山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

伊勢沢でシャワ-クライム

2007-08-28 17:57:53 | フライフィッシング
伊勢沢に入ってみた。15年ぶりの谿である。
この谿は金山谷と並んで、裏丹沢では最も水量の豊かな岩魚の谿である。
沢屋さんにも人気の沢で、釣り人にはなんとも悩ましい谿である。

ちょうど2年前の夏のことである。伊勢沢の出合いで『さあ行くぞ』と準備をしていると、来たのですよ沢屋さんのパ-ティが。2組も。総勢11人のパ-ティに先行されては岩魚も怯えてしまって釣りどころではなく、谿にも入らずあえなく退散となった訳でありました。さあ今日こそは、、、、、。

午前7時、ゲ-トを通過する。



林道をしばらく行くとトンネルが二つ。



30分の林道歩きで『神の川』本流へのエントリ-、登山道を下る。



そして本流へ降り立つ。すでにフライマンが二人ロッドを振っている。腰を下ろしてしばらく話す。二人は良くここへ来ているようだが沢は怖いようで、今日も堰堤を越えて本流だけをやるとのこと。沢に入ることを告げて先行させてもらう。



本流との出合いで準備をしていると、またもや沢屋さんがやってきた。でも一人だ。彼は釣りもやるらしくポイントを荒らさないように遡行すると言ってくれた。その言葉を信じたい。奥深い谿にしては何ともおとなしい出合いの雰囲気である。



今回、もし沢屋さんのパ-ティが多ければ、いっそのこと沢登りに切り替えようとザイルもヘルメットも用意してきた。どうにでもしやがれの開き直りモ-ドであれば腹も立たない。



最初の二段の滝。



一段目を難なく越えると2段目の左側にはロ-プが掛けられている。



ロ-プは使わずに右側のシャワ-の中をよじることに決めた。



水しぶきを全身で浴びながらのシャワ-クライム、きゃっほっほ-。
この季節ならではの爽快感あふれる沢遊びになった。



滝上に立って釜を見下ろす。ちょっとこわ~。



そしてまた二段の滝。



滝の途中ではガマガエルがデ-トの真っ最中。『じゃますんなよな~』だってさ。



この滝も難なく超えて、滝上からの眺め。



ここまでに岩魚を2尾バラした。そろそろ岩魚に逢いたい。



#12のテレストリアルに素早いライズ。太いトルクは感じないが鋭い引きをみせる。ランディングしてみて成る程とうなずいた。7寸程度の型ではあるが、こんなに美しい岩魚は久しぶりである。魚体に比べて素晴らしく尾鰭が発達している。



そしてまた滝が現れる。



そしてまた落ち込み。こんな落ち込みがいくつも続く。



そして美しい岩魚。さっきの岩魚とは体色も模様も違う。でも綺麗だ。



またまた二段の滝。



シャワ-の中を遡行する。これが爽快な沢登りの魅力かな。



このポイントもいるやろ?



ホントに美しい岩魚である。



ここはどうじゃ?



どれも型は大きくはないがホントに美しい。急峻な溪に育まれた岩魚はこんなにも素晴らしくなるんだ。



のんびりし過ぎて、このペ-スだと尾根に這い上がるには時間が足りない。まだ3分の1も遡行していないが、素晴らしい岩魚との出逢いを充分に堪能したし。遡行も釣りもここで終了して岩の上で昼食としよう。沢の水を湧かしてインスタントラ-メンを作る。



先ずは冷たいビ-ルでしょ。今日は谿が険しいのでちっちゃいのでガマンしよっと。



黒霧島も沢の水で割って、一杯だけね。



ラ-メンの具にする薫玉を狙うバッタ?
追い払おうとすると羽を広げて本気でおこっていた。最後まで逃げずに薫玉の表面をなめていたっけ、何とも根性の座ったバッタだこと。



