山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

飛騨川源流....釣果は岩魚のみに非ず

2009-09-27 16:58:43 | フライフィッシング
今シ-ズンの最終釣行は飛騨川源流行で締め括りたい
予てよりの願いが半分だけ実現できた

半分と言うのは、2泊3日の溪泊釣行を計画していた訳であるが
僕自身の都合で日帰りになってしまったことが返す返すも残念でならない

今回の釣行は、釣友のNさんに同行していただいた
源流志向のNさんは遡行パワ-もあり僕にとっては頼りがいのあるパ-トナ-である

おまけに今回は、ネット上でお付き合いのあるtooさん親子とも急遽お会いできることとなった
tooさんは長良川をメインフィ-ルドとするルア-マンで四季折々釣三昧の生活をされているエンシニアである

初対面の挨拶を交わした後、tooさん親子は湖から遡上する大型岩魚を狙って本流へ
僕たちは飛騨川最上流に流れ込む支流の一つを釣り登った

渇水期の今でも水量は充分あり落差もあり源流志向の僕たちにとっては理想的な溪である







ところがである、思いのほか反応が少ないのだ
時間の余裕がないために一番入溪しやすい溪を選んでしまったためであろうか








3尾の良型イワナを立て続けにバラシてしまった僕にはパッタリと反応が止まってしまった
Nさんも当たりが少なくて苦戦しているのが分かる

この遡行で釣り上げたのは2人とも2~3尾のチビイワナのみと言う最近にない貧果に終わった






4時間の遡行の末に辿り着いたこの大滝は、圧倒的な威容を誇って僕たちの前に立ちはだかった
切り立った岸壁の双翼を大きく広げて『ここからは1歩も立ち入らせぬ』
まるでそう言いたげに僕たちには見えた

落差も大きく水量豊富なこの滝の釜には大岩魚が潜んでいるに違いない

いつも釜で尺上岩魚を釣り上げているNさんはやりたくてウズウズしているようであったが
tooさん親子との待ち合わせ時間が迫っている今日は泣く泣く諦めてもらった







ここから、あるかないかも分からぬ道を求めて稜線への長い長い藪漕ぎが始まる
山地図を頼りに道なき急斜面を直登し、トラバ-スしまた直登して進む

こんな時、天性の感と冷静な判断力、道を切り開くパワ-を持ち合わせたNさんの存在の如何に大きいことか







藪漕ぎの途中で大滝の上段が垣間見えた
あの樹間の奥深く、ヤマトイワナが息づく桃源郷があるに違いない

来年こそは、まだ見ぬ幽玄の世界でめくるめく時を過ごそうと誓ってここを後にした









息も絶え絶えに藪漕ぎを終えた僕たちを、朱や黄に染まり始めた秋の気配が迎えてくれた
冷たく澄んだ空気を吸って息を整え、一服の煙草に心の余裕が生まれる

見渡せば木々も風も大気もすっかり秋めいて、あんなに輝いていた盛期の溪が今では心なしか寂しげに写る
この寂静感はシ-ズンの終わり行く季節にいつも感じる溪への惜別の心でもある

大釣りで終わるよりシ-ズンの終焉はこんな終わり方が実は僕の理想でもある
溪の終わりは、必ず僕に対して来年への宿題を残してくれる

今年も多くの釣友のお陰で良い溪遊びができた
不安の尽きない単独行も満足のいく結果に終わった

僕の人生が幸運にも豊かであるのは一重に山と溪と岩魚と釣友のお陰であると心から感謝している
また来年の新しい出合いに期待しながら今日で竿をたたもう







峠を越えて、岐阜から信州へと下って奈川のお蕎麦を味わった
2年前、釣友との2泊釣行の際に立ち寄った懐かしいお店である







最後に奈川と黒川の出合いで記念撮影

tooさん親子は飛騨川本流の最上流で26~29センチの良型岩魚を13尾も釣り上げていた
tooさん親子は、気さくで紳士的で話し好きな方であった
是非来シ-ズンは溪泊しながらの釣行をご一緒したいと思う

この釣行、釣果は岩魚のみに非ず
新たな釣友との出合いが何よりもの嬉しい釣果であったと感謝している

Nさん、tooさん、息子さん
また来年も溪遊び、ご一緒してくださいね!
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飛騨川源流行!。。。。。ぢゃなくてピクニック?

