自民党政権は、原子力エネルギーの国策については、今までの方針を変えないで、とにかく現状の路線を維持する政策をとってきた。
ここに来てついに、高速増殖炉の開発を断念して、原型炉の「もんじゅを廃炉」にする方針に転換するようだ。
1995年の臨界テスト中に大事故を起こして、わずか4カ月しか実験運転ができなかった。
その後も事故続きであったが、政府は税金を投入し続けて、将来の夢のエネルギーを断念するのを引き伸ばしてきた。
しかし、ついに路線を転換する時期に来たと判断して、廃炉にする。
政府は9月21日に「原子関係閣僚会議」を開いて、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」を、「廃炉を含め抜本的な見直しを行う」方針を取りまとめて、転換する。
政府与党や地元福井県の意向を踏まえる手続きを進めて、年内に最終判断する。
この「もんじゅ」の開発と研究費用の累計は、1兆円を超えて、研究成果は、ほぼゼロの状態で終止符を打つことになる。
建設開始は1985年で、1991年には工事が完了して、それ以来、毎年200億円の維持管理費がかかり続けている。
当時は「夢の原子炉」と呼ばれて。日本の将来のエネルギー自給を実現できる「希望の星」であったが、1995年には「ナトリウム漏れ事故」を起こしてからは、不祥事続きで、全く機能していなかった。
政府は何故、このような成功の見込みが全く無い【研究に大金を注ぎ込んできた】のだろうか。
それは。将来は化石燃料の枯渇が迫ってくるから、その時に備えて、「困難な研究開発」でも、取り組んでいるうちに活路が開けるかもしれない、としていた。
名前の「もんじゅは文殊菩薩」に由来して「知恵の象徴」であり、日本の未来を託すに値すると、1985年の当時には期待された研究であった。
2009年には誕生した民主党政権では、原子力発電に依存する割合を、50%まで高めるエネルギーの未来像を描いていたのである。
しかし、2011年3月11日の福島原発大事故によって、原子力利用は破綻した。
それがなくても、2000年代に入ってからの「再生可能エネルギー技術」の進歩は目覚ましいレベルに達して、さらに進化を続けていた。
日本のエネルギー総消費量をまかなえる「潜在賦存量」が、日本の排他的経済水域で、エネルギーを供給できる可能性が高まっている。
電力エネルギーでは、洋上風力発電の技術が進歩して、『すべの電力を日本の沿岸部で発電できる時代』はすぐそこに来ている。
日本の将来のエネルギーを、高速増殖炉のような不確実で危険性の高い「原子力依存」を進める必要は、全くなくなっているのであり、決断が遅すぎたのだ。(続)