谿の中でたっぷりくつろいだら、暗くならないうちに帰りましょうね。
林道から深い谷底を見下ろす。今度は金山谷をやろうかな。



最後のトンネルをくぐると『あぁ無事に帰ってこられた』といつも安堵する。



久しぶりのシャワ-クライム、そして大きくはないが美しい岩魚との出逢い。
満足の一日であった。

今日の教訓。険しい谿に入るときは、お酒は慎みましょう。とても危険です。

伊勢沢の谿と美しい岩魚、ありがとね。
今度はもう少し大人の岩魚に逢わせてね。




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本流に夏ヤマメを追う

2007-08-19 10:30:44 | フライフィッシング
今回は久しぶりの本流釣行である。
沢に入ってケガばっかりしてるから?ちゃうちゃう。本流に出たってアシの根に引っかかってひっくり返ったり、飛び移る筈の石に届かずに水没したりと、50才を過ぎてからはケガばかりしている。バランス感覚が衰えてきた証拠である。もう無茶ができない年になったと言うことだろうか?

1年ぶりのふるさとの本流である。沢ばかりやっていると、たまにはロングロッドを思いっきり振ってみたくなる。本流ヤマメの強烈な引きがたまらなく恋しくなるのだ。ここは、奥相模湖ダムの下流5キロ区間で、すぐ下流にある管釣りからはレインボ-が遡上し、上流にある2箇所の管釣りからはレインボ-と山女魚が落ちて生息している。昔は山女魚だけの川だったのに、、、、今ではレインボ-に席巻されてしまっている。でも本流魚の引きは格別なのである。




橋の上から、下流の管釣りを望む。この下流に更に1キロほど管釣りが続く。



管釣りの上流。今回はここから上流を釣り上がる。



管釣りのすぐ上流は、管釣りで釣り残されたレインボ-が遡上し結構な魚影である。



こんなレインボ-がフライに食らい付いてくる。『ネエちゃん、ちょっと贅肉が付きすぎでブヨブヨじゃない?』『失礼ねえ、きのう管釣りから逃げ出したばかりだから仕方ないでしょ』『でも、もうちょっと引き締めた方がいいと思うよ』『ムリっ!もっと食べてもっと太っちゃうんだもんね~。アタシさぁ、きのう面接してきたんよ』『へぇ、なんの面接?』『デブ専のキャバクラ。そしたら受かっちゃってさぁ。明日から店に出るんよ、だからお願い、今日のところは見逃して。仕事に穴あけちゃまずいでしょ』だって。ブス子ちゃんだこと。



ここ、いいんじゃない?



またレインボ-だよ~。でもこれキレイじゃん。引きも強烈で、ランディングしたあとも暴れるあばれる。この後もこんなレインボ-が6尾、引きを楽しませてくれました。



『高岩』。こどもの頃、いつも泳いだり素潜りしたりして遊んだものでした。あの頃は尺上ヤマメがうじゃうじゃ居たのにね。



この浅いところを徒渉します。でも深~い。



今日初めて出会う釣り人、餌師でした。目の前でレインボ-を釣り上げました。魚籠にはレインボ-ばかり6尾。



私はこの瀬でヤマメ狙いです。



やっぱり来ましたねえ。本流ヤマメはフライをひったくった直後、一気に下流に向かって走りだして強烈な引きを堪能させてくれるのです。これが狭い沢のヤマメと違うところですかね。フライを始めた頃には何度ティペットを切られたことか。型が大きくてトルクのあるヤマメに対処するためには、テンションを保ちながらラインを
送り出してやること。



この瀬も良さげでしょ。



やっぱりね。コイツもまた走り回って強烈な引きを味あわせてくれました。やっぱり本流ヤマメはちがうなあ。多分オスでしょうね、泣き尺のいい面構えです。でも口と胴の傷が痛々しい。管釣りで何回かリリ-スされたのかな。『ここでゆっくり休んで、君の子孫を残すんだよ』



ここもエェでぇ。



またまたヤマメじゃあ。でも、こんなところで掛けるともう大変。瀬に乗って一気に下流に走り、トロ場で休んでまた走る。夏の川の底石はすんごく滑る。ラインを送りながらヤマメと一緒に走るのが怖くてこわくて。やっと顔を見せてくれました。



