弥生、中旬、なごり雪
早春の溪は思わぬ雪に覆われていた。
今年はいつになく早い解禁を迎えることができた
体は澱のように重いのだが溪に舞う妖精に逢いたくて心ばかりが早る
幸い雪の林道に先行者の足跡はない
早春の溪には独特の澄んだ流れと凜とした空気が張りつめている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/d5/04766fd331f40ea2b40104f8e3919259.jpg)
水温はかなり低い、しかも気温が上がれば雪シロが出て水温は更に下がる
ドライフライにとって、この季節の溪が難しい所以である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/f3/e4297f970825c0b532a3e1bafa3b54c4.jpg)
ヤマメの反応がないままに溪を遡行する。
ここ秋山川支流『王の入川』の溪畔にはあちこちに野草が群生している。
毎年のことなのだが僕の解禁日は少しだけヤマメと戯れたあとは野草を味わい心ゆくまで溪で眠ることにしている。
カンゾウの若芽を10本ほど摘んだ、真っ白な茎と淡い緑の若葉の何と美しいことか?茹でて酢みそ和えにしよう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/67/e26df21346d030d99fe3ede1ae92c82c.jpg)
地表に頭を出して日の浅い蕗の薹、茹でて一味と醤油でキンピラにする。
ここにはミツバも群生しているのだが野生の鹿に食べられて1本も見つけられなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/c2/d3c37a1525aeebf0c5ded1bcc9ea3921.jpg)
ヤマメがフライにアタックするようになったのは午前10時を過ぎてからのこと
12~13センチのあどけない瞳に思わず笑みがこぼれてしまう。
フライは18番のメイフライ、プレゼンテ-ションしたのは右岸の淵尻の浅い淀み
黒い影がゆらゆらとライズしてゆっくりとフライを吸い込んだ、大物の食餌パタ-ンである。
まさか?
そう思った瞬間に大きく弧を描いたセブンハ-フのカ-ボンロッドが震え始めた
落ち込みへと遮二無二突進するヤマメの暴走を制しようと左手をバット部分に添えたそのとき
プスッという鈍い不気味な感触とともに虚しくヤマメのトルクが消え失せた。
咄嗟に折れたロッドを左手で掴んですぐに右手に持ち替え、左手に絡めたラインを大きく2度手繰るとロッドに躍動が蘇った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/60/3588df8b6e5b3acc1365cfe3d7ea02ae.jpg)
短くなったロッドを手にヤマメの動きを追って水際を走り回る様は人が見たら滑稽に写ったことだろう。
それでも数分後、ロッドをへし折った主を手にした僕は悔しいほどの美しさに見惚れてしまった。
少しサビの残る濃い体色、幅広の体高に厳つい顔、鮮明なパ-マ-クに薄い紅を施した艶めかしい肢体
早春のこの時期としては完璧に近い泣き尺に、ロッドをへし折られた無念さも忘れてしばらくの間見入っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/95/148de14aeb3f8f8fcd804540970e9bc9.jpg)
あぁ無惨!
かくして今年の解禁は終わりを告げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/ef/5ee24beaf77482b9fce50959991ca793.jpg)
林道に上がり、いつもの田んぼの畔道でヨメナと野蒜(のびる)を少し摘んで神の川へ向った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/e3/5402d98d341b33b2945a07023c67692b.jpg)
神の川への道すがら、雪の中からアザミの若芽を摘む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/96/b759185987b1805a1e71758ee2dedb89.jpg)
50Lのザックを担いで神の川の本流を遡りいつもの場所を目指した。
荒涼としたこの自然に身を置いて初めて心からの開放感を実感することができる。
かつて丹沢の黒部と呼ばれた神の川も今では見る影もないが、
父の世代には尺を優に越える大岩魚を育む豊かな水量を擁していた溪である。
今日はここで一夜を過ごす。
出合いの高台に幕営して野草の下ごしらえに取りかかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/24/3ffe74cd896f8c52ce1450037d01e004.jpg)
野草の下ごしらえが終わって振り向くと、、、、
むむむ? 信じられないことが起こっていた。
設営した筈の??、、、テントが??、、、、ない???
人間と言うものは不思議なものなんですね。
あり得ないことに直面すると、、、目の前の現象がにわかには受け入れられなくなるのです。
しばらくは茫然自失ののち頭をフル回転して今までのことを反芻し始めるのです。
ザックに食糧も入れた、酒も入れた、テントも、、、そう、確かにテントも入れたよなあ。
ここに辿り着いて、ザックを降ろして、タバコを一服して、あの高台にテントを張って、そうだよ確かにテントを張ったよなあ。
あっ、やっぱテントがないよ、大変だあ!
