なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

出血性梗塞

2019年02月09日 | Weblog

 60歳代の男性が当院に脳梗塞で入院して、リハビリも開始されていたが、今週出血性梗塞となって地域の基幹病院に搬送となった。

 先々週、車を運転中に縁石に衝突して、ハンドルで前胸部を打撲した。交通外傷として当院に救急搬送されて、外傷としては問題がなかったが、頭部CTも撮影されて脳梗塞と判明した。

 対応したのは大学病院からバイトで来ている外科医だった。奥さんに話を訊くと、2日前から歩いていてもよくぶつかるようになっていたという。それで運転していたのは怖い話だ。

 その外科医が脳梗塞急性期として対応できる病院を当たったが、軽症と判断されて受け入れてもらえなかッた。中大脳動脈領域の脳梗塞で脳浮腫もあって軽症ではないが、症状が意識清明・明らかな神経症状なし(厳密にはあるはず)と表現したので、軽くみられてしまったようだ。結局当院入院で経過をみることになった。

 入院後の頭部CT再検で、脳梗塞の低吸収域内部に脳回様の等吸収域が出現していた。一時的に脳梗塞巣が不明瞭化するfogging effectと思われるが、出血も否定できずと読影された。

 さらに頭部CT再検の予定だったが、その前にリハビリスタッフから理解力が低下しているのではと指摘された。すぐに頭部CTを行うと、出血性梗塞を呈していた。

 後から思えば前回のCTの時にMRIで確認してもよかったが、出血量が少量だと経過をみるしかないから対応は同じ(頭部CTで再検)になったのだろう。

 

 ところで主治医は、脳梗塞の原因としてESUSを考えていた。ESUSは塞栓源不明の脳塞栓症embolic stroke of undetermined sourceのこと。

 診断は除外診断で行う。まず画像診断でラクナ梗塞を否定する。次に血管画像診断で頭蓋内外の責任血管に50%以上の狭窄がないことを確認して、アテローム血栓性脳梗塞を否定する。さらに、高リスクの心内塞栓源がないこと、具体的には心電図及び24時間以上の心電図モニターで発作性心房細動がないこと、経胸壁心エコーで心内血栓を否定する。動脈解離などの特殊な脳梗塞も否定する。ESUSの塞栓源としてもっとも多いのは潜在性発作性心房細動になる(要するに発作性心房細動が心電図で確認できないこと)。

 この患者さんは高血圧症・糖尿病・高脂血症・高尿酸血症があり、当方などは単純に血栓性脳梗塞と思ってしまうが。 

 

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