今日の最終地点にはルア-マンがひとり。まだビギナ-でした。



発電所下の流れ。ここにもレインボ-が溜まっているはず。



なんじゃコリャ~!
ちっちゃいウグイのくせして#12のでっかいフライに食いついてきた~。『ハフハフっ、はだがづばっぢゃっで、いぎがでぎまじぇ~ん。おでがい、はやぐはずじで~。バブバブ、ぐるじ~、はやぐ~』『キミはこの川の生え抜きかい?』『ぞうで~ず、だがらばやぐ~』『生え抜きって言うことは天然ということだよねぇ?』『ぞうだよ~、ねぇはやぐじでよ~っだらはやぐ~、ぐっ、ぐるじ~。あっ、めがばわっでぎだ~、やべ~、うぐうぐっ』



かくして今日の釣りはズッコケて納竿となりました。縦横無尽に走り回るヤマメとの格闘を久しぶりに堪能して、さあビ-ル飲みましょうかね。霧雨というか小糠雨というか、そんなことは気にしない気にしない。このキュウリは細木数子のレシピからパクらせていただきました。ホント、フル-ツみたい。



生ハムのカイワレ巻。ワンパタ-ンで芸がないっすなあ。



今日の麺は『納豆ひやむぎ』



あぁ満足満足!



また来るね。



管釣りの落ちヤマメでも、本流に馴染んだヤマメの引きは強烈で充分堪能できました。



ふる里の溪と夏ヤマメ、ありがとね。








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『狂い』のすすめ

2007-08-16 23:39:40 | 書籍
『狂いのすすめ(ひろ さちや著.集英社新書)』




『閑吟集』。室町後期に編纂された歌謡集。
その一節『何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え』
(まじめくさって生きて何になろうか 人間の一生なんて夢でしかない。ひたすら遊び狂え)こんな意味なのだそうです。

とにかくこの本、のっけからふざけたことが度々出てくるわけですが、読み進むうちに『なるほどね、結構真理を突いてますな』と実感する。

目的意識を持つな!
幼稚園の運動会での徒競走。誰かが転ぶと先頭を走っていた子が戻ってきて倒れた子を助け起す。『大丈夫、痛くない?』と。転んだ子を無視して一着を目指す子と助けに戻る子とどちらが正しいか。こんな時、大人はどのように教えるのが正しいのだろうか?

精神病院の浴室で、一人の患者が浴槽に釣り糸を垂れていました。通りかかった医者が『どうです、釣れますか?』『釣れるわけがないじゃないですか。ここは風呂ですよ』。魚を釣るために釣りをする。これは真面目な大人の論理ですね。釣り糸をたれるのは魚を釣るためですが、むしろ本当に釣りを楽しんでいる人は、魚が釣れようが釣れまいがどちらでも良い訳です。ただそこで釣り糸を垂れる。なんかこれ私のこと言ってるのかしらん。

目的意識があると、人間はその目的を達成することだけに囚われれてしまい、毎日の生活を灰色にすることになる。つまり人生を幅広く楽しむことができなくなってしまうと言うことかも。

生き甲斐は不要!
世の中の役に立つ人間になろうとする、その卑屈な意識がいけない。私たちが生き甲斐を持とうとしたとき、私たちは世間の奴隷にされてしまいます。世間は私たちに生き甲斐を押しつけますが、それに騙されてはいけません。人は生まれ、苦しみ、そして死ぬ。人生の意味など、そんなものは何もない。そして人間の一生もまた何の役にも立たないのだ。彼が生まれてこようと来なかろうと、生きていようと死んでしまおうと、そんなこと一切何の影響もない。→だから世間に気兼ねなく自由に生きよということだろうか?