ペグダウンしてなかったから強風に吹き飛ばされたんだと、ここで初めて現実を受け入れる訳なんですな。
探し回ってようやく回収したテントは一箇所が破れ、ポ-ルが1本折れておりました。
これが冬山であったなら、もし回収できなかったら多分凍死していたでしょうね。
単独行では一つ一つのことを確実に完結させること、またひとつ教訓が増えてしまいました。
あゝ、それにしても痛い、懐が。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/da/5db791dc77bdb6214c197c4b60b5e887.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/dc/b799c0d0eb0d9c34d9ebacec57575541.jpg)
まあ終わったことは仕方がない訳で
気分を変えて美味しく野草を味わいましょうかね。
それにしても自然の造形美とでも言いましょうか、この美しさは正に羨望のア-トです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/5d/14870c6b4eb36b92e2f67bb009afede6.jpg)
カンゾウと野蒜は酢みそ和えで、ヨメナはポン酢、アザミはマヨネ-ズ、野蒜の球根は生で
野草の味、実はクセがなくてとても優しい味がすることはあまり知られていないのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/4d/3b912aaecccf07b934b196661854acbf.jpg)
溪で呑むひととき
友とならば語らい、ひとりならば今日一日を振り返り、これから始まる源流行に思いを馳せて
あゝ、やっぱり僕はこんなひとときがないと生きては行けないんだ。
ほろ酔って溪が暗闇に包まれるまで焚火のぬくもりで心ゆくまで眠ることができました。
これで早春の儀式は終わりました。
そしていよいよ心躍るシ-ズンが始まるのです!
早春の溪は思わぬ雪に覆われていた。
今年はいつになく早い解禁を迎えることができた
体は澱のように重いのだが溪に舞う妖精に逢いたくて心ばかりが早る
幸い雪の林道に先行者の足跡はない
早春の溪には独特の澄んだ流れと凜とした空気が張りつめている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/cd/6c199c22c1be370953683af98cc957f1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/d5/04766fd331f40ea2b40104f8e3919259.jpg)
水温はかなり低い、しかも気温が上がれば雪シロが出て水温は更に下がる
ドライフライにとって、この季節の溪が難しい所以である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/37/70a26d5ceade3c77d736f9f2838e9ef0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/f3/e4297f970825c0b532a3e1bafa3b54c4.jpg)
ヤマメの反応がないままに溪を遡行する。
ここ秋山川支流『王の入川』の溪畔にはあちこちに野草が群生している。
毎年のことなのだが僕の解禁日は少しだけヤマメと戯れたあとは野草を味わい心ゆくまで溪で眠ることにしている。
カンゾウの若芽を10本ほど摘んだ、真っ白な茎と淡い緑の若葉の何と美しいことか?茹でて酢みそ和えにしよう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/64/124e0206e0fccbb7932aa0c8300eb4c2.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/67/e26df21346d030d99fe3ede1ae92c82c.jpg)
地表に頭を出して日の浅い蕗の薹、茹でて一味と醤油でキンピラにする。
ここにはミツバも群生しているのだが野生の鹿に食べられて1本も見つけられなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/27/72ba081f62d8b23f11b32d31291d1f09.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/c2/d3c37a1525aeebf0c5ded1bcc9ea3921.jpg)
ヤマメがフライにアタックするようになったのは午前10時を過ぎてからのこと
12~13センチのあどけない瞳に思わず笑みがこぼれてしまう。
フライは18番のメイフライ、プレゼンテ-ションしたのは右岸の淵尻の浅い淀み
黒い影がゆらゆらとライズしてゆっくりとフライを吸い込んだ、大物の食餌パタ-ンである。
まさか?
そう思った瞬間に大きく弧を描いたセブンハ-フのカ-ボンロッドが震え始めた
落ち込みへと遮二無二突進するヤマメの暴走を制しようと左手をバット部分に添えたそのとき
プスッという鈍い不気味な感触とともに虚しくヤマメのトルクが消え失せた。
咄嗟に折れたロッドを左手で掴んですぐに右手に持ち替え、左手に絡めたラインを大きく2度手繰るとロッドに躍動が蘇った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/2b/abd6d1ddabe4b808318eef8d57c2c39e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/60/3588df8b6e5b3acc1365cfe3d7ea02ae.jpg)
短くなったロッドを手にヤマメの動きを追って水際を走り回る様は人が見たら滑稽に写ったことだろう。
それでも数分後、ロッドをへし折った主を手にした僕は悔しいほどの美しさに見惚れてしまった。
少しサビの残る濃い体色、幅広の体高に厳つい顔、鮮明なパ-マ-クに薄い紅を施した艶めかしい肢体
早春のこの時期としては完璧に近い泣き尺に、ロッドをへし折られた無念さも忘れてしばらくの間見入っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/95/148de14aeb3f8f8fcd804540970e9bc9.jpg)
あぁ無惨!
かくして今年の解禁は終わりを告げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/ef/5ee24beaf77482b9fce50959991ca793.jpg)
林道に上がり、いつもの田んぼの畔道でヨメナと野蒜(のびる)を少し摘んで神の川へ向った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/05/54a33423ec01480b4272e8a886c82912.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/e3/5402d98d341b33b2945a07023c67692b.jpg)
神の川への道すがら、雪の中からアザミの若芽を摘む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/a0/44024ac90cde0065f9b6078a7f8c1391.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/96/b759185987b1805a1e71758ee2dedb89.jpg)
50Lのザックを担いで神の川の本流を遡りいつもの場所を目指した。
荒涼としたこの自然に身を置いて初めて心からの開放感を実感することができる。
かつて丹沢の黒部と呼ばれた神の川も今では見る影もないが、
父の世代には尺を優に越える大岩魚を育む豊かな水量を擁していた溪である。
今日はここで一夜を過ごす。
出合いの高台に幕営して野草の下ごしらえに取りかかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/24/3ffe74cd896f8c52ce1450037d01e004.jpg)
野草の下ごしらえが終わって振り向くと、、、、
むむむ? 信じられないことが起こっていた。
設営した筈の??、、、テントが??、、、、ない???
