10月27日に地域の基幹病院糖尿病代謝科から、糖尿病性ケトアシドーシスで治療していた64歳女性が転院してきた。
2年前に右視床出血を来して、同院で急性期の治療をした後に当院の回復期リハビリ病棟に転院している。担当は神経内科だが、糖尿病の治療は内科に依頼された。
先方の病院では、インスリンとして持効型+超速効型のライゾデク(朝夕2回打ち)を使用していた。当時在籍していた内科の若い先生(女性医師)はライゾデクが好きで良く使用していたので、治療を担当してもらった。
リハビリ後に退院となったが、退院後はそれまで通院していた内科医院に依頼していた。現在もそこに通院している。
今回は9月25日に右肺炎を発症して、糖尿病性ケトアシドーシスとなっていた。診療情報提供書には血液ガスの所見は入っていなかったが、血中ケトン体の著増は記載されていた。
HbA1cは8.3%で、それまでとさほど変わっていないようだ。肺炎発症と、数日のインスリン注射の休止や食事摂取不良で急性にケトアシドーシスに至ったのかもしれない。
患者さんは認知力低下があり、息子との二人暮らしで日中はひとりになることから、インスリンは持効型のトレシーバ1日1回打ちに変更されていた。(ただ、α-GIとグリニド内服が毎食直前にあり、結構面倒な治療ではある)
転院後は、先方の処方を継続して、血糖コントロールは問題なかった。1か月の入院による廃用症候群としてリハビリを行ったが、軽度の左不全麻痺はあるが、日常動作もさほど困らない。
血中Cぺチチドは先方の検査で0.4ng/mlと低下していて、当院で再検すると0.62ng/mlと少し改善していたが、インスリン依存状態(<0.6ng/ml)に匹敵する。抗GAD抗体は陰性で、体型的にも家系的にも2型糖尿病ではある。CTで膵臓は萎縮していた。ケトアシドーシスにまでなったのは、投与されていたSGLT2阻害薬の影響があったか。
ケトアシドーシスでの入院時の検査で、膵酵素の上昇も記載されていた。血清アミラーゼとリパーゼ(リパーゼの測定は何故?)が上昇していて、肺炎・ケトアシドーシスの改善とともに漸減して正常化していた。診療情報提供書に、特に腹痛・膵酵素上昇についての記載はなかった。(画像上膵炎はない)
糖尿病で膵臓酵素上昇といえば劇症1型糖尿病だが、この患者さんは違う。それでも、何かこの患者さんの糖尿病に関連があるのだろうか。むしろ、ケトアシドーシス自体が膵酵素上昇と関連するのか。
余談だが、2年前の右視床出血は、今回の頭部CTで見ると随分と改善するものだと思った。