山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

みずがき秋味

2011-09-25 23:02:44 | キノコ狩り
記憶を辿ってみると去年の今頃もみずがきの森に遊んでいた。

この三連休、仕事が入っている1日目と3日目の合間を縫ってみずがきにやってきた。
夜の中央高速には前が見えなくなるほどの激しい雨が降り続いていた。
幸運にも雨が上がった午後10時過ぎにみずがきに入ることができた。

今回は道上の東屋に陣取って焚火で暖をとりながら厳しい冷え込みに耐えつつシュラフで眠った。
この道すがら、熊さんは予告通り夜襲をかけてものの5分でスズメバチの巣を戦利品にしている。

嬉しいことに頭と首すじと腕の3か所に逆襲を喰らっていたがオロナイン軟膏を刷り込んだだけで痛みは治まっている。
顔中を刺されて形相が変わるほどに腫れあがってくれたらブログネタになっていたのにと文句のひとつも言いたくなるのだ。

ススメバチの天敵が熊であることは聞いていたがこの男はものの見事に目の前で立証してくれた。



 





翌朝、ハナイグチを探してカラマツ林への山道を登った。
堆積した腐葉土とコケでフカフカになった林床を歩くのは何とも心地よいものである。









カラマツ林の先住民は真夜中に徘徊する。
その鹿たちが食べ残した僅かなお裾分けを人間たちが頂く。
ハナイグチは美味しいキノコであるけれど、それ以上に美しくて愛らしい容姿の虜になってしまう。



 
 





カラマツの根方、倒木の周辺のいたるところに鹿が掘り起こした跡がある。









昨夜の豪雨、一昨日の台風のためかハナイグチの傘には水を含んでいて老菌のようになったものも多い。



 
 







3時間ほどでハナイグチは十分な収穫になった。

小さな沢に入って岩魚に挨拶して帰ろう。
続けざまに襲った台風によって渓畔が抉られ苔むした岩が洗われていい雰囲気を醸していた沢は見る影もない。









それでもイワナは逞しく生き残っていた。
左はヤマトまじりのイワナ、右は近畿地方の一部にひっそりと生き残っている『流れ紋岩魚』の末裔だろうか?



 




この増水した水が引くころにはまたここのイワナも古巣に戻ってくるに違いない。








このイワナはヤマトの血が色濃く残っている22センチ。
金色の体色にオレンジ色の朱点はここのヤマトの特徴である、背中の白点がなければ、、、、








さて、いつもの場所に戻って秋を堪能致しましょ。








この色、このヌメリ、ええではないですか?









今回はちょっと湯がいて


 




たっぷりのもみじおろしとポン酢でさっぱりと






うぅぅ絶品!
この食感、この味、森で呑む酒の伴としては極上品でございます。





しかもこの量、二人であっという間に平らげてしまいました。

 



そして木漏れ日の中でむさぼる午睡

 



何も一日中遊び尽くすことだけが遊びではありません。
森の中での午睡、これもまた至福のひとときなのかもしれませんね。

キノコ、イワナ、美酒、マイナスイオン、午睡のまどろみ
充分に堪能したみずがきの森の一日でございました。




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黒部ふたたび

2011-09-19 17:46:17 | フライフィッシング
さぞかし皆さんも12号台風には振り回されたこととお察し致します。
かく言う私もこの3連休は、若き釣友と南アルプス天泊釣行を計画していた訳でありますが、
1000ミリを超える降水量のため林道も源流帯も崩壊してズタズタとの事前情報を得てやむなく中止と相成った次第です。

しかししかし、せっかくの3連休、しかも禁漁間近ですからね、どこかに行っておきたい訳でして色々と検討を重ねた結果、
湖に流れ込む渓ならば流されてしまったイワナも遡上が早いだろうと乗鞍、御岳、黒部の源流に狙いを絞り最終的には黒部に決定。
もし木橋や梯子が崩壊していたらその時は剱岳登山に切替えようと覚悟して山装備も併せて車に積み込んで黒部に向かったという次第です。


