庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

石油代替のエネルギーの普及拡大のために賦課金制度を。

2015-09-15 | バイオ燃料・バイオマス

再生可能電力の普及促進の目的で、[FIT]制度の導入を法制化し、その財源の費用は、再生可能電力賦課金として、消費者から出してもらっている。

促進効果も表れて国民は制度の有効性については、理解ができている。

同様にして、ジェット燃料の代替になる『再生可能ジェット燃料(バイオ燃料)』の生産を拡大する狙いで、「ジェット燃料賦課金」の制度を創りだすと良い。

飛行機を利用する旅客と航空貨物の料金に「燃料費分の1%」を賦課金として、拠出してもらう制度である。

 

この制度の例として、次の様に賦課金を設定して、使い方を想定してみよう。

仮に日本国内での発着時に給油する「ジェット燃料の価格」を100円/L.とし想定して、年間での給油する総量と400万KLとしておく。

賦課金を「燃料費分の1%」と設定すると、年間で40億円の賦課金の徴収ができるので、この分を『バイオジェット燃料』の促進資金に利用する。

例えば、1リットル当たりの「バイオジェット燃料」に、『40円/L.の買取上乗金』を設定すると、通常のジェット燃料が100円/L.の場合でも、[140円1/L.]で買取ることになる。

この差額の分は、賦課金の徴収資金で賄うので、航空会社の負担は全くない。

 

この制度による効果は、「バイオジェット燃料」の製造事業者が、供給可能な価格が[140円1/L.]であれば、需要に応じて【10万KL】まで可能になる。

もし、供給可能な総量が、10万KL以上になるならば、余剰分は備蓄して次の年の上乗買取りの対象にする。

余剰の備蓄分が積み上がる場合には、次の年の分を『30円/L.の買取上乗金』に変更する。

すると買取の「バイオジェット燃料」は、13.3万KLまで増やすことができる。

逆の場合で、【10万KL分】に応じる事業者が足りない場合は、『50円/L.の買取上乗金』に増額して、事業者の供給意欲をひきだす。

 

この様にして、賦課金の総額の範囲で、「バイオジェット燃料」の供給可能な総量を、事業者の意欲を引き出す様にして、増加させる制度になる。

上記の計算事例では、賦課金の割合は1%上乗せで、総量の占める割合で「バイオジェット燃料」の分は2.5%になる。

賦課金の割合を増やせば、バイオ燃料の普及割合は加速できる制度で、国民の支持と航空機利用者の負担の兼合いで、調整しながら拡大を図れば良い。(続)


再生可能燃料の研究開発の促進策は賦課金制度の導入を。

2015-09-14 | バイオ燃料・バイオマス

電力分野での再生可能エネルギーの促進策は、2011年3月11日の原発大事故によって、国民の意識は完全に転換した。

地下資源の乏しい日本で、安定的に供給が可能な『再生可能エネルギー』には、多くの将来性があると合意ができたからである。

原子力エネルギーの【安全、安定供給、安価の神話】は完全に崩れ去った。

電力に占める再生可能エネルギーの比率を、一気に高める制度として、「固定価格買取り制度」[FIT]制度が導入され、2012年7月から実施された。

 

いまや、この制度によって、民間企業の研究開発が活性化されて、2030年の目標も22~24%にひきあげられた。

さらに、30%までに目標を上げる必要がある、との提言も出されている。

この普及促進策には、財源として電気料金に上乗せする「再生可能電力賦課金」の制度が決められた。

電力の全消費者の負担で、現状では割高な再生可能電力を、事業者のリスクを殆どゼロにできる様に、事業採算性に補助を与える制度である。

この制度は、2000年初頭にも提案されたが、電力会社の猛反対で、導入ができなかった経緯があるが、これが見直されて産まれた成果である。

 

それでは、電力以外のエネルギー源の石油や石炭、天然ガスの代替になる「再生可能燃料」の将来については、どうするべきであろうか。

石油は将来に枯渇の懸念で価格が上昇したままになり、石炭は[CO2排出]削減の必要性から、その対策コストが大幅に上乗せされるであろう。

出来るだけ早期に、市場で受け入れる価格に、「再生可能燃料の量産価格」を引き下げるべく、「国策として合意の制度」を導入すべき段階である。

それには、電力のケースと同じ様に、全部の化石燃料消費者に、『再生可能燃料賦課金』として、一定の割合で料金に上乗せをするのが適切である。

 