2009-09-21 22:20:01 | キノコ狩り
この連休は釣友の熊さんと2泊3日で飛騨川源流を攻める計画でおりました

が、、、、


急遽、熊さんの呑み友達『のの姫さん』が参加することと相なりまして
釣りキャリアなし、しかも1泊希望と言う訳でやむなく瑞籬の森で軽くキノコ狩り&ピクニックと相成った次第でございます





朝一でみずがき公園近くの唐松林に入ってちょっとだけハナイグチを摘んでから入溪の楽な沢に入ることにしました

ところがですねえ、水が無いんですわ全然、平水時の半分と言ったところでしょうかね
これじゃあどないにもこないにもならず、堰堤で『のの姫さん』の釣りの練習と言う訳で

熊さんのご指南よろしくネバッテねばって粘った末に何と今回最大の23センチのヤマトイワナを釣り上げることができました
でもね、ヤマトイワナの希少価値を知らない『のの姫さん』にとっては猫に小判だったようで、、、、




しかしまあ、釣果は芳しくなくてもお腹だけは減っちゃうものなんですねえ






昼飯は『のの姫さん』お手製のオ-ドブルとハナイグチのキノコ汁とビ-ルで簡単にすませて






午後は僕ひとり別の沢へ向います






しかしここも大減水、どうしちゃったんでしょうかねえ
遊んでくれるのは幼稚園児と小学生ばかり、やってられまへんわ



しかしまあ釣果は芳しくなくても日が落ちると不思議と体がビ-ルを求めて幻覚が生じてしまいます






相も変わらずのヤキトリと焼き魚とキムチ鍋の三点セット

でも、でも、今回は違うのです
熊さんの炭火の焼き技が冴え渡り、サンマもヤキトリも絶妙の焼き加減に仕上がりましてね
これはもう天性の感というかクマの学習能力というヤツでしょうか、大したものですわ

熊もおだてりゃ魚焼くって、あれですわ







〆は山形の杉勇
猛烈な風が吹きすさぶ中での露営も爆睡のうちに朝を迎えられたのはこのお酒のお陰と言ってもいいでしょうね





ゆっくりめの朝、相変わらず強風は吹きすさんでおりました
吹き止まぬ強風で髪の毛の中は砂利でジャリジャリしておりました

強風であろうが豪雨であろうが、朝のお勤めが済めばお腹が空いてしまいます
熊さんが昨夜から仕込んでおいた岩魚の薫製が良い感じに仕上がっておりました
この薫製、ドイツパンに良~く合うということ、また一つ新発見でした





退屈な僕はダメだとは分かっていながらも新しい沢の探索に






結局はキノコ山の探索に変更し、ハナイグチの新たな菌床を見つけることができました
10月になったらこの辺りをくまなく歩いてみようと思います





もう秋なんですねえ
みずがきの麓も少しずつ色づきはじめておりました
あんなに華やいでいた溪も今は心なしか輝きを失い寒々として一抹の寂しさを感じてしまいます





この季節の釣りはいつも消化不良で虚脱感がのこります
ブログにも力も気力も湧きません

来週は最後の遠征
やり残した飛騨川源流に入ります

でもねえ、何人もの観光客が熊に襲われているシ-ンを見てしまうとねえ
実はあそこ、来週僕が目指す場所の近くなんですわ、怖いわあ!

