8時過ぎに帰宅すると、僕の分の夕飯が用意されていなかった。
「だってカレンダーに夕飯いらないって書いてあったから」
そんなバカなと見てみたら、確かに自分の字でそう書いてあるではないか。
なぜ、そんなことを書いてしまったのか、だいたいいつそう書いたのか、まったく思い出せない。きっと他の日付と間違えて記入したんだろうと無理やり自分に言い聞かせていたところに、突然ケータイが鳴った。
画面には、以前の鎌倉での仕事仲間の名前が表示されている。
あーーーーーーーっ
今夜は、その時の同窓会だったんだ!
そうか、だから「夕飯いらない」と書いておいたんだ。名前から一瞬ですべての記憶が戻ってきた。
素直に「鎌倉の同窓会」とでも書いておけば、何の問題もなかったのである。ケータイのカレンダーは今日に限って4つもスケジュールが入っていて、最後の一つ、つまりこの同窓会はスクロールしないと現れない状態だったのだ。
今から出ても、お開きまでに間に合わないかもしれないが、
「行きます、行かせてください!」と叫んで、すぐに仕度を始める。
そこへまたケータイがなって、年長者の方が「大船や鎌倉じゃなくて、今晩は横浜なんだから、今からじゃ間に合わないからいいよ」との心遣い。着替え始めた手を止めて、その場にへたり込んでしまった。
本当に申し訳ないことをしました。ごめんなさい。だいたい、この同窓会を今日にしてほしいと指定したのは他ならぬ僕だったのである。そしてもちろん、誰よりもこの日を楽しみにしていたのも僕だと思う(笑)。
それが、どーだ。この大失態、体たらく。涙が出そうだ。
「だいじょーぶ?」
娘が心配そうな顔をしてこっちを見ている。
実は先日も、バイトが始まる時間と家を出る時間を勘違いして、遅刻をしてしまったのを知っているからだ。
こんな年になって失態続き・・・、いや、こんな年になったからこその失態か。いずれにしても、いよいよ笑ってごまかせないカンジになってきたぞ。