例えば、1リットル100円の灯油に対して、1円の賦課金を上乗せする。

同様にガソリン、軽油、ジェット燃料にも、[CO2排出]係数に応じて、賦課金を算出して上乗せする。

ガソリンは0.93円。軽油では1.05円。ジェット燃料では0.97円である。

この燃料代に上乗せして徴収した収入金を、「再生可能燃料の普及促進」のための費用に利用するのである。

具体策は各種あるが、バイオジェット燃料の促進策に利用可能である。(続)


経産省と農水省の確たる方針のないバイオ燃料政策では。

2015-09-13 | バイオ燃料・バイオマス

再生可能エネルギーの重要性は、ますます認識されて、国民のだれもが普及促進には、大賛成の立場である。

しかし再生可能エネルギーといっても、現在は、「電力エネルギー」だけが突出して取り上げられて、社会の話題に上がるばかりである。

太陽光発電が、20年前には一部の篤志家が、自宅の屋根に設置していただけであったが、今では、一般の国民にも理解が進んでいる。

その設備コストは割高で、技術的には未開拓の段階であったから、今よりも、10倍も高い発電コストであったが、技術革新がすすめられた。

 

そして今では、「再生可能電力の固定価格買取り制度」[FIT]の影響もあって、普及が大幅に進んだ影響で、発電コストは目標の2倍程度に下がっている。

もう10年もしたら、[FIT]による助成制度も必要がなくなって、他の電力コストと同等以下になり、経済原則に沿って、着実に普及が広がるであろう。

現段階までの普及に必要な技術開発や、量産効果が生まれる規模への拡大は、電力消費者の料金上乗せにお金によって、支えられてきた。

このお金が助成される制度があったからこそ、30年程度で、独り立ちできるエネルギー技術に育成されたのである。

 

これが、「石油の代替になるバイオ燃料」となると、政府による助成制度は、まったく不備の状態である。

経済産業省の官僚が、長期展望にもとずく技術開発戦略をおろそかにして、欧米の後追いの研究に、補助金を出して失敗を繰り返してきた。

バイオ燃料だから、農水省も所管するとして、それこそ、思いつき的な研究テーマに、申し訳程度の補助金を出しては、無駄使いを繰り返すだけであった。

これは、再生可能エネルギーの将来性について、確たる目標も戦略も練らないママに、欧米の真似をしようとしているからである。

 

再生可能エネルギーで、電力エネルギー分野の技術開発促進策については、各種の補助政策が実施されてきた。

2000年には「新エネルギー特措法」によって、一定割合の「新エネルギー電力」(太陽光、風力、小規模水力)が、電力会社での買取り義務付けが実施された。

これは、電力消費者の料金負担で、再生可能電力の事業者のリスクを減らす目的で法制化されたが、電力会社の抵抗で義務量を低くしたので失敗した。

だが、2000年の初頭に制度化に挑戦した成果が、2012年には実を結んだ。(続)


技術的な課題は実用化済みのオーランチオキトリウム。

2015-09-12 | 海洋産業問題

バイオジェット燃料を、「大型海藻の成分をエサにして、従属栄養性微細藻類を増殖」させて、油脂を製造する方法は、技術的には既に見通しがついている。

大型海藻には、特産のコンブがあり、日本の沿岸部で栽培する方法が研究されて、戦前からも実用化されているので、何の障害もない。

エサに出来る成分の抽出は、既存の技術で十分に事業化ができる。

後の課題は、エサを効率よく与えて、適正な温度条件や水質の維持などの「増殖に最適な条件を選定する」研究が必要な段階である。

 

従属栄養性微細藻類の代表的な「オーランチオキトリウム」は、研究実績もあるので、最適な条件を選定するのに、それほどの時間はかからないであろう。

増殖した藻の油脂成分は50%程度になるので、分離する技術も容易である。

分離した油脂を、バイオジェット燃料に精製する工程は、石油化学産業に任せれば造作もないことである。

この様に既存の技術のシステム化を図れば、航空機のフライトに必要なバイオジェット燃料の供給は、4年間もあれば実現することが可能な段階である。

 

最大の問題である「量産時の燃料製造コスト」が、どの程度に収まるのか、これをできる限り製造実験の段階で、見極めることが必須である。

だが、経済産業省と国土交通省が所管する「バイオジェット燃料」の事業化では、『大型海藻を元の原料にする発想』は、一切、取り入れる姿勢にはない。

大型海藻の栽培の事業所管は、農林水産省であり、それも、下部組織の水産庁の仕事になっている。

その水産庁の中でも、魚類や魚介類の分野であれば、まだ担当部署の力もあるが、海藻となると全く端っこの部門の担当になるので、関心の外になる。

 

