がないので、貴族達は彼らを馬鹿にしていたのだけれど、清盛の父の時代ぐらいから彼ら無しには政治も治安も回らなくなっていった状況をこのドラマは描いているわけだ。
まず権力を握った平氏だったが、公家風にあっという間に染まってしまい、京都と距離を置いた東国に政治の中心を移した源氏により本格的武家政権が誕生したと、これは日本史の教科書の解説だが。
しかしまた室町幕府は政治の中心を京都に置き、あの天皇の権威など否定する勢いの信長でさえ、やはり京都を目指し、天皇の権威を利用した。
天皇とその周辺の権力と財力が決定的に無力になるのは江戸時代に入ってからのこと。
その最後の天皇の権威と文化の集大成を示したのが後水尾天皇の作った修学院離宮だったと、NHKの「美の饗宴」という番組で知った。
京都市郊外の棚田も取り入れた東京ドーム何個分かの広大な離宮。これだけのものを整備する資金はどこから?と番組の間中、それを考えていた。
朝廷の資金源もこのあたりで幕府に抑えられてしまったのだろうか。

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社会基盤も崩す末期資本主義

2012年02月11日 | Weblog

法人税は下げろと要求するのに、消費税増税には大賛成。どんな税金も払いたくないということで一貫しているならまだわかるが、こんな財界の姿勢を見れば、「消費税」がいかに彼らにとって得な税かということがわかる。
「輸出戻し税」による還付金は消費税が増税になればなるほど増える。
法人税は売り上げから経費を差し引いた利益にかかる税で、赤字経営ならば払う必要はないが、消費税は物を売り買いすれば生じる税なので、赤字でも払わなければならない。
経団連が執拗に法人税下げを要求するのは、利益にかかる税金が少なければ、それだけ株主への配当が増えるからだ。「利益の山分け」のためである。
信濃毎日新聞9日記事では、長野を含む関東信越6県で10年度、国税滞納額のうち消費税が53・9パーセントであることを報じている。
消費税負担が中小企業の経営に重くのしかかっていることを示す数値だ。
日本の国を支えている中小業者の経営が行き詰まっていいことは何もない。
消費税論議の前に「税の応能負担」、「税の公正負担」に正面から向き合わなければ、社会保障もそうだが、社会基盤が崩れていく。
道路・水道・橋といった基本的なインフラも税収が不足すれば、補修もままならなくなる。今年の冬は大雪で各自治体の除雪費用が足りなくなっている。
それも税収の豊かな中央の自治体ではなく、疲弊した地方ほど大雪に苦しめられているのだから、弱いところにさらに追い討ちをかける「絶望列島」である。
英米流の資本主義への抵抗は左派だけのものではなくなった。
保守の論客京大大学院教授佐伯啓思は社会を脅かす市場競争として警告している(信濃毎日新聞2月8日)。
生産活動=経済活動がうまくゆくには生産の条件である「生産要素」が安定的に供給されなければならない。
すなわち雇用を確保し、資本の流れを安定化し、食糧と資源を確保し、医療や教育を保障し、人間のつながりやそのための場を確保することが不可欠である、これらは市場の土台であって、市場競争に直接さらされるべきものではない。
全てを奪いつくしては持続的な経済・生産活動は成立しない。
東日本大震災で日本は敗戦の時以来の困難な状況に見舞われている。その日本がどう回復していくのかに関して先人の経験から学ぶと
これも信濃毎日新聞の「善光寺地震にみる震災のあと」という特集記事だが、
1847年(弘化4年)5月の大地震の際、松代藩では5年間限定で18歳から64歳の人に決まった額の納付を課す「課業銭」制度を新設し、被災者支援や復興工事などに使った。これは臨時の復興税というものだろうが、当時は耕地の生産高に応じた課税が原則で頭割りで課税するのは異例のこととあった。
江戸時代は武士階級による「農民搾取」のイメージがあるが、その江戸時代でさえ、災害のためやむを得ず頭割りの税を課したが、基本は「応能負担」である。
有力者ほど多くの負担をする。それが社会を維持するための責務であった。
凶作の時など自家の米蔵を開けて、困窮した人々への炊き出しをした。そんな時に値を吊り上げるために「売り惜しみ」をしたりする業者がいれば、激しい打ちこわしにあった。
今、政府に利己的な要求ばかりする「経団連」という強欲団体が今回の震災に際し、団体として復興のために積極的に動いたという話は聞かないのだけれど・・・。

