なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

S状結腸癌

2023年08月28日 | Weblog

 8月22日に記載した74歳女性は、CEA・CA19-9の著増がった。腺癌がないかと腹部造影CTを見ると、S状結腸に全周性腫脹があった。

 22日に救急外来の時点で上部消化管内視鏡検査を行って、胃噴門部と胃角部に限局性隆起性病変(正常は似ている)があるが、進行胃癌で転移を来すようにはみえない。

 下部消化管内視鏡検査は、幸い疑っているのはS状結腸なので、グリセリン浣腸120mlだけの前処置で検査できそうだった。23日に消化器科医と相談して、検査の少ない25日に大学病院消化器内科の応援医師に依頼することにした。

 直腸からS状結腸にかけて、胃内の隆起性病変と同様の病変が複数あった。そしてCTで疑われたS状結腸に全周性の腫瘍があった。内腔狭窄で内視鏡はそれ以上口側には挿入できない。複数箇所から生検してもらった。

 外注検査のIL2受容体抗体の結果は636(157~474U/mL)とわずかな上昇でしかなかった。腫瘍マーカーからは、悪性リンパ腫ではなく、腺癌だった。

 S状結腸癌が原発で、左鎖骨上窩リンパ節・胃噴門部リンパ節・腹部大動脈周囲リンパ節・腸管膜リンパ節に転移があり、胃内と大腸(S状結腸から直腸)にも転移巣を形成しているということになる。画像上、肝転移・肺転移はない。リンパ行性の転移ということか。

 

 通常だと生検の結果が出てから家族に病状説明を行うが、全身状態が悪すぎて、その余裕はないと思われた。26日土曜日は日直で病院に来るので、その日は発熱外来で忙しいが、合間に家族説明をすることにした。

 病変が数か月前からあったはずだが、おかしいと気づいたのは8月になってからなので、家族にとっては急激な病状の進行となる。納得してもらえないかもしれない。

 とにかく病状が悪すぎるので、会わせたい人にすぐに連絡して面会してもらうことにした。

 そして本日の早朝に急変して亡くなった。当直の別の内科医が死亡確認してくれた(DNAR)。病室に行くと、すでに処置が終わったところだった。

 家族に、予想したよりもさらに進行が速く、申し訳ありません、と伝えた。

 

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