ここでも、日本の縦割り行政の弊害が、エネルギー政策を停滞させている。

また、中央の集権の柔軟性のなさが、知識人の欧米偏重、それも、陸上産業にしか目が向かない陸頭に凝り固まって、広い視点の検討が不足してしまう。

日本が世界第6位に海洋面積を持つ、海洋大国であるにも拘わらず、資源としての利用研究は停滞して、陸地しか保有しない国のレベル並みに関心が低い。

まずは、2020年のオリンピックの航空機フライトに、海藻由来による藻類の増殖によって生産される「バイオジェット燃料」を適用するべきである。

そのために、開発工程を正式の【国策研究】に採りあげれば、確実に製造に向けた民間企業の研究開発が活性化するであろう。発想の転換が最初だ!(続)


発想の転換を必要とする藻類培養とバイオ燃料の製造策。

2015-09-11 | バイオ燃料・バイオマス

太陽光エネルギーによる光合成で、「藻類の培養」をして大量のバイオ燃料を製造する計画が進んでいる。

この製造方法では、太陽光の条件により日照率の影響を受けるので、藻類の増殖が進む時間の制約が大きい。

それによって、大型の設備投資した割には生産量が増加しないので、バイオ燃料の量産コストを下げるのに、限界が出てしまう。

アメリカの企業でも、この「光合成による藻類からのバイオ燃料製造」は、不安定であるとして、事業化には向かないと考えはじめている。

 

光合成しないで、エサで増殖する藻類のことを「従属栄養性微細藻類」と呼ぶが、この種類の藻類に「オーランチオキトリウム」がある。

日本ではこの藻類を利用して、バイオ燃料の製造の研究を進めているチームがあり、エサを適切に選定して増殖させれば、良質の油脂が得られる。

例えば、鶏を大量に鶏舎で飼育して、『良質のたんぱく質(玉子)』を生産する様に培養するのである。

「オーランチオキトリウム」は、乾燥重量の50%が油脂であり、増殖させた藻から油脂を絞りだす生産性が良好である。

 

エサとする飼料は、トウモロコシでないことがもちろんだが、陸上の作物を利用するのでは、アメリカの大規模農業に対抗することは難しい。

日本で開発する「オーランチオキトリウム」のエサには、発想を切り替えて「大型海藻」の成分を利用するのが良い。

この様な研究は、すでに地方の大学の有志学者が取組んでいるが、大型海藻に含まれる成分で「オーランチオキトリウム」の増殖に成功している。

この大型海藻は、もちろん、日本の沿岸地域で栽培が可能な種類である。

成分を取り出した海藻の残余は、鶏や豚の飼料にもなるので、一石二鳥である。

 

この様に、日本の国土と環境に適した「藻類からバイオ燃料製造」が提案されているのに、中央の役所や学識者は「光合成する藻類」ばかリに注目している。

この段階で発想を転換して、『海藻の成分をエサにした「従属栄養性微細藻類」の培養によるバイオ燃料製造』の研究開発を、国策とする機会である。

2020年に向けた「バイオジェット燃料」製造の有力な施策として、採りあげるならば、2020年以降の石油代替燃料の開発の主力になるであろう。

もちろん、大型海藻の栽培に力を入れることで、海洋産業の育成にもなる。(続)


太陽光エネルギーで藻類の培養を事業に出来る可能性は。

2015-09-10 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料を陸上の作物で作ろうとすると、【食糧用の作物の栽培地を奪う】コトになる、との議論が必ず巻き起こる。

アメリカの様に耕作に不向きな土地が、圧倒的に多い国ならば、この議論は全く不要になる。

ところが、日本の様に国土が限られた場合には、よほどの生産性の良い植物を選定しない限り、土地利用の優先度が低くなり実施できない。

そこで、陸上の作物ができない様な地域で「藻類の培養」をして、バイオ燃料の原料にする研究が進んでいる。

 

ところが、太陽光による光合成で培養する藻類の場合には、「適切な温度管理」と「最適な炭酸ガス濃度の水」が必要になる。

さらに、藻類によっては、他の種類の藻の侵入を防ぐ必要があるので、閉鎖型の水槽内での培養にする必要が出てくる。

閉鎖型の培養装置にすると、設備の費用がどうして高くなるので、24時間の稼働が必要になるが、太陽光の利用では12時間程度しか光合成はできない。

日本の様に日照率が低くて、半分は曇りか雨では、光合成に頼る「藻類の培養」は、生産効率が悪くなるので、バイオ燃料製造用原料には、全く不向きだ。

 

