「えーと、このセットを」
「あっ、セットはもうありません」
「えっ?じゃあ何があるんですか」
「スパゲッティとカレーだけ」
「プリンは…」
「セットはもうありません」
「いや、プリンだけお願いできませんか」
「セットはありません」
蛭子さん似の店主とこんなやりとりの末、注文したのはスパゲッティ。ただし、スパゲッティなになにかは不明だ。
ここは、おじさんたちの街、新橋にある『カフェテラス ポンヌフ』。
先日アド街で見たこの店のプリンの映像が忘れられず、一人やって来たというわけ。
ところが、夜のセミナー出席前の腹ごしらえという時間がよくなかった。
色が濃くて表面がブツブツしていた何とも美味そうな『自家製プリン』は、単品ではなく、セットものでしかいただけなかったのだ。
すっかり落胆していると、突然カウンターの向こうからジャージャーと心地よい炒め音が聞こえてきた。
おぉ、これは!
間もなく僕の前に現れたのは、いわゆる『喫茶店のナポリタン』だった(そういえば、ここは喫茶店だもんね)。
腰のない太い麺、ベチャベチャとたっぷりのトマトケチャップ、美しくコゲめの付いた玉ねぎ…。
あの店も感動的だったが、昔懐かしい味という意味では、こちらがかなり好みの味(ステンレスのお皿もネ)。量的にも満足。これで600円だ。
プリンのことなど一切忘れて、夢中で口の周りを真っ赤にしてしまった。
ちなみに、店名は仏語で「新しい橋」のこと。駅にも、同名の立ち食い蕎麦屋がある。