木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

疑いを氷解させてくれた「戦後史の正体」

2012年08月31日 | Weblog

孫崎亨著『戦後史の正体』を読む。
私の読んでいる地方新聞の読書欄ではこの書は二週続けてベストセラーにランク入りしている。
キャッチコピーは「元外務省・国際情報局長が最大のタブー「米国からの圧力」を軸に戦後70年を読み解く」とある。
高校生にも理解できるようにと工夫した文章で書いたものだという。
戦後歴代の首相を大きく「対米追随言いなり派」と「対米自立をめざした派」とに分類している。
私達普通の日本国民も細かい実態は知らないまでも、アメリカの自分勝手な要求に日本が従わされているなというのは感じてきた。
特にこの数年、沖縄の普天間基地の辺野古移設、TPP参加、そして極めつけは日本にある米軍基地(沖縄のみならず)への欠陥輸送機オスプレイの配備と、その横暴ぶりが目に余る。
「いじめ」の力学そのまま。いじめは相手の言いなりになっていると、どんどんエスカレートしていく性質を持っている。反撃の第一歩を踏み出さなければやがて自滅に追い込まれてしまうというのに。
アメリカに何も言えないストレスを中国や韓国に向けて晴らそうとしているのが、今の日本国民の多くを襲っているマインドのように思う。
このところアメリカの日本いじめもなりふり構わない。ボスも落日を迎えているからにほかならない。かつての余裕がない。
世界一の経済大国は「張子の虎」だ。軍需産業しかない。だから欠陥商品オスプレイの配備を押し付けてくる。
さて孫崎氏による歴代首相の評価だが、まず賛否が分かれるのが戦後、サンフランシスコ講和条約を調印し、長期政権を誇った吉田茂首相だ。
徹底した対米追随主義だと孫崎氏。
確かに吉田首相に対しては評価する人も多いが、その一方でその人間性も含め、疑いの目を向ける人もまた多い。
吉田の孫である麻生太郎首相の品と教養のなさを見せ付けられた後なので孫崎氏の評価に「なるほど。そんなところだろう」と納得する私だ。
日米新安保条約を結んだA級戦犯から復権した岸信介首相を孫崎氏は「対米自立派」としている。
アメリカの情報機関CIAの日本要員だと言われている岸首相が「対米自立?」とはにわかに信じがたいが、戦前の満州国建国とその運営に深く官僚として関わり「昭和の妖怪」と言われた人物は、戦前の夢よもう一度、今度は軍部の暴走を許さずもっとうまくやるという「見果てぬ夢」を抱いていた可能性がある。
「対米自立」をめざしたからといって、それが国民主権の国づくりとイコールということではない。
そしてアメリカに対してまっとうな要求をした総理とその政権はほぼ短命に終わっている。
病気を理由にわずか2ヶ月の在任で辞任した石橋湛山は、アメリカに対して米軍の日本駐留の経費削減を要求した。
日中国交回復を独自外交で実現した田中角栄氏はロッキード社からの収賄事件で首相生命を絶たれた。
アメリカは意のままにならない日本のトップをこうした金の疑惑で辞任に追い込んできたこともこの書では明らかにされている。
アメリカの忠犬となって事件をでっちあげるのは検察組織の中の特捜部だ。
元々、戦後の混乱期に占領軍の指示で、隠匿物資の摘発にあたったという特捜部はそのままアメリカの陰謀組織日本支部となったのである。
この間、特捜部による強引、でっちあげ事件が明るみにでる傾向にあるが、そもそもが「正義の組織」ではなかったのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

情報共有なき敗戦の受け入れ

2012年08月20日 | Weblog

ETV特集「ルポ・原発作業員」
福島第一原発の事故現場で事故処理作業にあたる末端作業員は当然ながら福島の人達が殆どだ。
東電の2次下請け以下は福島の浜通りと言われる太平洋側の地域にある中小企業が事故前も事故後もになっている。
通常運転でも定期点検に入れば、原子炉の中に入って放射能汚染物質をふき取る手作業などで被曝労働をさせられてきたのが現場作業員だが、事故後は更なる被曝に不安を抱えながら、日々を生きるためにはこの仕事をするしかない現実。
目に見えないから不安、という一面と、見えないからこそ作業がやれる、という一面と。
全く不条理を生きなければならないのは戦場の兵士と一緒だ。
目の前で人が倒れ、あるいは肉体を引き裂かれるというわけではないからか、作業員の男達は淡々としているように見えた。
五年後、十年後の彼らに身体の異変が起こっているか否かは、今断定できないが、もし異変が起こっても、東電も国もそれを補償しないだろうし、そういう事態から逃げようとするであろうことが彼らにも見ている私達にも予想できる。
いずれにしても「廃炉」に向けての公共事業はこれからも続く。「原発事故」によって、故郷も人生も奪われた福島の人達が、その事故作業をこれからもになっていく。
地元の土木建設業は、地域の広範な放射能汚染によって、仕事が減り、その分、原発の仕事に活路を見出していくしかない状況だ。
東電の幾重もの下請け構造は傘下に600社を抱えるという。
外部被曝と内部被曝の線量を気にしながら作業はこれからも続く。続けるしかない。
東京あたりで、「原発再稼働」を決めたり、原発の必要性を説く者は、何よりもまず福島の現場へ行って作業参加すべきだろう。被曝限度を考えると作業員はいくらでも必要とのこと。
その苛酷作業をしてなおかつ「原発ないと困る。経済が、産業が」と言えるのか。