アメリカの様に年間の日照率が有利な国でも、「藻類の培養」は、なかなか事業採算性の見通しがつかない状況である。

その様な状況のなかで、「光合成しない藻類」を「バイオ燃料の原料」にする研究が進んでいる。

例えばアメリカの「Solazyme社」と「Amyris社」は、光合成しないクロレラを増殖させて【油脂】や『炭化水素』を作らせる。

このクロレラは、糖類を餌にして増殖するので、ブラジルの砂糖工場の「廃糖蜜」を利用することで、生産コストを下げる。

 

つまり、藻類の光合成に頼るのではなく、餌になる【サトウキビからの「廃糖蜜」】を利用することで、間接的に太陽光エネルギーを活かしているのだ。

この様に間接的に「バイオ燃料の原料」を作らせる「藻類を選択」するのが、生産効率を上げる手段として有効である。

培養する藻類に餌を与えて増殖させる設備は、24時間のフル稼働ができるので生産効率は大幅に向上する。

日本の研究者は「オーランチオキトリウム」の藻類を選定して研究している。(続)


鳴り物入りの委員会はオリンピックのお祭りの無責任。

2015-09-09 | バイオ燃料・バイオマス

2015年7月7日に第一回会合を開いた『バイオジェット燃料』の【導入までに道筋検討委員会】は、毎年度2回ずつ進捗確認をする、としている。

全体会合のほかに、「燃料製造WG(ワーキンググループ)」での活動をする。

この事務局には、[NEDO]が務めることになって、バイオジェット燃料開発事業者、石油連盟、航空運送事業者などが参加する、ことになっている。

オブザーバーとして、経済産業省、国土交通省がついて、何をするかといえば、「・オリンピックにおける供給可能量の調査」をする、としている。

 

何のことはない、新技術を開発するわけではなく、2020年時点での「買い取ることができる『バイオジェット燃料』の可能な数量」を調査するだけである。

その可能性のある藻類の培養は、どの様な状況にあるかと言えば、実験室段階での培養は、成功していると公表されている。

肝心なのは、小規模でも良いから、量産を前提とした培養システムで、安定的に効率の良い培養ができるか、にかかっている。

前に説明した、【ユーグレナ社のミドルムシ】は、温度維持と炭酸ガス濃度を大幅に上げる必要があるので、アメリカ大陸の適地で量産する計画になった。

 

日本国内では、IHIなど3社が屋外培養プラントの技術開発に取り組んでいるが、量産時における「バイオ燃料コスト」の公表は一切ない。

多分、実験室レベルの段階を量的に拡大する段階に、大きな難問の壁が立ちふさがっている様である。

その様な技術面の困難を乗り越えるのが、大変な時間と労力、資金が必要になるのだが、経済産業省や国土交通省は、補助金を出して待っているだけだ。

「大量培養技術の確立」との計画では、2013年から始められた開発が、2015年度末には、完成することになっている。

 

微細藻類の光合成による培養での「バイオ燃料」の製造は、出来ることは確実であるが、もっとも重要な量産時の製造コストが、公表されないのは問題だ。

「オリンピック開催時の2020年」には、『供給可能量』を調査するのではなく、【量産時の製造コスト】を明確にしなければならないのだ。

ジェット旅客機が消費する大量の燃料の量産コストが、現状のジェット燃料に近ければ問題にはならないのだが、そう思惑どうりにはいかないであろう。

もしも、燃料費用が2倍~3倍になると、差額の負担はいったい、だれが負うことになるのか。また、ズサンなオリンピック費用にかぶせる気なのか。


バイオ燃料で東京オリンピックへのフライトの構想は・・。

2015-09-08 | 海洋産業問題

2020年までに「バイオ燃料」による航空機のフライト実現を目指して、経済産業省は、「導入までの道筋検討委員会」を設置した。

航空機業界では、世界的に[CO2削減]への取り組みが強くなる中、「バイオ燃料」への取組強化が進んでいる。

日本では、[NEDO](新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に、2008年から、バイオマスのガス化及び液化、微細藻類由来のバイオ燃料製造技術開発などを進めている。

航空会社のバイオ燃料の採用事例としては、2009年の日本航空に続き、2012年には全日空と日本貨物空港が、試験飛行を実施している。

 

この様に、取組を開始してから、かなりの年数が経過しているのに、進展が報じられることが少ない。

その事情は公表されないから、一般国民も関心を持たないまま、2020年はすぐそこになってしまっている。

「導入までの道筋検討委員会」には、ソコソコの民間企業が参加しているが、寄合所帯の連絡組織にすぎないオソレがある。

肝心の「バイオジェット燃料」の【原料作物】をどうするかが、まったく不透明の状態だからだ。

 