途中、隊列を組んで歩いてくる登山道管理を請け負う建設会社の方々に出会ったので様子を尋ねてみると
『台風の影響は殆どない』とのこと、安心したというべきなのかどうも複雑な心境に陥ってしまう訳でして。









季節の移ろいは早いものでチタケの姿は殆どなく、代わりに愛らしいタマゴタケがニョキニョキと出揃っておりました。
ちょっと甘みがあって香りも良くてバタ-と塩のホイル焼きやパスタの具にと重宝するキノコでございます。



 
 





この梯子も健在でございました。
今回は初めから小屋泊まりと決めていたのでザックは約7キロ、楽ですねえ。



 





約1か月ぶりの黒部はいつもと変わらぬ爽やかな群青の空、これを見ているとスカッとするのです。
黒部に来て良かった、と思うと同時に相模の釣師さんを連れて来れば良かったと悔やんだりもするのです。









この峪は上流部よりも下流部の方が水量が少なくて穏やかに流れます。









下流部のイワナは小柄で20センチから精々23センチ止まり。



 
 




中流部に差し掛かるとダイナミックな渓相に変化してきます。









そしてイワナも8寸前後にサイズアップ。



 







時計も1時半をまわったのでランチタイムです。
今回のイワナは抱卵している雌が多いので心優しい僕は刺身は控えることにして
非常食のマフィンにサンドイッチスプレッドを塗って頂きましたが、これがまた結構イケルのです。
もちろんピ-カンの空の下でビ-ルをやらない訳にはいきません。












釣り再開は午後2時のことでした。
手前のタルミ、奥の巻き返し、そして流れだしとここでは3尾のイワナを引き抜きました。










この2尾は黒部のヒライワナ。
オレンジの斑点とY字の斑紋、そしてネイティブにも関わらず尾びれの小さいのが特徴だそうです。



 






午後3時、この辺りまで来ると活性はものすごく高くてイワナは超興奮状態。
50~60センチも横っ飛びしてフライに食らいついてくる光景はエキサイティングで
久々にフライフィッシングの醍醐味を存分に味わうことができました。









黄金イワナ、ヒライワナ、真っ黒イワナなど黒部特有のイワナたち。
しかも9寸~泣き尺までの良型岩魚がイルカショ-よろしく激しくライズする様をお見せできないのがとても残念です。









 









そして魚止め。
ここまで多分30尾以上のイワナと遊んでくたくたになっておりました。











魚止めの2尾目は黄金のヒライワナ。
以前から思っていたことなのですが、ヤマトイワナの血が混じっているのではないかと?
平の小屋の三代目にこの話をしてみると、その可能性は高いであろうとのこと。
つまり大規模な地殻変動以前の時代の黒部川は太平洋に繋がっていたという説もあるらしい。









午後5時過ぎに平の小屋に辿り着いて、幸いにも一番風呂でほっこりさせて頂きました。
今日の泊り客は5人、しかもすべて山屋崩れの釣り人なので心置きなく宴会に突入です。

この石油スト-ブ、実は暖房用ではなくて岩魚専用なのだそうです。
一番美味しいイワナの尾びれを焦がさずこんがり焼きあげるために芯の長さを変えているという
3代目ならではの拘りがあるんですね。岩魚の塩焼き特有の芳しさに食欲が湧きあがってまいります。








こんがり焼いたこの尾びれ、朝ごはんのフリカケになるのですが頼み込んで1枚食べさせていただきました。
パリパリの触感、口中に広がる香ばしい香り、味付けしていないのに深い味わい、いやぁ職人の技に脱帽です!







