GWにちょいと遊んでしまったために5月は休みなく仕事の続く過酷な日々になってしまった。
何とかリハビリしなければと30数年ぶりに懐かしのクラシックル-トを辿ってみたくなった。
計画では島々宿からスタ-トして岩魚を釣りながら島々谷を遡り徳本峠(とくごうとうげ)の小屋で1泊し、
翌日は上高地に下りて小梨平に天泊し2日間のんびり骨休めする積りだったのに計画はのっけから狂ってしまった。
1日目(6月2日、木曜日)
溜りに溜った疲れを癒そうと多めに呑んでしまって翌朝は大幅に寝過ごす羽目になってしまった。
慌てて荷造して島々宿に辿り着いたのが9時半、釣りをしていたら日没までに小屋には辿りつけそうにない。
仕方なく計画を変更して、上高地経由で明神から入るル-トに切り替える。
沢渡(さわんど)に車を置いてバスで上高地に入る。
午前10時半の梓川と焼岳が目に沁みる、神降地(かみこうち)は今も変わらぬ別天地だ!
北アルプスに入り浸っていた頃、上高地から横尾へと向かうこの道を何十回歩いたことだろうか?
あの頃、この流れの巻き返しに悠然と泳ぐ大岩魚を登山道から幾度となく眺めたものだった。
明神館から明神第2峰の明神槍(僕の記憶が正しければ)を望む!
残念ながら僕はこの岩峰に登ったことはない。
かつてこの明神池には大岩魚が群れをなして泳いでいたものだが、この日は岸際に小さな岩魚の姿がふたつみつ。
岩魚蕎麦を頂こうと嘉門次小屋に立ち寄って1600円の値札を見てびっくり、観光客ではないのだと自分に言い聞かせて諦めた。
明神から10分ほどで白沢の出合、ここから徳本峠への道を辿る。
ここからしばらくは白沢に、そのあとは黒沢に沿ってなだらかな散歩道が続く。
心地よい散歩道を1時間ほど進むと本格的な登山道に変わり、幾つかの枝沢が黒沢に注ぐ。
最後の水場で大休止して遅い昼飯を食べ水を補給する。
CTに30分遅れで徳本峠小屋に到着した、いい雰囲気のランプの山小屋である。
穂高を眺めようとビ-ル方手に展望台へ向かう、残念ながら前穂の天辺は雲に覆われていたがこれもまた乙なものである。
この日の宿泊者は福島から来た若者と僕の二人だけ、山菜のてんぷらとすき焼きが美味しかった。
食後も年の差は関係なくバ-ボンをなめながら山の話で盛り上がる。
焼けはじめましたよ~との小屋番さんの呼びかけに外に飛び出してみると
穂高の向こうに沈みゆく夕日に、穂高山頂にかかる雲が焼け始めている。
もっと雲が多ければ、空一面に真っ赤に焼けるという。
こんな幻想的なドラマは山の上で夜を迎えないと決して観られない。
寒さに震えながらもドラマの余韻に浸る男の後ろ姿がふたつ
すっかり酔いが醒めてしまった体にバ-ボンを流し込んで羽毛布団に潜り込んだ。
2日目(6月4日、金曜日)
熟睡して午前4時半、空が白み始めたのを感じて小屋の外に出てみる。
八つの方向から昇る朝日に輝く明神のモルゲンロ-ト、右端の大きな前穂も焼けている、さあまた新しい一日が始まる!
笠も朝陽に輝いて鮮明に見えた。
塩サバと目玉焼き、とろろの朝ご飯も美味しかった。
定員30人のこの小さな山小屋はアットホ-ムな雰囲気で、まるで自分の家にいるように過ごすことができた。
ここまで来たら霞沢岳での大展望を楽しみたいところだけれど今回はとてもそんな余力はない。
午前6時、下山道の傍らに咲くニリン草が凍えていた。
珍しいミドリニリン草も咲いていた。
島々谷からの登りル-トなら、このちから水を汲んで最後の登りを詰めるところであろうか?
陽が昇ると登山道の木々の葉が輝いて気分爽快にさせてくれる。
島々谷南沢の最源流がここから始まり、この沢に沿って下ることになるので飽きることがない。
よさげなポイントではついつい岩魚の姿を探してしまう。
快適に下って岩魚留小屋で小休止、ここで行程の3分の1ほどであろうか?
二俣に向かうにつれ渓相は良くなってくる。
岩魚留小屋から二俣までの中間点のベンチで小休止、セミと野鳥の鳴き声がうるさいほどに耳につく。
二俣に10時半着、ここで左からの島々谷南沢と右上からの島々谷北沢が合流して島々谷川へと名前を変える。
10時半、気温も上がり虫も飛び始めてドライフライには良い条件が揃ったとほくそ笑みながら北沢に入る準備を始める。
ロッドをつなぎ、フライリ-ルをセットし、、、、、あれ~っ、フライリ-ルと偏光グラスを入れたポ-チがないっ!
ザックに詰めたものをすべて取り出して隈なく確かめたけれど、ないっ! あっちゃ~、やっちまったよ~(もう最悪ですわ~!)
泣く泣く釣りを諦めて、島々宿までの1時間半の単調な林道歩き、この虚しさと疲労感を理解して頂けますかねえ?
島々宿からバスで沢渡へ、天泊装備をザックに詰め代えて再びバスで上高地の小梨平キャンプ場へ向かいます。
これから2日間、この清涼な樹林の中でのんびり自由気ままに過ごします。
昼間から風呂に入ったり、数か月間もテント生活しながら絵を描き続けている人たちと話したり、
梓川を散策しながら穂高の展望を楽しんだり、小梨の食堂でビ-ルを楽しんだり、、、、
小梨平を流れる小さな清流には
岩魚やブラウンたちが悠然と泳ぎ
ライズを繰り返す光景を眺めていると、それだけで穏やかな気持ちになれるのが不思議ですねえ!
上高地は今も変わらぬマイナスイオン充満の別天地でございました。
この上高地で何日間かを過ごすとしたら、、、、あなたならどんな風にすごすのでしょうか、空想を巡らすのも楽しいものでございます。