日本では、陸上作物で大量に栽培できる余剰の土地はないに等しい。

耕作放棄地などの栽培する「作物の候補」は、いくつかがあるが、最近はあまり積極的に取り組むところもない。

そこで、注目を浴び始めたのが、「藻類栽培とバイオ燃料」の事業の促進である。

候補としては、「食用サプリメントの原料」となる【ユーグレナ社のミドリムシ】であるが、現在までは沖縄県石垣島での事業化が成功している。

しかし、前にブログで説明した様に、大気開放型の栽培では、他の種類の微生物の増殖が、問題になって増産がむずかしい。

 

この防止には、水中に大量の炭酸ガスを溶け込ませることで、ミドルムシだけを成長させることが可能だが、炭酸ガスの調達に費用がかかる。

ついに、ユーグレナ社では、日本での増産には見切りをつけて、アメリカ大陸の適地に進出する方針に切り替えている。

水温が適正《25℃以上》に保て、炭酸ガスが豊富に調達できる地域を選定する。

しか、これでは、バイオ燃料をアメリカから輸入することになってしまう。(続)


日本の品種が中国に渡り改良されてバイオ燃料の生産性向上。

2015-09-07 | 海洋産業問題

大型海藻が栽培される様になったのは、20世紀にはいってからで、東南アジアでは中国での生産が最も多い。

この大型海藻は、日本から渡って栽培技術が広まり、2010年の世界の生産量は514万トン、3600億円を超えている。

日本から広まった大型海藻は、品種の改良が中国で進んで、成長の良い品種が生まれている。

糖の含有量の増加や、含水率の低下などが、「バイオ燃料」に適した改良である。

 

ヨーロッパの諸国でも、大型海藻の栽培がされているが、食料用がほとんどで、ノルーウェーでは年間17万程度であり、バイオ燃料の利用はない。

しかし、大型海藻の基礎生産力(CO2捕獲量)は、陸上農地での作物の3.4倍にもなるので、エネルギー作物としての高い適正がある。

中国での品種改良でさらに成長率がたかまり、含水率の低下が実現しているので、「バイオ燃料」に加工する生産性は、大きく改良されている様である。

海藻にはセルローズはほとんど含まれず、リグニンは全く含まれていないので、バイオ燃料を抽出する工程は、陸上のエネルギー作物よりも有利である。

 

この様にエネルギー作物としての大型海藻が適している状況は、従来からも判っているのに、日本ではバイオ燃料の作物候補に、『大型海藻』が上げられない。

前にも提示したデータだが、中国沿岸での海藻養殖生産量は、1100万トンと超えているが、同時期に日本では年間50万トン程度である。

この様な現状を、このブログでは、「2010年4月27日~5月5日」に懸けて、詳しく解説していますので、是非、再読する様にお願いします。

日本は周囲が海洋に恵まれて、中国よりも海流などの条件にも有利であるのに、水産業の衰退とともに、海藻栽培は放置されているのが現状である。

 

「石油代替のバイオ燃料」の掛け声があると、日本の官庁や民間企業は、すぐに欧米の情報を集める体質である。

それを頭に入れてしまうと、陸上のエネルギー作物にまず注目し、サトウキビ、トウモロコシ、大豆などで大騒ぎをする。

お米の余剰米をバイオ燃料候補に、など、生産性の視点が全く欠けている。

そして、「藻類の培養によるバイオ燃料」の呼び声に、「陸上で培養する藻類」ばかりに関心が集中して、日本に不向きな藻類の研究に奔走する。

いつまで経っても、欧米先行技術の後追い体質から脱皮出来ないテイタラクだ。


バイオ燃料の生産に最適な大型海藻の可能性に着目せよ。

2015-09-06 | 海洋産業問題

この数回に渡って、「藻類から作るバイオ燃料」の必要性と将来性について書いてきたが、現状の一端を掴むことができたでしょう。

しかし、日本のマスメディアの関心が低すぎて、一般の人たちに認識を広める様な潮流にはなっていない。

原油の輸入が途絶えたら一大事として、「シーレーンの確保」には、勇み足の「安保法制の議論」が、華々しく報道されているが、代替燃料の話にはならない。

長期的には、石油代替燃料の開発の方がはるかに重要なのに、技術や事業化の話題になると、メディア関係者は避けてばかりいる。

 

このブログでは、その様な風潮に流されることなく、本当に必要となる技術課題を詳しく論じていくつもりである。

技術開発の後には、それが一般の消費者の手元に届かなければ意味が無い。

それには、重要な事業化の計画と実行が伴うように、実現可能性が必須である。

しかも、政府が援助するのは、事業の初期段階だけで済む様でなければ、いつまで経っても自立できない事業では、お荷物産業になって、衰退してしまう。

つまり、生産コストの徹底的な追及と、継続性が最重要なのである。

 