NHKスペシャル「終戦、なぜ早く決められなかったのか」
日本が引き起こした「中国侵略戦争」と「太平洋戦争」の犠牲者は昭和20年に入っての半年に集中しているという。
軍や政府のトップにはすでに「どのように終戦に持って行くのか」が緊急の課題になっていたのに、なかなかそれを決められなかったのはなぜかを追った番組。
結局「無責任体制」でありながら天皇制を維持し、今まで通りの支配体制を続けることにこだわったということは知っていたけれど、今回、日本と中立条約を結んでいたソ連が参戦する可能性を、ヨーロッパ駐在の武官が情報として頻繁に陸・海軍に送っていたという事実が明らかにされていた。
これは知る人は歴史的事実として把握していたかもしれないが、一般的には殆ど知られてこなかったのではと思う。
陸・海軍のトップはこの情報を政府(外務省や内閣」に知らせていなかった可能性が高いということだった。
情報が共有されずにそれぞれの組織のメンツを背負って、トップは「無条件降伏」を受け入れられないで、ずるずると日が過ぎていった。
現代の日本国民には中国嫌いが多いが、戦後まもなくからソ連崩壊頃までは「ソ連嫌い」の方が多かったように思う。
その一番の理由が「中立条約を破って、いきなりソ連が参戦し、満州在住の開拓団などがひどい目にあった」という定説だったが、日本軍部は「ソ連参戦があり得る」という情報は知っていたわけだ。
海軍少将で終戦工作に関わった高木惣吉という人物が残した記録によると、高木は海軍大臣の米内光正に「ソ連に終戦の仲介を頼むのでなく、アメリカと直接交渉すべきでは」と進言したが、「ソ連参戦の情報には謀略の疑いがあるではないか。もしそうだとしたら海軍がその責めを負わなくてはならなくなる」というのが米内の答えだった。日本国民の苦難より海軍のメンツの方が米内にとっては重要だったわけだ。
外務省にはこの情報は伝わっていなかったようだが、たとえ伝わったとしても外務省は自省の情報しか取り入れなかっただろうという。
外務省は自省こそ情報収集のプロというわけで、その傲慢さと怠慢は今にそのまま受け継がれている。
この番組ではこのトップ会議に臨席していた天皇がどのような意志を持っていたかは今一つ明らかではなかったが、大臣達が情報を共有できなかったのだから、天皇も別の情報源がない限り独自の動きはできなかったのではと思うが。
天皇が政治的動きをするのは「終戦宣言」以後か。
「沖縄」に忠実な皇国の民を求めた果てに捨てる行動をした昭和天皇。江戸時代までは「琉球国」であって、日本ではない沖縄が永久に米軍に占領されようとも「ヤマトの王」の心は痛まない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地球を救うのは女子力

2012年08月12日 | Weblog

江戸学の田中優子と被曝・原発ドキュメンタリー映像作家鎌仲ひとみ
毎年恒例の長野県須坂市で開かれる「岩波講座」。
ただ講演を聴いて「そうだよね」と納得しているだけではどうしようもないと、昨年の大震災と、野田政権の暴走ぶり以来思っているが、それでも実際生で話を聞くと、目を開かされることは多い。
今こそ、江戸の完全循環型社会から学ぶべきと説く田中さん。それは江戸時代に戻れという意味ではなく、日本の国土に合った生活、産業のあり方を考え、実践していくことであるという。
例えば、今年の猛暑。熱中症で病院に運ばれる人達のことがニュースにしばしば登場したが、エアコンのない江戸時代に、外で太陽の熱でフラフラして倒れる「日射病」はあったかもしれないが、家の中にいて、あるいは夜に熱中症になる人はいなかっただろうという。
家が夏の暑さを考えて風通しよく作られているし、外はアスファルトで舗装されていないので、その熱で夜になっても温度がなかなな下がらないというようなことはない。
大都市江戸で、エアコンもなく、狭い長屋で「熱中症」になる人はいなかったのかしらと思っていたがその心配はなかったようだ。
それは私も自分の住まいで実感している。我が家は土と緑に覆われているので、暑い時は暑いには違いないが、熱がこもるということはない。
原発事故以来、節電の意味もあって、エアコン以外の「涼しく過す方法」をみんな考えたり、紹介されたりしているが、それは昔からやられてきたことばかりだ。
よしずやすだれ、グリーンカーテンになるような植物を植えるなど。
使わない部屋は暗くしておくことも効果があると、新聞にあった。
江戸時代、灯りは行灯。これはろうそくよりずっと暗い。この灯りで書物を読もうとすると暗くて読めない。田中さんは実際やってみたという。
しかし江戸時代の書物だったら、灯りに近づければ読めるのだという。紙の質、そして印字が、小さな灯りでも読めるように作られている。
グローバリゼーションの波を逃れた江戸時代。
第一次グローバリゼーションは「大航海時代」によって開かれた。
戦国時代、織田信長などは積極的にその波に乗り出していた。豊臣秀吉もまた国内を掌握した時点で海外進出を試みる。それが「朝鮮侵略」である。
秀吉は頭がおかしくなったわけではなく、外国に植民地にされる前にこちらから討って出ようとしたのである。しかしこれは大失敗に終わり、この進出の試みで、日本国内は疲弊してしまった。
秀吉後、権力を握った家康は国内で回っていく経済・政策に転換する。それしか道がなかったとも言える。
鎖国もそのための策であった。とにかく植民地化を避けたい。
幕末にも列強による植民地化の危機があったが、それも乗り越えたのに、太平洋戦争の敗戦後、アメリカによる植民地化が着々と進んで、今それが完成しようとしている。田中さんの話を聴いていてそう思った。やっぱり戦争をしてはいけないのだ。

