山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

ブナの一生

2022-06-19 17:07:55 | 山歩き.散歩
新緑の山が気持ちよくて腰にコルセットを着けながらリハビリ山歩を続けているのだけれど
道迷いした牛奥ノ鴈ケ腹摺山から帰ってからというものコルセットを外すと腰が痛むようになってきた
今回は無理しないようにと牛の寝通りをゆっくり4時間ほど歩いてブナの森に癒された

登り始めは若いブナやミズナラに繁った若葉が眩い



巨樹の道に入ると樹齢数百年のブナの大木が目につくようになる(この2本はまだ壮年期か?)



この古木は幹に苔が繁茂し、キノコに取り付かれて樹皮から徐々に樹幹へと蝕まれてゆくのだろう



この老木は裏側が侵食されて大きな洞(うろ)ができている



この古木は幹一面に苔が繁茂し初夏にはヒラタケが鈴なりになる



雨宿りができそうなミズナラの大きな洞



鶴寝山の100mほど先にあるブナの老木
毎年鈴なりになるヒラタケに浸食されて幹の半分が枯れている



浸食された側の枝は枯れていて反対側だけが生き残っている
折れ曲がった枝を見ていると風雪に耐えながら長い時を生きてきたブナの人生を見ているような気がする



このブナの倒木はいったい何百年生きてこの山や富士を見つめてきたのだろうか?



そして苔やキノコやバクテイアによって人間の時間を遥かに超える途方もない時をかけて土に帰り次の世代を育む糧となる



その傍らではまた新しい命が産まれて営みが繰り返されてゆく
生きとし生けるものすべてが、それぞれのDNAにインプットされたプログラムに従って命を終えて行く
この森を歩いて若いブナや老木を眺めながら、そんなことを感じた一日でありました



ヒトリシズカの群生の中に珍しい4人静を見つけた
辺りを探してみると3人静や4人静をいくつも見つけることができた

 

6月になると耳障りなほどに鳴くエゾハルゼミ、ここにも短い命の循環が繰り返されているんですねえ

 

帰宅すると孫たちから父の日のプレゼントが届いていた



山登りと魚釣りに連れて行ってねと、嬉しい手紙が添えられていた!
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牛奥の頂きを二度も踏む羽目に。。。の巻

2022-06-07 00:46:01 | 山歩き.散歩
ペンションすずらんの広い駐車場に車を止めて午前5時にザックを背負った
ペンション前の甲州アルプスの標識から山に入り、一度勾配のある林道に出てから迂回路の山道へと進む

 

1時間30分後、迂回路から突然林道に飛び出すと向いに入山口の標識、ここから本格的な登山道が始まる



午前2時起きの身には蓄積疲労も相まって眠くてダルくてとんとペースが上がらない

 

目指すは日本一長い山名の牛奥ノ鴈ケ腹摺山(うしおくのがんがはらすりやま)
牛の名の付くこの山、丑年の昨年は登山者が押し寄せて大盛況だったとペンションの女将さんが話してくれた



変化に富んだ登山道の雰囲気に浸りつつ

 

牛歩の歩みでゆっくりゆっくりと進む

 

パノラマ岩の上から四周の景観を楽しむ(実は眠くてそんな余裕は殆どなかった)

 

更に登り続けてちょっとした岩場を越えると小ピーク、ここから少し下って牛奥のピークへと進む

 

小ピークを下ったポイントから牛奥の方向を望むと曇り空が広がっているというのに



いま来た道を振り返ればスカっと晴れた群青の空、この対比が面白い



この山は小ピークの下りから牛奥の頂上直下まで一面に茂る笹原に立ち枯れの木々が林立する異様な雰囲気を醸している



つづら折れの穏やかな勾配の道を立ち枯れの木々の不思議な雰囲気を眺めながらゆっくりと進む



午前9時、CTの2倍の時間を要してようやく頂きに辿り着いた
先着の登山者数名が荷を下ろしてまどろんでいる、僕は小1時間ほど眠って睡眠不足を補うことにした
ここは山の三叉路になっていて北に進めば小金沢山から大菩薩嶺へ、南は黒岳から湯の沢峠へ、西は僕が辿ったペンションへの道

 
 

午前10時、目が覚めると雲が一瞬だけ切れて南の方向に富士の頂きが少しだけ頭をのぞかせていた
南に進む登山道から富士に向けてシャッタ-を切ったあと、方角を確かめもせずにそのまま下山、これが間違いの始まりであった



南への下山路を進みながら微かな違和感を感じていない訳ではなかった
一直線に下る下山路は往路に比べて遥かに勾配がきつい
しかも下り終えて振り返れば笹原に林立していた筈の立ち枯れの木々が見えない

 

小ピークへの登り返しが往路に比べて長い、小ピークにあった筈の岩場がない
往路になかった筈のミツバツツジの花を疑いもせず喜々としてシャッタ-を切った
道迷いに気づくチャンスは何度もあった、なのに思い込みが強くて違和感をスル-してしまったようである



更に進むと黒岳~湯の沢峠への標識と現在地『川胡桃の頭』の標識、ここで初めて違和感が確信に変わった
冷静になるために一服つけて山地図を広げると南の湯の沢峠への道を辿っていることがはっきりした
元来た道に戻るにはもう一度牛奥のピークに登り返すしかない、自分の愚かさに全身から力が抜けていく
午前11時、時間に余裕があるからいいものの、これが日暮れ時ならどうしたものだろうか?
気力を振り絞って笹原の直登を登り詰めてピークに登り返し、ようやく西への下山路へと踏み込んだ
帰路バノラマ岩から大菩薩湖が見えたときにはほっと安堵のため息がついて出た



午後2時、ペンションに辿り着き、誰もいない清潔なお風呂で汗を流してから個室で3時間ほど仮眠をとった後の夕食
昼食を摂るのも忘れた空腹に強めのクラフトビ-ルが沁みる~!
とりわけ田舎育ちの僕には適度な味付けの山菜の常備菜4品と小かぶの浅漬けが懐かしい
さくっと揚がった山菜の天ぷら、90歳になるオ-ナ-のお母さん手作りの虹鱒の甘露煮も薄味でしっとりほろりと嬉しい
最後に頂いたタラの芽ご飯は仄かに薫るバタ-の風味が口中を撫でる初めての味わいに舌鼓を打った



疲れているときには、布団に入って足を延ばし長い溜息をつく瞬間に一番の幸せを感じる
2本のクラフトビ-ルのお蔭で午後7時から12時間たっぷり熟睡して疲れが癒えて朝食も美味しく頂いた



激しい筋肉痛という代償は払ったけれど道迷いという愚かにして貴重な体験をした牛奥ノ鴈ケ腹摺山の一日でございました
皆さんは、よもやこんなミスを犯すことはないでしょうが山ではくれぐれも慎重に行動したいものでございます
そして万一のビバ-クに備えて軽量のシェルタ-とビビィ、予備の水と食糧と酒は必ず携行したいものでございます。






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