バイオジェット燃料を、「大型海藻の成分をエサにして、従属栄養性微細藻類を増殖」させて、油脂を製造する方法は、技術的には既に見通しがついている。
大型海藻には、特産のコンブがあり、日本の沿岸部で栽培する方法が研究されて、戦前からも実用化されているので、何の障害もない。
エサに出来る成分の抽出は、既存の技術で十分に事業化ができる。
後の課題は、エサを効率よく与えて、適正な温度条件や水質の維持などの「増殖に最適な条件を選定する」研究が必要な段階である。
従属栄養性微細藻類の代表的な「オーランチオキトリウム」は、研究実績もあるので、最適な条件を選定するのに、それほどの時間はかからないであろう。
増殖した藻の油脂成分は50%程度になるので、分離する技術も容易である。
分離した油脂を、バイオジェット燃料に精製する工程は、石油化学産業に任せれば造作もないことである。
この様に既存の技術のシステム化を図れば、航空機のフライトに必要なバイオジェット燃料の供給は、4年間もあれば実現することが可能な段階である。
最大の問題である「量産時の燃料製造コスト」が、どの程度に収まるのか、これをできる限り製造実験の段階で、見極めることが必須である。
だが、経済産業省と国土交通省が所管する「バイオジェット燃料」の事業化では、『大型海藻を元の原料にする発想』は、一切、取り入れる姿勢にはない。
大型海藻の栽培の事業所管は、農林水産省であり、それも、下部組織の水産庁の仕事になっている。
その水産庁の中でも、魚類や魚介類の分野であれば、まだ担当部署の力もあるが、海藻となると全く端っこの部門の担当になるので、関心の外になる。
ここでも、日本の縦割り行政の弊害が、エネルギー政策を停滞させている。
また、中央の集権の柔軟性のなさが、知識人の欧米偏重、それも、陸上産業にしか目が向かない陸頭に凝り固まって、広い視点の検討が不足してしまう。
日本が世界第6位に海洋面積を持つ、海洋大国であるにも拘わらず、資源としての利用研究は停滞して、陸地しか保有しない国のレベル並みに関心が低い。
まずは、2020年のオリンピックの航空機フライトに、海藻由来による藻類の増殖によって生産される「バイオジェット燃料」を適用するべきである。
そのために、開発工程を正式の【国策研究】に採りあげれば、確実に製造に向けた民間企業の研究開発が活性化するであろう。発想の転換が最初だ!(続)