なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

透析患者さんの糖尿病治療

2015年09月10日 | Weblog

 透析を受けている70歳代後半の男性が低血糖で入院して、透析を担当している先生(外科医)にインスリンの調整を依頼された。就寝前に何故か混合製剤が入っていたので、それを持効型少量に変更した。まずますの血糖で退院可能だが、もともとパーキンソンがあって動きが悪いため、家族がリハビリをされたので、まだ入院している。

 先日は別の外科医に糖尿病性足壊疽で入院して、処置を受ける60歳代後半女性の血糖コントロールを依頼された。この方は糖尿病腎症で透析を受けている。超速効型インスリンを毎食前になっていたが、空腹時血糖が200~250mg/dlで日中400台になることもあった。以前はHbA1cが7~8%台だったが、数か月前から10%以上になっていた。膵癌の併発はないようだ。

 自分が担当して糖尿病腎症から透析になった患者さんはここ10年で1名しかいない。数年後に透析になりそうな患者さんは3名いて、自分が診ているうちには透析導入にしたくない。他の病気で入院した時に担当することはあるが、透析患者さんを直接診ることはないので、実は透析患者さんの糖尿病治療はあまり経験がない。

 当院で透析担当の腎臓内科医が退職してしまい、大学病院の専門医と、透析に詳しい外科で移植をやっていた先生が透析の診療を担当している。常勤の透析医の確保が一番の課題だ。

 (透析患者さんの糖尿病治療)

 透析患者ではHbA1cが低値になる傾向があり、参考程度。透析開始前に随時血糖180~200mg/dl、グリコアルブミン(GA)値(基準値11~16%)20%未満を目標とする。心血管イベント・低血糖傾向があればGA値24%未満。ただし、ネフローゼ症候群ではGAは低値となる。

 透析液中のブドウ糖濃度は0~150mg/dlで、透析前血糖が高値の場合、透析中に急速に血糖値が低下し(透析液中にブドウ糖が拡散)、透析直後に血糖が著明な高値になることがある。透析中に血中インスリン濃度が低下するため、透析後の高血糖を防ぐため、透析後のインスリン追加投与を要することもある。透析日と非透析日のインスリン投与量と投与時間を変更することもありうる。

 DPP-4阻害薬は、ジャヌビア・ネシーナ・・スイニーは減量慎重投与、エクアは常用量を慎重投与、トラゼンタ・テネリアは常用量で使用。α-GIはベイスン・グルコバイが常用量で、セイブルは慎重投与。速効型インスリン分泌促進薬は、スターシス(ファスティック)が禁忌で、グルファスト・シュアポストが慎重投与。アクトスは禁忌。SU薬も使いにくい。

 とりあえず、無難なトラゼンタ5mgを投与して、追加するならグルファスト、あるいは超速効型インスリンを少量から、それで空腹時血糖が高い時は持効型をごく少量併用する。透析による影響を考慮しながら、ちょっと高めくらいでというところか。まず食前血糖150~200mg/dlまで下げてみよう。腎臓内科でGAを想定しているのを見たことはない(たぶん)。

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