先ずは岩魚の塩焼きでご飯を2膳。
そのあとは虹鱒の刺身、釣り師が持ち寄ったツマミと酒で夜更けまで酒盛りが続きます。
今回は釣りの話よりも山の話で盛り上がり、テンカラの名手である3代目は実は実力派のクライマ-でもあったことを初めて聞かされまして。
数十年前に、フリ-クライミングで一ノ倉沢をやった話し、エベレストのアタック隊と共に最終キャンプまで登った話しなどは圧巻でしたね。







あくる日、充分に釣欲を満たされてしまった僕は渓に立つこともせず
前々から是非カメラに収めておきたいと執念の様に思っていた蝶を追いかけることにしたのです。







旅する蝶『アサギマダラ』
日本列島を北から南へ、南から北へと500キロも1000キロも旅をする蝶をようやく撮影することが叶いました。
この透明感のある美しい蝶の一体どこに1000キロもの距離を飛び続ける力があるのでしょうか?
そう思うと、アサギマダラに逢えることに感動すら覚えてしまうのです。





実は今回、自分のカメラにその姿態を収められたことはイワナが沢山釣れたことよりも遥かに心満たされるものがありました。







黒部、今年はこれが最後の旅になると思います。
多分、今年はもうロッドを握ることもないと思います。
思いがけずに良い釣りができたこと、追い続けたアサギマダラを撮影できたこと
沢山の心広き山屋さんや釣り師さんに出会えたこと、黒部に感謝せずにはおけません。


来年は是非とも温めていた想いを遂げたいと思います!












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みずがきの恵み

2011-09-11 17:01:49 | フライフィッシング
前日、僕が帰宅したのは午前0時半のことである。
連日の遅い帰宅に心底疲れ切っていて、できることならゆっくり眠りに就きたかった。
ああそれなのに、残酷にも我が家の前に待っていたのは釣友熊さんのジムニ-であった。
シャワ-を浴び休む間もなくそそくさと支度をし、まるで連れ去られるように瑞垣の森に向けて発った。

車の中で爆睡しようと思っていた僕の願いは脆くも打ち砕かれてしまう結果となった。
みずがきに向かうワインディングをタイヤを軋ませながら容赦なくGをかけられたら眠れるはずもない。
今度生まれ変わったら絶対にこの男の車には乗るまいと心に誓った夜であった。


極度の睡眠不足のままに天鳥川の流れに立った。
ロッドを繋ぎティペットを結んでポ-チの中を探るといつもの場所にフライボックスがない。
やる気のない時というのはえてしてこんなものである、早々に釣りは諦めて渓を後にした。








それにしても瑞垣の夜空は見事であった。
ヒロキチさんも合流して午前3時半、満天に輝く星を眺めて呑む酒に酔いしれてそのまま大地に横たわって眠った。
野宿の至福を知ってしまった男たちは二度と快適なペッドで眠ることなどできなくなってしまうのだ。

釣りを諦めてハナイグチを求めてひとりカラマツ林に向かった。
時期が早かったのか先を越されたのか探せど探せど採れたのはたった1本だけ。
ハナイグチのおろしポン酢は諦めるしかなかった。









ひやむぎの具にしようとヒラタケを探したがいつもの場所のものは既に採られてしまっていた。
今年の栃木はチタケが不作だといわれているが瑞垣の特定の場所にはワンサカ生えていた。









熊さんが地蜂の巣を収奪して帰ってきた、七層の見事なものであった。
この男は西丹沢のファイタ-Kさんに匹敵する豪傑である。









それぞれに獲物を持ち寄って酒盛りが始まる。
イワナもキノコも蜂の巣もこの一瞬のためにやっているようなものである。









不猟であったハナイグチの代わりに、非常食のコンビ-フを使ってありあわせのナスとピ-マンを炒めた。
コンビ-フは油を必要としないので使い勝手がいい、醤油とコショウで味を調えてあっという間に出来上がる。









ご飯にも合うしハンバ-ガ-の具に使ってもイケる食材になることは意外に知られていないようだ。
熊さんのレバ-ペ-ストとオイルサ-ディンとフランスパンの取り合わせも相変わらず高い人気を維持している。








チタケが見つかってよかった。
チタケで出汁をとった麺は我らのお約束になりつつある、いやあホントに旨いっす。







途中、静岡から釣りに来たという方が飛び入り参加した。
チタケひやむぎを一口だけおすそ分けして大井川支流の話を聞いてみた。
1000ミリ以上の降雨に襲われてズタズタになった支流は当分復活しないだろうと。
どこもかしこも台風12号が残した爪跡は想像をはるかに超えるものであるようだ。








