なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

敗血症性ショック

2024年01月24日 | 泌尿器科疾患

 1月17日(水)の当直の時に、施設入所中の83歳男性が救急搬入された。

 日中から発熱があり、施設を運営している市内の病院(同じ法人)を受診していた。点滴を受けたそうだが、詳しくはわからない。発熱だけで呼吸器症状はなかった。もっとも認知症の要介護状態なので、訴えは把握しがたいか。そちらの病院は時間外対応はほとんどできない。

 救急隊の搬入依頼の時は、40℃の高熱と血圧低下(70台)ということだった。肺炎というよりは尿路感染症・胆道感染症かもしれないと思った。

 血圧は搬入時にも70台で、急速に輸液を開始した。一時は98mmHgくらいになった。胸腹部CTを行うと、肺炎像はなかった。右腎は水腎症を呈していて、尿管結石があった。両側腎盂内と膀胱内にも結石がある。

 尿管結石による閉塞性腎盂腎炎で、敗血症性ショックと判断される。泌尿器科救急になるので、泌尿器科常勤のいる病院への搬送が好ましい。

 地域の基幹病院に連絡したが、満床でだめだった。だめもとで県庁所在地の県内有数の市立病院にも連絡してみたが、やはり満床でだめだった。他も厳しいのだろう。

 いったん家族に説明することにした。家族といっても、独身で妻子はいないので、甥が責任者になっていた。なんでも患者さんは高齢になって他県から急に戻ってきたのだという。他に頼める親戚もないので、(仕方なく)面倒をみているということだった。

 病状を説明して、当院でできるだけの治療はするが、とお話した。それでいい、ということだった。

 夜間は検査技師がいないので、血液培養はとっておいていいが、他の培養は技師がいる時になる。末梢静脈が虚脱して点滴がやっとだったので、血液培養2セットは動脈から採取した。

 施設入所者なので第4世代セフェムで治療を開始した。多めの輸液(ただし心房細動・心不全あり)とノルアドレナリン持続静注でどれだけ反応するか。

 翌日までは血圧低値が続いて、乏尿にもなったが、翌々日から解熱して血圧が安定してきた(100~120)。輸液の調整とノルアドレナリンの漸減・中止を行い、22日(月)には尿も出始めて小康状態となった。

 胸腹部CTの再検で確認すると、右尿管結石は自然排石していた。それは良かったが、両側肺に胸水貯留があり、浸潤影を伴っているようだ。

 今度は誤嚥性肺炎の治療(抗菌薬をゾシンに変更)と心不全の治療(ループ利尿薬と抗アルダクトン薬の静注)も開始した。(その後、尿培養でProteus mirabilis ESBLが検出されて、メロペネムに変更)

 

 当院の第4世代セフェムは、セフォゾプラン(ファーストシン)が入っている。これの入荷が難しく、今週初めから処方停止となった。(2月は入荷できるらしい)といって、本来の第4世代であるセフェピム(マキシピームのジェネリック)も入荷は困難らしい。

 院内発症や尿カテーテル留置例の尿路感染症など、緑膿菌などのいわゆるSPACEをカバーして嫌気性菌まではカバーしなくていい場合は、セフェム系第4世代を使用する。それがないとなると、代替薬としてはゾシンかカルバペネムになってしまう。

 

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