岩魚の刺身を食べる前に僕が刺身になっちゃうかもねえ

誰か一緒に行きませんか?
いやいや、男はやっぱり単独行がいいやね!
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両俣ヤマト再会への旅

2009-09-08 23:20:44 | フライフィッシング
9月5日からの3日間、野呂川源流の『両俣』へ入った
今回の旅は両俣のヤマトに唯ただ再会したいがための旅である





前夜8時には芦安の駐車場に入って今回は万全の体制である
車中で『ひとり大宴会』を打って9時半、酔いにまかせて眠りに就いた

明日は早朝5時10分発の広河原行のバスに乗る
たっぷり眠って気分爽快で朝を迎える筈であった
が、大幅に寝過ごして次のバスも満員でチケットが買えず、またもや先が思いやられるスタ-トとなってしまった





北沢出合から両俣小屋に向けて歩き始めて1時間と少々、山小屋までの中間点に『仙丈ヶ岳』から流れ下る谿『大仙丈沢』が見える
興味をそそられて最初の堰堤を高巻いて1時間ほどロッドを振ってみたが反応すらなく僕の好奇心は脆くも打ち砕かれてしまった






両俣小屋に辿り着いたのは昼過ぎになっていた
26才になる女王様のブ-にソ-セ-ジをやりながら小屋番の星さんに先行者を聞いてみると
左俣に若いルア-マンが3人、右俣はエッサマンが2人入ったと言う。
諦めてビ-ルで喉を潤しながら入溪時間を計ることにした






本命の右俣は明日に温存することにして午後2時過ぎに左俣に入った
残された釣り上がりの時間は2時間半、小さなポイントは無視して上流へと飛ばした

中流はニッコウとハイブリッドが、上流はほぼヤマトが、15尾ほど出たが型はみな7寸止まりの小型である
しかし先行者がいてもこれなのだから魚影の濃さは推して知るべしである






帰路は北岳からの登山道を懐かしさを噛みしめながらゆっくりと下った
苔むした栂の林には『ムラサキシメジ』や『チャナメツムタケ』が沢山顔を出していた(この画像は関係ありません)
夕飯に出されたムラサキシメジとナスの炒め物でビ-ルがすすんだのは言うまでもありません





この小屋は山屋さんと釣り人が6:4といったところでしょうか
食後はビ-ルをやりながら釣り談義と山談義に花が咲く訳ですが

『重い荷物を背負って山に登るなんざ苦しいだけでおもしろくも何ともないだろうに』と無神経な釣り人の言葉に対して
『釣れるかどうかも分からないくせに何がおもしろいの?』と言うオバチャン山屋さんの反論なんぞをを聞いていると

釣りも山もやる(やった)僕は不毛の議論を聞いているようで悲しくなってしまう訳でして
結局は『理屈じゃなくてね、やった者でないと分からないんだよね』と言ってやりたいのをぐっと呑み込んでブ-と戯れていた訳で








さて、明けて日曜日
沢割で僕は本命の右俣を譲ってもらって午前8時半にひとり右俣へ向った

朝の光が差し込む溪からは凍えるような冷気が消え緑濃い原生林が目映く輝き始めていた
この深い原生林にひとり居る自由が僕を先へ進めと促し、ひとり居る恐怖が僕を押しとどめようと葛藤する

それでも僕は、あの日に出逢った精悍なヤマトともう一度対峙したくて、
ロッドを通じて感じる生命漲る躍動のバイブレ-ションをもう一度この手に感じたくて流れの先へと踏み出して行った

ロッドをたたんだまま下流を過ぎ、中流もポイントを絞ってテンポよく上流域を目指した
岩魚のアタックに一々応じていては先に進めないほどの魚影の濃さがここにはある





左俣に比べて落差の大きい右俣の小滝を幾つも越えて行った
それでも高巻きの必要のないこの谿は標高2000メ-トルを越える谿としては難易度は高くない





いくつかのお花畑が現れる
これから先が右俣の核心部となる

幾つもの立木が無惨に生皮を剥がされていた
熊や鹿の生きるための究極の営みがここにはある、、、心底怖いと思った!