ヒロキチさんが熾火で2時間以上をかけてじっくり焼き枯らしたイワナはまるで燻製のように絶品の味に仕上がった。








こんなに旨いイワナ、何年振りかで味わったような気がする。
イワナを頬張りながら思わず感嘆の声が漏れてしまう。









緑濃いみずがきの森にはいつも爽やかな風が吹き抜けている。
みずがきの森がもたらしてくれる恵みに裏切られたことはまだ一度もない。
ゆるやかに流れるみずがき時間は僕たちの心身にもっともフィットする心地よい時間になりつつある。









それにしても何時からこの男たちはこんなにもグ-タラになってしまったのか?

いや決してそうではない!
無為に過ごすひとときこそ至福なのだということを知った男の姿がここにあるのです!



どこもかしこも荒れ果ててしまった。
あぁ来週は一体どこへいったらいいのでしょうか?






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儚さの美

2011-09-04 23:05:17 | 独り言
固い蕾がグラマラスなふくらみに変わり始める。
透明感のある花弁のひとつひとつが、絹のような花びらの一枚一枚が魅惑的で誘惑に満ちている。
開き始めた花芯からは眩暈がするほどの強い香りを放ち、開花が進むにつれてその香りが薄れていく。
わずか2時間少々、月下美人の儚くも華麗な生涯を彩る生命のドラマを見つめていて思ったことがある。



















振り返ってみれば人間の生涯もまた儚いものである。
自分の意志をもって生き始めるのは10代の頃からであろうか?
さらに自立して生き始めるのは20代に入ってからのことである。
それからおよそ30数年、信じたくないが来年には僕も還暦を迎える歳になる。
仕事も学びも遊びもそれはそれは面白くて、刺激的な日々はあっという間に過ぎ去ったような気がする。

キラキラ輝いていた日々はホンの一瞬であったように思う。
これからあと何年、この生き方を続けられるのであろうか?
少し忘れっぽくなってもきたし、活字を読んでも総ては頭の中に残らなくなってきたような気もする。






還暦には『赤ちゃん還り』の意味もあるらしい。
ならば僕ももう一度、精力的に生き直してみようか?
同業の先輩の中には後進を育てながらも仕事と学びを精力的に続けている方々が多い。
山で出会った70歳、80歳の先輩方も、ゆっくりではあるが確かな歩みを続けている姿に教えられる。

台風の襲来によって今週の大井川Fish & Peakの単独行計画はつぶれてしまったが
9月はまだ南アルプスと北アルプスの源流行が残っている。
これからキノコもおもしろい、刺激的な日々はまだまだ続けたい。



来年のために2.5万図を手に入れた。
5万図の山地図に比べると地形は遥かに読みやすくなった。
でも見慣れた国土地理院の地形図の方がなぜか地形をイメ-ジしやすい。

国土地理院のコマ切れの地形図を編集して1枚の地形図にするソフトウェアがある。
『Trekking Map Editor』、でも僕は未だに貼りあわせて手作りしている。
GPSを搭載した山ナビがいくつもリリ-スされているが手に入れるつもりはない。
若いころ、峪を釣り上がりながら尾根に這い出る沢旅を繰り返していた時代があった。
地形図に載っていない枝沢にいくつも出くわしてどっちに進めばいいのか見当がつかないことも良くあった。
そななとき、自分の居場所が分かるGPSがあったらどんなに安心安全な沢旅ができたであろうか?

そんな危険地帯に入り込むこともなくなった今は地形図から得られる情報だけで十分である。
地形図があれば遡行の可否、巻道、エスケ-プル-ト、テン場適地などのおおよその見当はつく。

今日も地形図を眺めてワクワクしていた。
地形図は魅惑的でもあるが、きわめて誘惑的で危険でもある。
地形図の危険な誘惑から逃れながらもあと10年、魅惑的な沢旅を続けていきたいものである。

それが僕のわくわく人生の源泉なのだろうと思うから。







 







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