山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

真冬はミッジで!

2010-02-21 23:12:58 | フライフィッシング
寒い朝であった
冬は寒ければ寒いほどいい
山に雪があればなおさらいい



          



『神の川(かんのがわ)』から仰ぐ山は雪化粧を施して殊更に美しかった
犬越路から檜洞丸へと続く稜線も雪に覆われて真っ白になっている

雪の重さにしなだれた枝葉を払いながらの稜線歩きは楽しい
霧氷がまとわりついて真っ白になった木々の枝は得も言われぬほどに美しい
積もった処女雪をきゅっきゅっと踏みしめながら歩く快感は雪山に踏み入った者でなければ分からない







今回は幼なじみのオ-ちゃんとそんな風にして檜洞丸への雪景色を楽しみたいと思っていた
オ-ちゃんも『たまには雪中泊して雪中宴会もいいなあ』などと言っていた、
のにのに、『やっぱ釣りにしよ』と掌を返すように軟弱なことをぬかしやがったのだ


        



オ-ちゃんは実は可哀想な男なのである
数年前に犬歯を抜いてからと言うもの何もかもがダメになってしまった、そう何もかも

抜群の登攀技術も登攀力も衰えが激しいし高血圧で過激な行為もあかんようになったし
姉羽の耐震偽装事件の影響を受けて自分の設計事務所を閉じて今では某ハウスメ-カ-の設計部長に甘んじているし
鮎プロ並の腕を持っているばっかりに日本中の鮎を追って慢性金欠病から回復する兆しはないし、、、

と言うわけでもないのだけれど僕たちは『神の川』の川原に下りて体を温めながら寒さの弛むのを待つことにした



 



午前11時過ぎ、陽が昇り暖かくなった頃合いをみて下流のうらたんに下りた
川原に腰を下ろして湧かしたコ-ヒ-をすすりながらライズが始まるのを期待もせずに待つことにした

この冬の水量は盛期の3分の1ほどであろうか?
この川原も一面流れに覆われているのであろうに今はこの状態である







今年の源流行の約束などを語り合いながら待つこと2時間半あまり、午後1時半を過ぎた頃にようやく
単発のライズが始まり程なくプ-ルの流れ込みから縒れが消える周辺のあちこちでライズの饗宴が始まった。

ハッチしている虫は見えないほどに小さいがライズは水面上である
9Xのティペットに結んだのは28番のミッジアダルト(この画像はミッジピュ-パです)







オ-ちゃんは流れ込みの向側で、僕はこちら側に立ってライズの手前にフライを送り込む
小気味よいヤマメの引きを楽しみながら岸に引き寄せてリリ-スし、フライにドライシェイクをまぶしてまたロッドを振るという繰り返し

ほぼ入れ食い状態のライズの釣りは興奮状態のまま40分ほど続き、そしてパタリと止んだ
さっきまでのヤマメのざわめきとライズリングが消えた水面はまるで嘘だったかのように静けさを取り戻していた



 



2時間半待った甲斐があったと言うものである、エキサイティングなライズの釣りを堪能できた


 



冷え切った体を温泉でほぐし余韻に浸りながらビ-ルを楽しめば充たされた一日は完結する


 



そして眠りに就いたオ-ちゃんの寝顔が幸せそうに見えた


         



この集落にも小学生時代からの同級生がいる
お嫁に行ってこの地を離れているけれどたまにはこの『いやしの湯』に浸かりにくるのだろうか
そんなことに思いをめぐらしながらいつしか僕も眠りに就いたようであった


         


充たされた今日一日に感謝感謝です。



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蛙の子は蛙

2010-02-14 23:00:25 | 蕎麦、うどん、ラーメン
日曜日の午前5時、外はまだ真っ暗でありました。

ことさら歳をとったとは思わないが今日は何故か早起きをしてしまった。
疲れた体に酒が効いたのかたった1杯の水割りで9時間も爆睡してしまった。

朝飯をはさんで12時半まで仕事をして久しぶりに散歩に出かけてみたくなった。
事務所に缶詰になっていると顔に当たる外気が冷たくてたまらなく気持ちいい。


         



辿り着いたのは西国分寺『大蔵山蕎麦 最上わっせ』
店先の看板を見ると、おっ馬刺しがあるじゃん!
山形名物の板そばと肉そば、これは楽しみであるぞ!