「ヒバクシャー世界の終わりに」、「六ヶ所村ラプソディー」、「ミツバチの羽音と地球の回転」など、放射能、被曝、原発の矛盾など、ドキュメンタリー映画という形で世に問うてきた鎌仲さん。
多くの場で映画を上映してきたが、それらの活動の中心になるのは女性達、とりわけ子供を持つ母親達。
彼女達は「原発がなければ経済が、産業が立ち行かなくなる」などという屁理屈は言わない。
まず命と安全。それがなければ経済もへったくれもない。そこからしか物事は始らない。
それに使える火力や水力、その他の再生可能エネルギーも止めて「原子力が全電力使用量3割」という事実が明らかになっているのに、「原子力発電がないと、日本の産業はどうなるのか」と、思考停止から脱出しようとしない発言をするのは男性ばかりだという。特に壮年以上の。
この地球を守るためには「男はいらん!」と言いたくなるような現状だが。
とにかく女子力が「地球を救う」と感じた今回の講座だった。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカの軍事戦略に徹底的に利用される日本の国土

2012年08月05日 | Weblog

再び中国を敵視することの恐ろしさ。
尖閣諸島の領有権を巡って、「中国憎し」の日本国民が増えているようだ。
尖閣諸島は「日本固有の領土」と政治家も叫ぶが、私は以前にもこのブログで触れたが、この地球上にどの国にとっても「固有の領土」など存在しないと考える。
たまたまそこに存在して、あるいは移動してきて、住み着いたことが全ての始まりだろう。その後は征服したり、されたりの関係から国境が定まっていったのだろうし、いまだにお互い譲り合わない地域はいくらでもあるのだが・・・。
尖閣諸島は中国、台湾、日本が「固有の領土」と言い切るには微妙な場所にある。
ただ実効支配というものはあるだろう。韓国にとっての竹島、日本にとっての尖閣諸島の一部はそれに当たる。
対中国戦争を想定する米国の戦略。
元宜野湾市長だった伊波洋一さんは、直接アメリカの公文書などに当たって、日米安保条約に対するアメリカの考え方を、沖縄に生活しながら考察してきた。
その伊波さんは言う。
アメリカはずっと戦争を続けてきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク、アフガン戦争等々。
アメリカが準備している次の戦争は中国との戦争である。但し自らが前面に立つのではなく、日本を巻き込み矢面にする。
そのために尖閣諸島の領土問題をけしかける。過去の中国侵略の歴史に無知な多数の日本国民は、中国国民が日本をどう見ているかという想像力を欠いたまま、「中国が軍事力を増大させ、それを背景に資源獲得にアジアの海に乗り出している「中国横暴」と考える。
中国の脅威の前にやはりアメリカと軍事協力しなければとも考える。
アメリカは戦争なしには生きられない体質の国だが、中国との戦争の口実には日本を使う。それに乗せられるのは愚かなことと、今私たちは気がつかなければならない。
中国との戦争になれば、アメリカ本土は傷つかないが、日本はメチャクチャになる。イラクやアフガンと同様の悲惨な状態になる。それこそ原子力発電所は真っ先に攻撃対象になる。
しかしそんなことはアメリカにとっては「知ったことではない」。
なぜアメリカは中国との戦争を準備するのか。
「戦争はいかなる時に起こるか。超大国ナンバーワンが別の超大国ナンバーツーに追いつかれると思った時だ」アメリカのアジア政策専門家ジョセフ・ナイの言葉を元外交官孫崎亨氏が自著の中で紹介しているという。
しかし戦争は起きないだろうというのが孫崎氏の見立てだ。
アメリカが対中国政策を転換させ、首脳レベルが相互訪問を繰り返しているからだが、しかし中国をけん制するために日本の軍事力は利用される。
「特定の大国が想定される敵国が力をつけてくるのを、自分に好意的な国を利用して抑制させる」ために。これをオフショア・バランシングという。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする