山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

フロンティア

2008-08-24 22:40:12 | フライフィッシング
先週やった肉離れの傷未だ癒えず、部屋に籠もりきりの週末になってしまった。
まあ雨も降っていることだし、骨休めには丁度よかったかもしれないね。

そんな折、タイミング良く釣友Satoshiからメ-ルが入った。
イエロ-スト-ンのマディソンリバ-の釣行風景であった。

彼が釣り上げた厳つい面構えのブラウントラウトである。



人は皆それぞれが開拓者ではあるまいか?
自らの人生を切り開いてゆく開拓者ではあるまいか?

このSatoshiもまたその開拓者の一人である。
大学卒業と同時にあこがれのアメリカに渡った。
彼は牧場の仕事に携わりながらアメリカで暮らし、フライフィッシングの旅をするのが夢であった。

アメリカに渡って大学院を終え、牧場でカウボ-イの修行を重ね、
30才を過ぎた今、牛の繁殖のスペシャリストとしてフリ-ランスで仕事をしている。

そして十分過ぎる休日にフライロッドを携えて釣りの旅に出るのである。
右も左も分からぬ未知の国アメリカで夢を叶えたSatoshiにエ-ルを送らずにはいられない。



ネイティブのレインボ-。
このトルクフルなパワ-でギュンギュン引っ張られて指に火傷を負ったそうである。



Satoshiよ!
イエロ-スト-ンのパワフルな鱒も良いだろう。
しかし君も日本男児ならば、美しい日本の溪と繊細な日本の溪魚も決して忘れるでないぞ。

いつかまた日本で、麗しきヤマメや岩魚を一緒に追いかけようではないか。

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岩魚の溪へ

2008-08-18 23:25:53 | フライフィッシング
お盆中は殺生を控えて溪にも立たず、昼からビ-ル三昧の骨休めの日々を過ごした。

そして今日は事務所の夏休み最終日、計画していた岩魚の溪に入った。
林道を1時間ほど歩いた入溪点から2時間ほど釣り上り、後半は落差の厳しい落ち込みを源流帯へと遡行する。

来週と再来週は、南アルプスと中央アルプスのヤマトイワナの谿を日帰りで詰める強行軍になる。
今日はその足慣らしの積もりでもあるのだ。

入溪してしばらくは美しい溪畔林の中に清冽な流れが続く。



落ち込みの巻き返しから岩魚が姿を現わした。
岩魚の溪に棲む岩魚は、流れに磨かれ底石に同化して、岩魚本来の美しく精悍な面構えになるのだ。



素晴らしい流れを快適に釣り上がり、前方の石に飛び移ろうとしたその瞬間。
左ふくらはぎが『プチッ』と音を立てた。2~3歩進んで突然激しい痛みに襲われて立ちすくんだ。



左足に体重を乗せると激痛が走って動けない。肉離れである。
岩に座り込み、あまりの痛さにたまらずスパッツを外したが軽快する筈もない。

どうしようか?
先ずは冷静に考えよう。
ザックに1本だけ入れていたビ-ルを飲み、タバコをくゆらせた。

今日は月曜日、平日に人が入ることは期待できない。
今日に限ってツェルトもシュラフカバ-も携行していない。
予備の食糧も調理用具も持ち合わせていない、ないない尽くしである。



だとしたら自力で下山するしかないのだ。
ロッドをたたんでザックにセットし、山刀で木枝の杖を2本作って溪を下った。
激痛の走る足は、爪先立ちにして体重をかけないようにすれば少しは痛みが和らいだ。
こんな時、テ-ピングの知識があれば役に立つのかも知れない。

顔をゆがめながら、歯を食いしばりながら溪を下った。
落差のきつい上流域であったなら多分身動きできなかったはずである。



最後の林道歩きは3時間を要した。
この3時間の辛かったこと、車が見えた時には安堵感と疲労感でその場にへたり込んでしまった。

単独行の溪は様々な危険を孕んでいる。
熊との遭遇、鉄砲水、落石、転倒、転落、そして肉離れという伏兵も、、、、、、。

それでも単独行をやめられないのは何故なのだろうか?

山深い谿にひとり、五感が研ぎ澄まされていくことへの陶酔。
遭遇する危機を自分だけの知恵と技量で乗り越えていくことへの挑戦。

しばらくは溪に立つことは叶わないが、あの山の奥の溪には必ずもう一度挑戦したい。
そして、しばらく逢っていないヤマトイワナの谿にも、立ちたいと思うのだ。

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お気に入りの溪で

2008-08-09 23:33:46 | フライフィッシング
不覚にも夏風邪に罹ってしまいましてね。
この1週間というもの激しく咳こんで腹筋背筋が痛いのなんのって。

ちょうど10日前のことでした。
横浜のとある路上を歩いておりますとね、遠くで雷が鳴り始めたんですわ。
のんきに構えておりますと、あっという間に近づいてきて激しい雷雨に見舞われましてね。

持っていた雨傘なんて何の役にも立たず全身びしょびしょの濡れ鼠。
バスに飛び乗ったらこれがまたビンビンに冷房が効いてて頭ガンガン歯はガチガチ。
降りるに降りられず駅までの15分間はまるで拷問を受けているような苦痛でしたね。

おまけに電車の冷房もきつくて一気に夏風邪発病と相成った次第でして。
あれからと言うもの、ク-ラ-の風が頬をかすめただけで震え上がり激しく咳き込む始末。
いやあ夏風邪も馬鹿にはできませんな。

さて今日も猛暑。
家にいたらク-ラ-に震え上がる訳ですからね。
これはもういっそのこと涼しい溪の中で昼寝でもしていた方がよかばってんと言うことで。

冷えたビ-ルと簡単な酒肴をザックに詰め込んで。
その積もりは更々ないのだけれど釣り竿も一応携えたりして。



ザックを担いで溪を遡っているとね、せっかく溪に出たんだから一応ロッドも振ってみようかと。
まあ一応は夏の定番テレストリアルを選んだりして、、、、、エイヤ~っと。



キタ-----ッ!
デッケ-------ッ!
これはスゴイぞ、、、、人も羨む3寸は優に超えてるんでないかい?
しか~も、これはナナナンと関サバではあ~りませんか?



この際もう一枚大サ-ビスいたしましょうかね。
神の川で関サバが釣れたんですからね、これはもう奇妙奇天烈奇想天外突然変異!
年に一度出るかどうかの3寸越え、今日はもう大満足の釣果といっていいでしょうね。



ロッドをたたんでさあ呑もうと言うとき、感じたんですねテレパシ-を。
『助けて~、オラ泳げねえだよう。誰でもいいから早く助けて~。』



駆けつけて助け出してあげますとカナブンは言いよりました。
『くわばらくわばら、暑いからって無闇に飛び込むもんじゃねえやね。
早くウチ帰ってカアちゃんと一緒に昼寝でもしようっと』
ウンチを一粒残して、肩を落として帰っていきました。



一日一善。いやあ人助けは気分いいね。
一日三膳、一日三杯、この方がもっといいやね。
さあ、冷たい水で汗を流して、一杯やりましょか。



さあビ-ルの時間ですよ~!
グビッグビッグビッ、プッファ~。
やっぱりこれですよね~。
今日は釣りよりもこれがメインですからね。
涼しい溪でゆっくり呑むのですよ。



そして仕上げは冷たい沢水でしっかりもんだ冷や麦、
この喉ごし、この清涼感、飽きませんわ。



そして3時間、まったり眠るのです。
林間の涼しい溪で瀬音をBGMにして、こんな極上のお昼寝なんて他にはないものね。



どのくらい眠ったでしょうか?
すぐ近くで轟く雷鳴に驚いて飛び起きたんですわ。
バリバリッと近くに一発落ちましてね、こりゃただ事ではないわいと
さっさと荷物をザックに詰め込んで一目散にヒュッテに逃げ帰りましたよ。



ところがヒュッテにいるボランティアの人たちは悠然と食事や昼寝を決め込んでいる訳ですわ。
仕方がないのでオイラもここで飲み直すことに致しましたとさ、ジャンジャン。



皆さん、山での雷くれぐれもご注意くださいね。
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本流に夏ヤマメを追う

