今日は日直で病院に出ている。天気が良いせいか、受診は少なかった。救急搬入は1台だけ。80歳代初めの男性が、腹痛で動けなくなったという。
腹部は硬くなっていて、反跳痛やデファンスとはとれない。表現するとすれば板状硬になるが、そこまで硬くないという変な言い方になる。定期的な通院はしていなくて、介護保険の主治医意見書を内科クリニックで書いてもらっているらしい。要介護3なので認知症ありとと判断されているようだ。
付き添ってきたのは息子さんだった。救急隊員の話では、息子さんは飲酒していて、状況を聴取しようとすると、痛がっているんだから早く運べと怒られたそうだ。何とか聞きだすと。患者さんはふだんは外出はしないが、自宅内は歩行できるらしい。親子関係が悪くて話もしないらしいが、今日は自分に腹痛を訴えたので相当痛いんだろうという。
痛いかと聞くと、押さなければ痛くないという。表情からは重症感はあまり伝わってこない。これは検査で決めるしかない。血液検査を提出して(迅速での血清クレアチニンは正常域)、さっそく腹部造影CTを行った。胃腸の穿孔はなかった。膵臓周囲に浸出液が貯留していた。もともと膵自体は萎縮しているのだろうが、膵頭部は腫脹している。
血清アミラーゼが1900と上昇していた。急性膵炎とわかると、判断しかねた腹部所見に納得がいった。飲酒の有無を聞くと、これがよくわからない。以前は3合程度の飲酒があったらしい。最近はと聞いても要領を得ない。息子さんに聞くと、ここ数年は飲んでいないのではという。
総胆管は軽度に拡張しているようでもあるが、胆道系酵素の上昇はほとんどなく、黄疸もない。トランスアミナーゼはAST>ALTで中等度に上昇していた。総胆管結石は画像上指摘できなかった。とにかく原因ほ保留だが、急性膵炎で入院とした。明日可能ならMRCPをやってみるが、動いてできないかもしれない。
息子さんが、救急室から病棟に上がる前に帰ろうとするので、病棟まではいっしょに行ってもらった。病棟看護師さんにいろいろ聞かれて、同じ話を何回聞くんだと怒って帰った。10年くらい前に、アルコール性急性膵炎で他の先生が担当したことがある。慢性膵炎・糖尿病もあるが、今どこの病院に通院しているのか聞けなかった。