2016年の初めに、安倍政権は【格差拡大社会】の行きつまりを悟って、経済再生の目標には、日本全体での格差の縮小に転じる決意をした。
それまでの自民党政権のように、経済成長を達成するのが、日本の豊かさの実現には最優先する目標で、それには、大企業の要求を実現することが優先する。
しかし、デフレ経済が超金融緩和策では改善の見込みはなく、潤うのは大企業と資本を蓄積した富裕層だけである、と眼前につきつけられた。
ここで初めて、底辺で働く人たちの報酬を大幅に改善しなければ、デフレ脱却もできず、自分がしてきた政治が「社会生活を改悪させた」と言われる。
このようになって、格差の縮小を前面に掲げるようになったが、それでも「掛け声の範囲での目標」にすぎない。
もともとは、安倍政権公約の公約では、「デフレ脱却による経済回復」が、第一の優先課題であった。
それ故に、従来の日銀の金融政策には、多くの常識論を覆す覚悟で、異次元の「超金融緩和」政策に転換するように、日銀総裁の人事を行った。
この金融異次元緩和は、大半の人には「円安による痛みをもたらした」が、産業界の輸出依存企業には多くの利益をもたらし、デフレマインドの払拭に成功した。
しかし、この円安誘導による利益は、大企業と富裕層に偏る欠陥があった。
その弊害に初めから気がついていれば良かったのだが、何もしないで「株高傾向に転じた」経済の兆候を景気回復、「デフレ脱却」の成功とうかれてしまった。
所得格差の縮小を実行しなければならない時期の2014年4月に、「消費増税8%」に引き上げて、景気回復に急ブレーキをかける政策を実行してしまった。
賃金も上がらないで、物価上昇目標2%の実現性も見えない段階で、消費購買力を大幅に引き下げる消費増税は、専門家に言わせれば大失敗であったのだ。
この消費税を5%から8%に引き上げる政策決定は、安倍政権の前の「民主党の野田政権」の責任であるが、当時の野党の自民党も賛成したのである。
この消費増税の既定路線どうりの実施が、アベノミクス政策の整合性を著しく損なったのは、今になって明らかだが、前任者の責任にするわけにはいかない。
安倍政権が、本気でデフレ脱却を実現するには、消費増税8%の実施を延期する政策決定の判断を下せば、デフレ脱却に成功していた可能性もある。
その失敗の認識に立って、消費増税10%への実施は、2年半の先送りを決断して、どうにか、デフレへの逆戻りのブレーキを外したのである。
消費増税が、低所得者層に重い増税であることは、従来からもわかっていたのに、民主党の蒙昧な政治家たちの「財源不足恐怖」によって、公約違反も辞さずに強行した結果が、デフレ経済を長期化させた主原因である。
とは言っても、前任者に責任を負わせて言い訳をしている場合ではない。
あらゆる政策を動員して、所得格差の縮小を最短時間で実行するしか無い。(続)