2008-08-03 23:07:47 | フライフィッシング
毎年この季節になると、ふる里の溪に立ちたくなる。
大きな流れに思いっきりラインを伸ばして本流の夏ヤマメと格闘したいという欲望に駆られる。
トルクフルな本流ヤマメのパワ-を知ってしまったら、
そのしびれるような快感の呪縛から逃れられなくなってしまうのだ。

午前7時入溪。
気温27度、すでに汗ばむほどの暑さになっていた。



先行者の釣り人に追いついて話を聞いた。
たった200メ-トルの間に、すでに8尾のニジマスを釣り上げて左手にぶら下げている。
『ヤマメはどうですか?』『この川にはもうヤマメなんていないよ』。地元の人さえこうである。
『ゆっくり釣り上がるから先に行っていいよ』。そう言われて先行させていただいた。



今日は管釣りからの落ちヤマメは相手にしない。
最初からポイントを6箇所に絞ってこの川本来のヤマメと対峙するのだ。



ふる里の夏祭りで偶然幼なじみと再会した。
ひとつ下のK君は小学生の頃から鮎釣りと鮎のひっかき漁の名手であった。



この川でボクたちは、小学生の頃から夏休みの毎日を日がな一日過ごしたものである。
日中は素潜り漁と鮎釣り、夕方はウナギのはえ縄を仕掛けて、それを早朝に引き上げに行く。
6人の仲間のうちで今でも釣りを続けているのはボクとK君だけになった。



夏祭りの夜、K君が切り出した。
『あそこ釣ってる?』『えっ、あそこって?』『冷たい湧き水のとこだよ』
『いや、釣ってないよ』『なんで?』『なんかさあ、ヤマメの聖域を犯すようでさあ』
『実はオレもそうなんだよ、なんか、ねえ』『あそこ、今でもいるかなあ?』



途中、大岩を巻く。



大岩の中にはボクたちが川遊びの基地にしていた岩屋がそのままの姿で残っていた。



『あの湧き水の場所はすごかったよね』。K君が言った。
確かにすごかったんだ。素潜りするとヤマメがウジャウジャいて、岩陰に隠れたり流れの中にユラユラ漂っていたっけ。
川床にはカジカがいっぱいへばり付いていてその間を縫うようにモクズガニがのそりのそり歩いていたものである。



『一度だけ探釣してみようか?』。ボクが提案した。
『一度だけね。一度様子見てあとは手をつけないでおこうよ』。彼も気になっていたんた。

ここは殆ど枯れている。



ここもダメだった。



ここは勢いよく噴出していた。川床からはもっと噴出量が多かったと記憶している。



やはりここの湧き水は生き残っていたんだ。
キズひとつない美しいヤマメがヒットした。泣き尺。



体高のある尺ヤマメもいた。
フライをひったくると一気に下流に走る。この瞬発力にしびれてしまうのだ。



32センチのヤマメ。
すさまじいファイトであった。フライのボディが食いちぎられて跡形もなく消滅している。



ヤマメの聖域を保ってくれている湧き水は2箇所だけになっていた。
2箇所とも川床から湧き水が噴出している



ちょっと痩せてはいるが23センチのヤマメが小さく見えてしまう。



今回最大の34センチ。
まるでシャケのような風貌をしていた。
あの頃は、こんなヤマメが当たり前だったんだよな。



6箇所あったヤマメの聖域は2箇所になっていた。
ちょっと寂しい気もするが、でもあの頃のヤマメは確実に生き残っていてくれた。
それが確認できただけでも積年の想いが晴れたような気がする。
ヤマメたちはこの場所で細々と生き残っているのだろうか?
あの頃と同じように沢山のヤマメやカジカがこの聖域で生を謳歌しているものと信じたい。



この川も少しずつ衰弱が進んでいる。
ボクたちが遊んだあの頃の健康な姿に戻ることは決してないのだろうが、
川も溪魚もできる限り長生きして欲しいと願ってやまない。

あの場所ではもう二度と竿を出すまい、そう心に誓った。




コメント (17)
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