日本が周囲を海の幸に恵まれた海洋国家であることは、言うまでもないことであるが、政治家と中央政府の官僚には、全く頭にない有様である。
バイオ燃料の原料にする作物となると、陸上での作物ばかりに話が進む。
さらに、水中での培養が必要な藻類の課題になっても、陸上の培養池での生産しか検討課題にしない。
培養池をわざわざ作らなくてもよい「海藻類の栽培」のことは、最後の段階になっても頭に浮かんでこない位に、【海洋オンチ】ばかりである。
地球上の生物が利用するエネルギーの源泉は、太陽光を利用した「光合成の恵み」であることは、説明するまでもない。
この恵みを利用しているのは、今のところ「陸上の緑色の植物」が備えている『葉緑体基質(葉緑素)』の「光化学反応によって糖が作られる」。
詳しいことは省略して、太陽光によって二酸化炭素と水から炭水化物を創りだす『自然界の化学反応』が、大元のエネルギーになる仕組みである。
人類はこの基本化学反応の元によって生存できるし、繁栄も可能になる。
これからは、食糧だけでなく、エネルギー源も、この化学反応のお世話になる。
今までは、陸上の作物ばかりに注目し、藻類の研究でも陸上の培養にこだわる視野の狭い研究ばかりであった。
大元のエネルギー源(糖類)は、陸上植物からの物質でも廃棄されている下水類で、「浄化時に得られる物質を『従属栄養型藻類』で燃料化」が可能になる。
この研究は、「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」の一環として、2012年からスタートしたチーム(当方大学、筑波大学、仙台市)の成果である。
宮城県仙台市の浄化センター内の試験設備で実験して、下水処理の途中での有機物をエサとして増殖する『従属栄養型藻類』で、オイルの生成に成功した。
まずは、下水中の有機物をエサとする方法であるが、将来に大量に生成するには、海中で栽培できる「大型藻類(コンブなど)」の成分を利用する方法がある。
この研究は、広島大学や、民間企業が研究中であり、実験的には成功している。
この方法で製造する「バイオジェット燃料」が、量産コストの面で既存の「石油系ジェット燃料《ケロシン》」と、同等以下になることを目指すのである。
なぜ、海中の大型藻類を基本のエサに利用する方式が良いか、これからも説明を積み重ねるが、最大の理由は、日本の経済水域内で栽培できるメリットだ。
10年~50年と技術開発を積み重ねると、エネルギーの自給が可能になる。(続)