その観点から、各方面の研究をみると、将来の事業採算性について、何も目途のないままに、研究だけが進んでいるものが多くみられる。

このバイオ燃料の原料となる「藻の培養事業」も、今の研究対象では、アメリカの後追いばかりで、それもこのブログで説明した様に、【三重苦】を背負ったままでは、将来に事業採算性が成り立つ可能性は、まったくない。

ここで、大きく発想の転換をするべき段階である。

それは「海藻類の養殖事業化」が、将来のバイオ燃料産業の入口になるのだ。

 

しかし、読者のなかには、アメリカや欧州諸国が、取り組んでいない研究には、価値を認めない人がいるかもしれない。

そこで、心配を取り除くために、2012年の情報を紹介しておこう。

「大型藻類の海中栽培とバイオガス化」との表題で、「バイオテクノロジーfor

バイオフュエル」誌に掲載された記事がある。

海藻がバイオエネルギーの原料として、検討されたのは、1973年のころで、プロジェクトは10年間継続した。

そのなかで、大型コンブの海洋農場が建設されて、「海藻のバイオガス化」のついての可能性に大きな成果を得ることができた、と報じられている。(続)


世界のバイオ燃料の研究は大量生産時のコスト削減が課題。

2015-09-05 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料の製造には、原料となる植物の大量培養が必須であり、世界中で「藻類の培養」が研究されている。

必要となる資源は、「太陽光」と「水」と「炭酸ガス」で、光合成が行われる。

アメリカでは、広大な国土があるので、太陽光は、十分すぎるほどにある。

周辺に「水」と「炭酸ガス」を供給する設備、つまり、火力発電所があれば、大量の「藻類の培養」が可能になる。

現段階での研究では、商業化ができる段階につき進んでいる状況である。

 

日本の研究組織でも、このアメリカの研究にならって、「藻類の選別」を行っているが、培養の効率や設備の面で、大きく遅れている状況である。

何しろ、日本では土地が限られているので、【土地代が高い】不利な環境にある。

さらに、アメリカの【日照率が良い地域に比べて、日本では半分】程度になる。

梅雨時とか、雨の多い日が続く季節には、藻の培養効率が大きく落ちる。

その上に不利なのは、「炭酸ガス」を供給してくれる、火力発電所が近くにない。

【遠隔地にある火力発電所】で、「炭酸ガス」を分離して輸送するのでは、コストがかかってしまう。

 

この様な状況にあるので、日本で「藻類からのバイオ燃料」の製造には、上記の【三重苦】がのしかかって、生産コストが圧倒的に不利になる。

それに加えて、日本政府のバイオ燃料への取り組みは、まったく、おざなりの姿勢であり、アメリカやヨーロッパの研究成果を様子見しているだけである。

アメリカで事業が成立したら、それを日本に技術輸入すれば、無駄に研究開発の費用をかける必要が無い、という魂胆だ。

高度経済成長時代に、アメリカの後追いをしながら、その中で、日本的な特徴を入れて独自性を出せば、事業採算性は成り立つ、との甘い想定である。

 

これでは、欧米から遅れるばかりで、【日本は取り残される】と言い出した民間企業側では、研究組合を作って開発を促進しようとし始めた。

とにかく、2020年の東京オリンピックには、航空機用にバイオ燃料を使える様にしようと言うのだ。

どのくらいの数量を必要としているのか不明だが、目標の製造コストよりも、「大幅に高い燃料」をなってしまうのは目に見えている。

日本人の特徴は、お祭りがあると、多少の物入りが多くても、とにかく、ご祝儀のつもりでおカネを出す。

こんなことで、本当に良い技術ができるのか。(続)


藻類の培養事業は大気中では問題解決が困難。

2015-09-04 | バイオ燃料・バイオマス

石油の代替燃料となる「藻類の油生産」は、研究開始から障害に直面している。

藻類は、大気中での培養が試みられているが、目的の種類の藻だけを大量に増殖させるのは、想定しているよりも問題が大きいのだ。

大量に増殖させる段階で、他の種類の藻類も混入してくるので、狙いの藻類の培養が止まってしまうのである。

この障害を取り除くことができる手法が、各民間企業で研究されている。

 