孤独を癒してくれるもの!
『人、世間の愛欲の中にありて、独り生まれ、独り死し、独り去り、独り来る』
人間は根源的に孤独です。ひとりぼっちで寂しい。だから何かを求めます。何か癒すものが欲しいのです。でも結論的に言えば、人間の根源的な孤独を癒してくれるものなんてありっこないのです。したがって、孤独の癒しを求めてはいけません。癒される訳がないのです。そのことをしっかり認識し『孤独に生きるのではなく、孤独を生きる』のです。

結論!
私たちは仏(ほとけ)のシナリオの中で役を演じているのです。演じるという言葉はplay、つまり遊びです。遊びに目的を持ってはいけないのです。あなたの人生は、あなたのものではありませんか。世間に気兼ねしながら生きるなんてもったいないもったいない。世間を気にせず主体性を持って自由に生きる。そういう生き方を仏教は教えてくれています。つまり自由人になれと、、、、、。

と、こんな内容です。な~んだ、仏教の教えを優しく説いた本だったのね。
俗世界に生きる人間の生き方とは、まるで真逆の生き方をせよと言っているが、逆もまた真なり。こんな生き方ができればホントに楽なのだろうな。本来、人間はこんな生き方をすべきなのかもしれませんね。

 
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迎え火

2007-08-14 00:02:29 | 独り言
我が家のお盆は、ちょっとだけ田舎の風習に従ってやっています。
私も妻のふる里も、8月13日には迎え火を焚きながら、お墓にご先祖様を迎えに行って家に連れて帰ります。そして8月15日には送り火を焚きながら、ご先祖様をお墓まで送って行くのです。

ご先祖様が家に居る3日間は私たちと一緒に過ごす訳ですから、仏壇にも同じ食事を供えて振る舞う訳ですね。

今年も息子と一緒に玄関で迎え火を焚きました。父と母の想い出を話しながら迎えました。田舎では松の根を迎え火に使います。ヤニをたくさん含んでいるので少量でも長い時間燃え続けるのですが、ス-パ-で手に入るものはアッと言う間に燃えちゃって風情も何もありません。



私は毎月、仕事がてら田舎に帰りお墓参りをしています。
墓石には父と母への感謝を込めて『落葉帰根』の文字を刻んでいます。大きく繁った葉も、秋になれば地に落ちて根に帰り、次の世代を育む糧になる。人間も同じなんだと思います。

私たちは今、この世に生を受けて生きています。でも、いま私たちが生きていることそのものが奇跡なのだと思っています。私たちの先祖の誰か一人でも、次の世代を作る前に死んでいたら?そう、私たちはこの世に生を受けることはありませんでした。ずっとずっと繋がってきたということ、これこそ奇跡なのだと思います。

血の繋がりという奇跡。親と子と言う、世界で一番シンプルで、世界で一番強い繋がり。お墓参りの度に、こんなことに想いを馳せながら父と母に感謝して掌を合わせています。お父さん、お母さん、私はこれからも家族を大切にしていきますからね。





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渓流へいらっしゃい

2007-08-13 00:00:17 | 蕎麦、うどん、ラーメン
もう25年も前のことだろうか?毎週、心待ちにしていたテレビドラマがありました。

挫折したホテルマンが八ヶ岳高原ホテルの再建を任されて、朽ち果てそうなホテルのペンキ塗りから一つひとつ創り上げてゆく物語であったと記憶しています。ホテルのホスピタリティというものと、チ-ムの大切さを初めて考えさせられたような気がします。

『高原へいらっしゃい』。田宮二郎さんの包容力を感じさせる笑顔が懐かしく浮かびます。ふと、何の脈絡もなく思い出した遠い日の記憶です。

毎日猛暑の日々ですね。
『渓流へいらっしゃい』。神の川の溪の呼ぶ声に誘われて、ひんやりとした林間の溪で一日を過ごしたいと思います。

おそらく大渋滞になるであろう。深夜、日付が変わる前に中央高速に乗り、道志川の大河原に向かいます。深夜の大河原には満天に輝く星空がありました。降るような星空をぼんやりと眺めながらウイスキ-をチビリチビリ、そして石垣の上に広げたシュラフに潜り込みます。私にはこんな野宿が性に合っているようです。



目覚めたのは午前4時半、辺りは少し明るくなり始めていました。もう少し眠ろう。



午前6時、鮎釣り師たちがチラホラと集まって来ています。この区間だけで30人以上の釣り師が両岸から竿を出すのです。私がやっていた小中学生の頃は川を遡行しながらやったものですが、今の鮎釣りはまるで管理釣り場のようになってしまったのでしょうか。



この石垣の上が今日のねぐらでした。シュラフを畳んで別天地の溪へ向かいます。



山々に囲まれた田んぼにも青々と稲が繁っています。あとひと月もすれば黄金色の稲穂が実ることでしょう。





(初めての溪)

今日は初めての沢を探釣しようと決めていました。沢の名前も分からない小さな沢でした。午前7時、入溪してすぐに新しい足跡が見つかった。こんな名も知れぬ沢にも人が入っているのかと驚いたり感動したり。



きつい傾斜の落ち込みがどこまでも続いています。初めての溪はワクワクしたり、ちょっと怖かったり、いつも新鮮な期待を抱かせてくれるものなのですね。



フライは#16のアントパラシュ-ト。先行者がいるので思いっきりサイズダウンしてみる。この溪に住むのはヤマメだろうか、岩魚なのだろうか。どうしても顔を見て、溪魚が生息していることを確認して帰りたいと思います。



更に狭い谿をよじ登る。



いかにも岩魚が飛び出して来そうな落ち込みが続きます。溪魚は居ないのだろうか、先行者に怯えているのだろうか。フライへの反応は、、、、一度たりともない。



岩陰の薄暗いあの落ち込みの奥に、岩魚は潜んでいるに違いない。身をかがめ、息をひそめてフライをプレゼンテ-ションした、、、、フライはひらひらと漂っている、、、、心の中で数を数える、、、、ひとつ、ふたつ、、、、、、6つ数えたとき、、、、その岩魚はひったくるようにフライに食らい付いた、、、、やっぱり居たんだ!



初めての溪で、最初の一尾、いつも感動するものですよね。
20センチに満たない小さなイワナくんですが、険しい溪に生きる風格を感じます。こんなところにも地元有志の人たちが放流しているのかな。



更に遡る。



ここで油断してしまった。右足のグリップが弱かったのだろうか、ズリッ、ズズズ--ッ。岩の出っ張りに右足のスネを思いっきり打ち付けてしまった。痛ってぇ。しばらく顔をゆがめ、息を詰めながら回復を待ったが、骨の痛みはひいてくれなかった。やはり単独行は怖い。がっ、やめられない。


まだ良いポイントが続いているようでしたが、ここで帰ることに決めました。



一尾に出逢えれば、それで良いのです。



(日蔭沢の下流)

初めての溪を慎重に下りた。
午前9時、痛みも少しひいている。溪食にはまだ早すぎる。ちょっとだけ日蔭沢に入ってみようか。本流の出合いからちょっとだけ。さっきの沢とは溪相が全然違う。決して広くはないのに、岩が白く乾いていて開豁な溪に感じてしまう。



良いポイントが続く。でも出ない。



フライを#16のオドリバエにチェンジする。
オドリバエは6月後半から7月上旬のフライであるが、アントとしても使える優れものである。



こんなポイントが続く。先行者が居るので反応がシブイ。



やっと出たよぅ、あの流れ出しから。



『ありがとね。君に出逢えたからね~今日も良い一日になりそうさ~。さあ帰ろうかね~』『えぇっ、もう帰っちゃうん。まだいいとこあるし、上流はイワナも居るんよ』『ホントにもういいさ~。美しい君に会えただけで充分幸せさ~』『そうなん、じゃあまた来てね』『うん、また来るさ~。元気でもっときれいになるのであるよ~』



8寸ほどのホントに美しい山女魚でした。彼女に別れを告げて元の流れに戻しました。『山女魚の恩返し』な~んてないよねえ。振り返ると、まだ良い流れが続いているのでした。でも今日は後ろ髪を引かれる思いもありません。





(林間の溪で川飯)

午前10時半に釣りを終え、上流のダイニングへ向かいます。
『神の川ヒュッテ』はいつになく賑わっていました。私はこの賑わいが苦手です。



キャンプサイトは、恒例のボウイスカウトの合宿です。これがまた騒がしいのです。私はこの騒がしさが苦手です。



賑わいと喧噪から早く逃れたくて、肩にズシリと重いザック担いで足早にヒュッテの横を通り過ぎました。そして、いつものダイニングへ。緑の岳樺に覆われた林間の溪です。下界とは10度以上の温度差があるでしょうか。ひんやりとした爽やかさが何とも言えず心地よいのです。



今日のメニュ-はあっさり系、しかも適量と言うことで。



冷やしトマトとモッツァレラチ-ズ。の、はずが、買うの間違えちゃってカマンベ-ルチ-ズになっちゃいました。けど、これも中々ビ-ルに合うことが分かっちゃったりして。ひょうたんから駒と言うやつですかね。



今日のビ-ルは『ニッポンプレミアム』。そして焼酎はいつもの芋で『黒霧島』。
浮気はしないのです。



清冽な流れに足を浸して火照った体をク-ルダウン。そして自分だけの『孤独』を楽しむ。これぞ正しい男の夏休み、な~んて一人悦に入っちゃって。スミマッシェ~ン。



バシャバシャと、冷たい流れにアンヨを遊ばせてはしゃいでおりますと、いつの間にか私のそばに若いガマガエルが寄ってきたではありませんか。



『キミ、名前は?』『おいら、かん助』『かん助はいくつだい?』『オイラはまだ1才、人間で言うと少年と青年の間くらいかなあ』『そうなんだぁ、かん助はいつも一人で気楽でいいやね~』『そんなことないよ、ひとりぼっちは寂しいものだよ』『キミの両親や兄弟はいるの?』『生まれてから誰とも会ったことないんだ。だから天涯孤独ってヤツだよ』『そっかぁ、それは寂しいだろうなぁ』『ホントの孤独って、それはそれは寂しいものだよ。だからオイラは、オジサンみたいに時々孤独を楽しむなんてこと、理解できないんだよね』『なるほどねぇ、オジサンには心が繋がってる家族や友達がいるからね、ホントの孤独じゃないから孤独を楽しめるのかも知れないね』『そうだと思うよ』『まあ、今日はここで一緒に過ごそうや』

『スモ-クサ-モンとカイワレ巻、食べてみる』『いらな~い、お腹こわしそうだもん』『そんなことないさ~。いつも何たべてんの?』『何でも食べちゃうよ。ミミズとかサワガニとか、死んだ蝉とかちっちゃいヘビとか、うまいんだよ』



『オジサン、そのケガどうしたの?』『いやぁ、岩からズリ落ちちゃってさあ、カッコ悪いよなあ』『もう年なんじゃない?無理しない方がいいよ』『あのなぁかん助、、、、ハイハイ』



『オレ25センチ、かん助は?』『オイラは1センチくらいかなぁ』『ちっちゃ-』『でもさぁ、足ヒレがついてるからとってもうまく泳げるし、岩に吸い付いちゃうから、オジサンみたいにズリったりしてケガなんか絶対にしないよ』『そうなんだぁ、それは羨ましいなあ』



『ちょつと待っててね、冷やむぎ作るからね』

湧き水でお湯を沸かそう。



茹で上がった冷やむぎは、冷たい湧き水で洗ってもんでしめる。どうですかこのツヤ、旨そうでしょ。



そして氷を散らして、涼しげでしょ。やっぱり夏はこれですよね。日本に生まれてホントに良かったと感じる瞬間ですよねぇ。



さあ、いただきましょう。
だし汁につけて、ちゅるちゅる~っと。この喉ごし、なめらかさ、涼やかさ。



お腹も満ちて、体の隅々にまでお酒がまわって、心地よい気だるさに包まれて来ました。ゆっくり体を横たえると、そのまま眠りに落ちてゆきそうです。



『オイラ、そろそろ帰るね』『そうかぁ、また会えたらいいね』『うん、オジサンここには良く来るの?』『あぁ時々ね。来たときは必ずここに居てお酒呑んでるからね、かん助もまたおいで』『うん分かった。オイラも時々ここへ来てみるよ。じゃあね』『あぁ、元気でな』



この空間だけは、ゆ~っくりと時がながれています。
私の体内時計もまた、ゆ~っくりと時を刻んでいます。下界の喧噪から離れて過ごすこんな時間、お金は無いけど、とても贅沢な時間です。



冷たい冷やむぎとカン助、ありがとね。

そして、あなたもぜひ一度『渓流へいらっしゃい』













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既成概念って何様?