人間と言うものは不思議なものなんですね。
あり得ないことに直面すると、、、目の前の現象がにわかには受け入れられなくなるのです。
しばらくは茫然自失ののち頭をフル回転して今までのことを反芻し始めるのです。
ザックに食糧も入れた、酒も入れた、テントも、、、そう、確かにテントも入れたよなあ。
ここに辿り着いて、ザックを降ろして、タバコを一服して、あの高台にテントを張って、そうだよ確かにテントを張ったよなあ。
あっ、やっぱテントがないよ、大変だあ!
ペグダウンしてなかったから強風に吹き飛ばされたんだと、ここで初めて現実を受け入れる訳なんですな。
探し回ってようやく回収したテントは一箇所が破れ、ポ-ルが1本折れておりました。
これが冬山であったなら、もし回収できなかったら多分凍死していたでしょうね。
単独行では一つ一つのことを確実に完結させること、またひとつ教訓が増えてしまいました。
あゝ、それにしても痛い、懐が。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c3/f1db94a82a9c01f2f8934269040cd656.jpg)
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まあ終わったことは仕方がない訳で
気分を変えて美味しく野草を味わいましょうかね。
それにしても自然の造形美とでも言いましょうか、この美しさは正に羨望のア-トです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/5d/14870c6b4eb36b92e2f67bb009afede6.jpg)
カンゾウと野蒜は酢みそ和えで、ヨメナはポン酢、アザミはマヨネ-ズ、野蒜の球根は生で
野草の味、実はクセがなくてとても優しい味がすることはあまり知られていないのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/66/22a25e047d97bb59a4368fbc17223f10.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/4d/3b912aaecccf07b934b196661854acbf.jpg)
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/e2/9cd549075437452bb3d2cd3c21ac624e.jpg)
溪で呑むひととき
友とならば語らい、ひとりならば今日一日を振り返り、これから始まる源流行に思いを馳せて
あゝ、やっぱり僕はこんなひとときがないと生きては行けないんだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/ed/d2535f80d2b977640dea58e859de88f8.jpg)
ほろ酔って溪が暗闇に包まれるまで焚火のぬくもりで心ゆくまで眠ることができました。
これで早春の儀式は終わりました。
そしていよいよ心躍るシ-ズンが始まるのです!
流石です!
早春の天城釣行日程を早めに決めましょう、金曜日の夜に出発して日曜の午後に帰ってくる予定で行きましょう。
驚きました。
しかしテントは惜しいことをしましたね。
神様は喜びだけでなく、教訓もお与えくださったのですね。
シーズン早々ちょっと残念でしたね。こんなサプライズも後で考えりゃいい思い出ですよ。
テントが自分の身代わりになってくれたと思えばいいんですから。(うちのカミさんの口癖)(笑)
しかし相変わらず旨そうに食べてるじゃないですか。
僕らが行った所には雪は有ったけどフキノトウも野草も見当たりませんでした。
おまけに土も凍ってましたしね。
楽しみは次回にとっておきます。
大事なロッドを折られちゃったよ
まさか春先に泣き尺が出るなんて思ってもみなかったから思わずラフプレ-だったかも。
天城釣行だけど
20日(19日の夜)~21日
4月10日~11日またはそれ以降なんていかがでしょ。
4月6日に血液検査があるので直前2週間は自粛しなければならんのです。
宜しくです。
山菜探索も是非是非よろしくっす!
このヤマメの艶やかさは絶品でしょ。
ロッドの交換に1万?
テントのポ-ル交換に1万?
破れの修理はガムテ-プで強行しますわ。
結構な高価だったけど気に入っていたテントなので
つぎはぎしながら使い続けるつもりです。
ほんなこつ良い教訓となりましたよ。
妖艶なヤマメと引き替えにとんだサプライズとなってしまいました。でも何時までも想い出となりそうです。
野草料理はhanさん直伝ですからね。
毎年美味しく頂いています。
いきなりあんなヤマメを釣っちゃうとは、すごいです。
仕事が忙しいと聞いていましたが、本当ですか?
竿は残念でしたけど、あんなのが釣れれば惜しくはないですね。
今シーズンも、遊びに来させてください。
どうぞよろしくお願いします。
ちょうどロッドもテントも買い替え時期と思えば、ね。何でも年々性能が良くなるから。
今年は雪が多いので私の解禁はまだ先になりそうです。
今期二回目の釣行は、3月末か4月初旬になりそうです。
今後も釣果に恵まれますように!
竿を折るほどの立派なヤマメちゃんにおいらの放流ものが情けなくなってきました。
流石の腕です。今シーズンもよろしくお伴させてください。