ベンチャー企業の【ユーグレナ社】は、ミドリムシの培養に成功して、食用の栄養素として宣伝販売をしている。

しかし、狙いの「バイオ燃料生産」には、なかなか成功する見通しがたっていないのは、この他の藻類の混入防止が難しいからである。

現段階で公表されている防止策は、水中に溶け込む[CO2]の濃度を、極端に高くする方法である。

通常での濃度は、0.4%程度のある状態では、他の藻類の侵入が起きて増殖が進んでしまうので、ミドリムシの培養は止まってしまう。

そこで、[CO2]の濃度を20~30%に上げると、ミドリムシだけ生き残る。

 

この方法で、ミドリムシの大量生産が可能になっている、と報告されているが、[CO2]濃度を上げるためには、水中に[CO2ガス]を大量に溶け込ませる。

このための装置と原料の[CO2]を、運んでくる経費が大幅に増える。

ミドリムシの大量生産には、太陽光と水があれば良い、とされているが、温度の管理や[CO2]濃度を高くする操作の追加で必要なのある。

現段階では、この経費の増加のために、石油の代替に出来る目標コストを、大幅に超えてしまっている。

それで、食品の添加物などの、高く買われる材料の原料として、利用が進みだしているが、将来の『バイオ燃料の原料』になる見込みは難しい。

 

他のバイオ燃料の原料として、試験的に培養研究が進んでいる藻類は多種類だが、「大気開放式の培養」と「密閉された培養水槽」の中を循環させる方式だ。

このどちらにも、[CO2]の濃度を適正に管理する設備が追加で必須である。

その原料になる[CO2ガス]は、どの様にして手に入れるかといえば、現在は石油の精製段階で得られるガスを利用している。

将来的には、電力会社の火力発電で大量に出る[CO2]を分離して、送りこんで利用するのが適切な方策だが、電力企業は協力をしようともしない。(続)


今になっても大手の電力企業は炭酸ガスの削減に逃げ姿勢。

2015-09-03 | バイオ燃料・バイオマス

日本の電力企業は、[CO2ガス]の排出削減には、熱心に取り組む意思が全く薄い様である。

今までにも火力発電によって、大量の[CO2ガス]を出し続けてきたが、分離して吸収したり、隔離する技術への取り組みは、ほとんど研究してこなかった。

原子力発電さえ、大幅に拡大すれば、削減義務を果たせると思いこんでいた。

しかし、福島の原発大事故ですべての原発が停止して、2013年以降は火力発電による[CO2ガス]は、許容されるレベルをはるかに超えている。

 

それ以前の2011年3月まで、[CO2ガス]の削減に責任を持って取り組んできたかと言えば、そうではない。

前にも書いた様に、自社での削減ではなく、海外の[CO2ガス]の削減の成果を、電力消費者のおカネを使って、買取って【削減の成果】としていた。

つまり、【原発依存】以外では、削減する努力を払う意識がなかったのである。

そんな【逃げの姿勢が体質的に膠着】してしまったので、原発大事故以後も、ひたすらに【原発再稼働】を急ぐだけで、国民の強い要求は軽んじている。

 

それだけでなく、[CO2ガス]を急増させる【石炭火力発電所の大増設】を、政府に認めさせようとして、世界に対して詭弁を広めてしまった。

最新技術の石炭火力発電所は、[CO2ガス]の削減につながる、と言う詭弁だ。

最新技術と言っても、ただ、エネルギーの利用効率を最良にするだけで、[CO2ガス]を分離して処理する技術ではない。

この分離して貯留する技術は、『CCS』と呼ばれるシステムで、燃焼で排出される[CO2ガス]を分離してから、地下の滞留層に押しこむ仕組みである。

しかし、日本の国土には、安定的に地下貯留出来る地層など見当たらない。

 

この様に対策の研究に取り組む姿勢を採っているが、先行きは全く見えない。

また、藻類の培養などの培養池の水中に吸収させて、藻類の成長源にする方策が研究されているが、電力会社はまったく関与の姿勢はない。

石炭火力発電では、石炭に木質系の燃料と混ぜて燃焼させて、[CO2ガス]の排出量を減少させる技術があり、一部での実験的な混焼は実施している。

しかし、わずかに3%を混焼させるくらいでは、焼け石に水でしかない。

将来は、30%~50%程度を、木質系に燃料と混ぜる方策が研究されているが、電力会社は様子を見ているだけで、自分の責任ではやろうとしない。

原発の再稼働以外は、他社が研究開発を進めてくれるのを待つだけ・・・。(続)


石油代替のバイオ燃料の研究には冷淡な石油・電力業界。 

2015-09-02 | バイオ燃料・バイオマス

日本で石油代替となる「バイオ燃料」が必要になることは、自明のことである。

しかし、バイオ燃料を作る元になる作物は、どうするのかと言えば、日本の政府は迷走を繰り返すばかりで、将来の国策は一向に見えない。

アメリカは、「コーンエタノール」を事業にした次は、広大な大陸の国土を利用して、燃料用作物からの「セルロースからバイオ燃料をつくる」研究に、多くの国費を充ててきた。