引き戸を開けて暖簾をくぐると厚板のテ-ブルが並んだ落ち着いた雰囲気
午後一時をとうに過ぎているので先客は一人だけ、僕は迷わずカウンタ-に腰を落ち着けた。

日本酒をやるなら胡座のかける小上がりが定石なのだが残念ながらこのお店にはなかった。


 



先ずは山形産の馬刺しと日本酒『花羽陽』

話しを聞いてみると店主は若干25才なんですと。
東京の大学を終えてから出身地の新庄で修行をしたそうな。
実家もお蕎麦屋を2軒営んでいるそうで、蛙の子はやっぱり蛙なんですな。


     



花番を務めるお母さんがそっと出してくれた天然の生キクラゲ、プリプリの食感がなんともいえません。
こんなちょっとした心遣いが実はとても嬉しいものなんですよね。
すっきりした飲み口の『花羽陽』といぶりがっこもなかなかの相性でございました。


 



ちょっとほろ酔ったところで、お蕎麦を頂きましょうかね。
山形県大蔵村の最上早生を使った十割そば、なるほどぅ、それで『最上わっせ』なのね。


 



板そばと付け汁の鶏きのこ汁を注文すると、先ずはこれを味わってみてくださいと出されたのは『水そば』
口に含むと、蕎麦のほのかな香りとコシ、じんわりとした甘み、蕎麦打ちの自信が水そばにある訳ですな。


 



甘辛の味がほどよく調和した鶏きのこ汁、後を引く美味しさで一気にすすってしまいました。


 



久方ぶりに十割そばを堪能し爽やかな気分で仕事場に帰って行ったのでありました。

      


昨日降った雪で山はまた雪景色なのだろうか?

ああ、また山に籠りたいなあ!



コメント (10)
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雪中泊

2010-02-07 17:10:09 | 山歩き.散歩
雪が降るとなぜだか不思議とわくわくしてしまいます。

週初めに降った雪が溶けてしまわないかとハラハラして迎えた土曜日
案の定、南面の入山口からの道はすでに溶け始めておりました。

今日は初めからピ-クを踏む積もりなどさらさらないのです。
雪の中で幕営し酒をやりながら日がな一日本を読む、
そんな一日もたまには良いではありませんか?

途中、登山道をそれて雪が残っているであろう北面にトラバ-スし
踏み跡のない急な斜面を稜線に向けて登って行くと僕のお気に入りの天場に辿り着くのです。






1時間ほど歩いたでしょうか、木々に囲まれた丁度テント一張り分のスペ-ス。
登山道から外れたこの場所では誰一人として人に出会うことはありません。
熊だって今は冬眠中ですもの、襲われる心配もありません。

ほんの2~3分、9時過ぎに設営を終えテント内を整えたらとりあえずビ-ルですな。
孤独の一夜を過ごすにはなかなかよさげな雰囲気でこざいましょ?






テント内から見える風景はこんな感じです。






『邂逅の森(熊谷達也著、文藝春秋)』
今日はこの読みかけの書を531頁まで一気に読了しました。

阿仁の打当(うっとう)に生まれ14才でマタギとなった富治は
運命の糸に引きずられるように故郷を追われ、一人前の採鉱夫として鉱山を渡り歩く。
それでも、湧き立つマタギの血を抑えきれない富治は採鉱夫としての職を捨て
余所者として八久和の集落に定住しマタギの頭領としての人生を再び歩み始める。

歳も50になろうとする冬、富治は山形と新潟県境の雪深い山で
森の主とも言える老獪な大熊と一対一の、それが運命であるかのような壮絶な死闘を繰り広げる。
体中に傷を負い右足を咬み砕かれながらも死闘の末に森の主を仕留め
傷ついた足をかばいながら妻の待つ集落へと帰っていく。
その臨場感にまるで自分がマタギになりきったかのように右足の激痛に耐え、
血の匂いを感じ、のしかかる大熊の重みに押しつぶされる息苦しさにもがいてしまった。

山歩きの技術や山で生き延びるための技をマタギの本で学んでいた僕は
改めてマタギの生活、山や獣たちへの畏敬の念を強く感じさせられた書でありました。






本を読み終えて午後4時、変哲ない酒肴でビ-ルと熱燗をゆっくりと楽しんで体を温めた。
午後5時半、日が陰ってくると山の気温は急激に下がって耐え難くなる。

早々に暖かいシュラフに潜り込んだ。
思いどおりの一日を終えて眠りに就く前の、今日を振り返るひと時がたまらない。






さして風もなかったのに木々の小枝にはちらほらと霧氷がついている。
いかに低山とは言え、冬の山の夜は極寒になると言う証左であろうか?





自然に触れていないと気が狂いそうになる。
これもまたマタギと同じように体に染みついた性(さが)なのかもしれません。

ほぼ1ヶ月ぶりの山遊び、雪と木々と冷たく澄んだ大気に浄化されて充たされた一日となりました。

さあ僕も、妻の待つ家に帰ろうか!
コメント (18)
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