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社会扶助制度に柔軟性を

2012年02月05日 | Weblog

新聞は「消費税増税ありき」で固まっていて、そういう論を展開するエコノミスト達ばかりを登場させている。
私はこうした「エコノミスト」達は、株式市況とか、為替市場とか、そんな数字ばかり見ていて、実体経済、現場を見ていない人達なのではと疑っている。
1月11日信濃毎日新聞で、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生は「消費税は世代間の受益と負担のアンバランスを均すために必要」だと言い、「所得税負担は現役世代と高齢者の負担割合が9対1と著しく現役世代に偏る。消費税ならば7対3とバランスが改善できる」としている。
この論には武田知弘氏が言う、富裕層にもっと税金を払ってもらうという考え方はまるでないようだ。
金持ちからもそうでない人からも「一律」に税を取ることのどこがバランス改善になるのか。
直接消費税への言及ではないが、早稲田大学大学院教授の川本裕子は、アメリカで起こっている1パーセントの人間が富を独占している状況への抗議活動である「ウォール街を占拠せよ」のデモについて、「アメリカでも格差問題が深刻という捉え方には違和感がある」とけん制し、「自由経済の活力によって成長の追求を優先する路線を再度選択するのか、それとも富裕層バッシングというあまり生産的ではないゲームを続けるのかの選択の問題」と、使い古された論理展開をしている。早稲田の学生はこんな川本先生の考え方を了解するのか。
川本教授がまだまだ信頼しているらしいアメリカでは、大統領選を11月に控えたオバマ大統領が一般教書演説で「中間層に公正な機会を」と訴えた。
オバマは最初のデビューが鮮烈だっただけに、その後のウォール街との妥協の日々により口先だけの疑いもあるが、とにかく中・下層の人々の抗議を無視するわけにはいかず、こうした訴えになったのではと思う。
「アメリカは一つに」というメッセージで初の黒人大統領となったオバマが共和党との対決姿勢を示した(選挙向けかもしれないが)。
公平な責任分担に言及し、共和党が反対する富裕層への増税に取り組む決意を強調した。
また持続可能な経済をめざして、海外流出した製造業を取り戻す必要があるとして、雇用を移転した企業に増税し、米国内で雇用を創出した企業には減税する法人税改革を進める考えを示した。
メディアは「消費増税しかない」の論調ではあるが、中央と地方ではやや温度差がある。
信濃毎日新聞では一掃したい人種であるエコノミスト達を紙面に登場させながらも、ようやく末端消費者と共に中小業者にしわ寄せがいく現行消費税の問題点を記事にしている。
しかし「輸出戻し税」の欺瞞性を正面から論ずる記事はまだ目にしたことがない。
大多数の人はこのことを知らないのではないか。
消費税を上げてもその内の何割かは「輸出戻し税」として、輸出大企業のもとへ吸い込まれていってしまっていて、社会保障には回らないのだ。
その社会保障だが、富を独占する強欲資本主義がはびこっているために経済の停滞が起き、リストラ、失業の拡大で、生活保護世帯も急増している。
この生活保護制度だが、全部もらえるか、全くもらえないかという硬直した制度になっていて、保護世帯に対して「働かないで楽をしている」というバッシングの元になってしまっている。
先進諸国の多くでは低所得者には所得の足りない分を補助する制度がある。
イギリス、フランスなどでは住宅費を補助する制度があり、アメリカなどには食費を補助する制度がある。
これらの社会扶助制度は生活全般の面倒を見てもらうわけではないので、受給のハードルも低く、受給者の勤労意欲も保てる。
日本でも社会扶助制度がもっと弾力的であれば、ホームレスに陥る人も減り、絶望の果てに自殺をはかる人も減るはずだと、これも「消費税」の理不尽を主張している武田知弘氏の言っている事。

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