さらに、水槽や培養池で藻類の培養を大規模におこない、大量の油分を生産する仕組みを研究して、事業化の一歩手前までに進んでいる。

 

ところが、日本の現状では、お米からエタノールと作る研究に国費を使ったりしたが、全く事業化に目途はたたなかった。

廃棄木質材のセルロース分を糖化してエタノールを作る方法の研究にも、国費を投入したが、全く実用化にはいたらない。

アメリカの後追いの研究ばかりに、国費を投入する愚策を繰り返して、迷走しているだけであった。

民間企業の視点では、「藻類の選定」を適切にすれば、陸上の作物よりも、圧倒的に藻類の方が、効率良く燃料を得られるとして、研究に取り組んでいる。

 

その一部が、朝日新聞の夕刊(8月31日)に掲載されたが、主な取組を紹介する。

鹿児島市にIHI(本社・東京)が1500㎡の培養池を作り、屋外で育てる方法で培養の実験をしている。

愛知県のデンソー(自動車部品大手)は、増殖が速い種の藻類を培養実験を続けている。

福島県の南相馬市では、筑波大学などが、「土着藻類」の培養研究を進めている。

沖縄県石垣島では、ミドリムシ《ユーグレナ》の培養で事業化を目指して、改良研究に邁進している。

 

いずれも、太陽光と水があれば、培養出来るが、大きな問題は、培養に必要な養分と【炭酸ガス[CO2]】が必要になることだ。

これは、培養の速度が速くなるほど、水中に溶け込んでいる【炭酸ガス[CO2]】が藻に吸収されるので、不足気味になる。

しかし、自然界にある空気からでは、とても足りなくなるので、近隣の火力発電所から出る【炭酸ガス[CO2]】を分離して、水中に溶け込む様にする設備が必要になる。

しか、電力会社は、それに協力する気配もない様だ。(続)


輸送機器用の代替燃料の研究がやっと注目される時代に。

2015-09-01 | 快適エネルギー社会問題

再生可能エネルギーと言えば、今ではだれでも、「太陽光発電」や「風力発電」などの「電力エネルギー」のことが、頭に浮かんでくる。

それは、日本の場合は福島の原発大事故の影響で、電力の供給が直接に生活に影響した経験が、身にしみているから当然である。

しかし、日本はかっては石油危機に見舞われて、中東からの石油の輸入がとだえる危険性に遭遇した時期があった。

エネルギーは電力だけでなく、「輸送用機器の燃料」や、「暖房や熱利用の燃料」も、生活に直接響いてくる、経済の基本的なインフラなのである。

 

日本で石油の代替になる燃料は、バイオ燃料と言われるエタノールが、世の中の話題に上がった時期がある。

アメリカのブッシュ大統領が、アメリカは石油中毒にかかっているから、早急にエタノールを普及させて、中東からの石油を減らそうとの国策を掲げた。

このエタノール燃料は、原料がアメリカの穀倉地帯で大量に生産される「トウモロコシ」から作られる「コーンエタノール」である。

ブラジルの国策で普及させた{サトウキビエタノール}と違って、このアメリカの国策は、トウモロコシの価格が上昇する悪影響がでてしまった。

 

人の食糧にしたり、家畜の飼料に大量に利用する「トウモロコシ」を、自動車に回すのはけしからん、との批判を大きく浴びてしまった。

途上国の人の食糧を奪う【悪のバイオ燃料】との烙印をおされて、世界中での「バイオ燃料抑制」の議論が起きてしまった。

[サトウキビ]も基本的には砂糖に加工されるので、食糧ではあるが、こちらは【砂糖づけの人】を助けることにもなるので、批判にはならなかった。

それよりも、食糧不足が将来には到来するので、耕作地を奪う様な作物から作る「バイオ燃料」は、基本的に好ましくない、との社会的潮流ができてきた。

 

そこで、耕作地にならない土地を利用する「バイオ燃料」の開発が、世界の主流になってきている。

特に、「藻類の繁殖力」を活かして、バイオ燃料を、石油の価格よりも下げる研究が世界中で盛んになっている。

特にアメリカは、「コーンエタノール」の普及が目標に達したので、今後は補助金がなくなり、「藻類からのバイオ燃料開発」には、大きな補助金がつく。

日本は大幅に遅れて、やっと主要な研究組織で取り上げられる様になった。(続)