それでも、警戒心の強いヤマトイワナと対峙するために、僕はここで熊鈴を仕舞った





この岩陰に潜んでフライを投じた





一投目で飛び出したのは9寸を越える真っ黒いヤマトであった






ここは四連の小滝の三段目、まるでテラスのようなポイントに登り詰めた
身をかがめ息をひそめて下の小滝からテラスを覗き込んだ

最上段から流れ落ちる二筋の太い流れは、狭まった両岸にギュッと凝縮されて強烈なパワ-を蓄え
脈打つ白波となって暗く澄んだ淵の中層へと突き刺さっている

そして、それが嘘だったかのように流れは縒れて穏やかな波紋を作りながら
やがて落ち口の肩へと鏡のように透き通ったふくらみを描き次の小滝へと消えていく

ヤツは必ずここに居る!
確信してフライのトレ-スをシミュレ-ションした

一投目は白泡の消える当たりから落ち口の肩へ
二投目はあの円形の明るい深みから落ち口の肩へ
最後の一投は左の岩陰から左の落ち口へ、この三投で勝負は着く

もう一度かがみ込んで息を整え、フライのCDCウイングにジェルフロ-タントを薄く塗り、更にドライシェイクを刷毛でまぶした

水面を叩かぬようにロッドを高く立ててふわりとフライをプレゼンテ-ションした
フライは思い通りのポイントに舞い落ちて思い通りにトレ-スしていく

このとき、僕の五感からは滝の音も木々のざわめきも消えていた、、、ように思う

12番のテレストリアルが落ち口のカガミに到達するのを待ちかねたように真っ黒い陰が浮き上がり激しく水面を割った
僕は無意識に手首を返しロッドを高く掲げた

跳ね上げたラインに沿って一条の水しぶきが上がり、瞬時にそれはキラキラと輝く飛沫となって
ピンと張りつめたラインに降り注ぎ、そして水面に吸い込まれていった

ヤツは白泡の奥深くに潜り込み、凶器から逃れようと激しく頭を振りながら底石に針をこすりつけている
ロッドが弧を描き、やがて逆U字に折れ曲がって2番のグラスロットは悲鳴を上げ始めた

しばらく睨み合いが続いたあと、ヤツは弾丸のように落ち口へと突進し、僕の目の前を二段目の釜へとダイブした
黒い魚体に染まった鮮やかなオレンジが目に焼き付いた、美しいヤマトだ!






やがて力尽きてランディングネットに収まった彼は見事な尺ヤマトであった
威厳のある大きな目、鋭く厳つい口、黒ずんだ魚体に鮮やかなオレンジ、
逞しく張ったぶ厚い胸鰭と腹鰭、この魚体の何処を見ても厳しい谿で生き抜いてきた風格と神々しさがある

これこそ深山幽谷に息づく本物のヤマト、このヤマトに再会したくてここまで来たんだ
積年の想いを遂げた僕は、全身から一気に力が抜けてめまいを感じていた
時間はまだたっぷり残っていたが僕はここでロッドをたたみこの谿に感謝して下山することにした





下山の道すがら、岩魚汁の具にと栂の森に入って少しだけキノコを摘んだ
手つかずのこの森もまた、ここに棲息する野生動物たちに豊穣をもたらす森であり続けるのか




僕は心から感謝して彼の尊い命を頂いた
雄だと分かっていながらも緊張して腹を割いた
もし雌だったら、もし腹に卵があったら卵の数だけ命を奪ってしまう





刺身一尺、焼9寸!
マタギに伝わる言い伝えのとおり、脂ののった身は甘く締って絶品の味わいをもたらしてくれた





岩魚を捌いている時、30年前の遠い記憶が突然フラッシュバックするように蘇った

20代の頃、幼なじみのKちゃんと年に一度だけ源流行を続けていた
4度目か5度目の時だったろうか?僕は岩魚を捌きながらこれを限りに源流行を止めようとKちゃんに打ち明けた

釣った岩魚を締める時の、あの哀願するような目に耐えられなくなったからかも知れない
あのまま源流行を続けていたら僕たちは源流のエキスパ-トになっていたかも知れないが
深い谿の底で命を落としていたかも知れない

臆病で慎重な今の僕があるのは、あの時の岩魚のお陰かも知れないとふっと思い返した






両俣のヤマトと再会する旅は僕が思い描いたとおりに終わった






あと3週間余りで両俣の岩魚たちにも本来の孤独と静寂が訪れる

そしてまた餌の乏しい真冬の厳しさと向き合って生きる季節がやってくる

それでも彼らは、強靱な生命力で次代へと命のリレ-を怠りなく続けていく筈である


それを信じて数年後、またこの谿を訪れたいと思います。

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