なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

甲状腺癌

2022年11月18日 | Weblog

 10月11日、20日、27日に記載したS状結腸癌術後再発・多発性肝転移・多発性肺転移の80歳代男性のその後。

 ナイキサンで発熱(腫瘍熱)が治まり、食事摂取できて、トイレ歩行もできるようになっていた(それ以外の時はベットに横臥しているが)。家族から在宅介護は困難で、もし退院できるとしても施設入所を希望するといわれていた。

 現在の病状では、施設入所の適応もあまりない。いったん自宅で過ごして、病状悪化時に再入院の方針となる。

 家族(息子)に来てもらって、リハビリ見学で現在の状態を見せることにした。確かに良くなっているといわれたが、やはり在宅は難しいという。日中はひとりになるから、だった。

 それに、と自分の病気の話をされた。12月初めに大学病院に入院して、甲状腺癌の手術を受ける予定になっているという。

 一見して甲状腺腫(腫瘍)ははっきりしない。どれどれと触診するのも変なので、さすがにそれはしなかった。

 

 健診で高カルシウム血症を指摘されたのがきっかけだった。当初は副甲状腺の問題として精査されたが、結果的には甲状腺癌によるものと診断された。

 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は下記の通りで、甲状腺癌でも認めることがある(数%)。腫瘤触知で発見されたわけではないので、腫瘍サイズの問題としてはいい方かもしれないが、何だかまずいことになっているような気がする。

 当分は入院継続で当院で預かることにした。順調にいっても、息子さんは12月半ばまでは入院しているらしい。

 この時期としては、年末年始は自宅で過ごすというのが目標になる。患者さんと息子さんの病状次第だが、良かったら年末年始の退院を検討して下さい、と伝えた。

 

悪性腫瘍と高カルシウム血症

 悪性腫瘍では経過中にしばしば高カルシウム血症を合併し,時にはこの高カルシウム血症が直接死因となることさえあります。進行癌では比較的多い合併症で、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は機序の面から以下の二つに分類されています。

 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症ではPTH低値、PTH-related protein (PTHrP)高値となる悪性体液性高カルシウム血症(humoral hypercalcemia of malignancy:HHM)と、骨転移に伴う広範な骨破壊による高カルシウム血症(local osteolytic hypercalcemia:LOH)があり、HHM80%、LOH20%の頻度です。

 HHMは、腫瘍細胞が過剰に産生・分泌するPTHrPによって起こります。HHMは、肺扁平上皮癌、乳癌、泌尿生殖器系腫瘍や成人T細胞白血病での発症頻度が高いです。一方、LOHは、肺癌、乳癌などの骨転移や多発性骨髄腫などで、骨転移した局所で腫瘍が産生する骨吸収因子によって起こります。

 

コメント (1)
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