2007-08-09 23:03:28 | 独り言
由緒ある武蔵野の住宅地に赤と白の縞々模様の家が出現すると言う。これに怒った近隣の主婦二人が建築差し止めの訴訟を起こしたのだとか。我が儘の自己主張もここまで来るとナンダカナ-である。

もともと、美しいとか素晴らしいとか美味しいという感覚は至って主観的なものであって、決して普遍的なものでは無い筈なのにね。

赤と白の縞々模様は『色の暴力』で、屋根につけた塔は『カタチの暴力』って、なんと素晴らしい表現をなさる方々なのだろうか。こんなに素晴らしい表現力があるのなら、もっと他人の表現を受け入れる感性があっても良さそうなものなのにね。

由緒ある武蔵野の住宅地に家を建てるのなら、色はこうであらねばならない、カタチはこうあらねばならない、こんな既成概念に縛られたおばちゃんたちの感性が古すぎると、あまのじゃくの私は思ってしまう。つらつらと町並みを眺めて見ても、家の色もカタチも決して統一性なんてなくて、不揃いのリンゴよりもずっと不揃いだと思うよ。

私なんぞは至ってミ-ハ-なので、楳図かずおさんが隣人になってくれたら、もう舞い上がっちゃって一緒に写真撮って即ブログに載せちゃったりして。赤白の縞々模様なんてすごく目立つから電話で道案内するのに目印にちょうど良いしね。

大体、こんなことで一々難癖つけて訴訟沙汰にしてたら、町中大変なことになっちゃうと思うよね。

お前んちのグレ-、なんとかならないのかねぇ。辛気くさくていけねえよ。お前んちの色のせいでオレが鬱病になったらどう責任取ってくれるんだ。早く取り壊してくれや。取りこわさねえと訴訟起すからな。

あんたんちの黄緑色はなんだよ。ウ○コみてえで飯が不味くていけねえよ。うちの家族が黄緑色のせいで栄養失調にでもなったらどうしてくれるんだ。

あんたの家はちっちゃすぎるよ。貧乏くさくって、こっちにまで貧乏神が移って来そうでやりきれないよ。頼むからもっとまともな家に建て直してもらえないかな。立て直す金が無いんだったらとっととこの町から出てってほしいんだなぁ。

お宅の家はデッカすぎますよ。しかも真っ黒だし。いつも見下ろされているようで圧迫感に耐えられないんですよ。お願いですから、もちっと小さくして頂けませんかねぇ。

お宅のキンモクセイ、しかもデッカイのが2本も。あれ、臭くていけませんよ。えっ、良い香りですって。ふざけてもらっちゃ困りますよ。あれは臭いって言うんですよ。そんなことも分からないんですか。私なんぞは、あの匂いが肺の中に入ったとたんに咳き込んじゃって死にそうになるんですよ。お宅のキンモクセイのせいで肺病にでもなったらどうするんですか。訴訟を起しますよ。

そのうち、あんたの顔が気にいらねえ、な~んて町中のみんなが言い出したりしたら、、、、、。

まあ、人の感性や受け取り方は色々ありすぎますな。
人生いろいろ、○○もいろいろなんて誰かが言っておられましたが、その色々が、あちこちでぶつかり合っちゃうと、もう収拾がつかなくなっちゃって。

ゴミ屋敷や得体の知れない住人は困りものですが、まあほどほどに。







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お詫びとお知らせ

2007-08-08 09:53:34 | 独り言
先日、ある方から『gooメ-ルを送りました』と言うメッセ-ジを頂きました。
根っからのアナログ人間の私は、実はgooメ-ルの存在すら知りませんでした。

メッセ-ジを頂いてさっそくgooメ-ルをクリックしますと、ナント178通ものメ-ルを頂いていたのです。しかも保存期間6ヶ月ですから、ブログを公開して1年半の間にはもっと沢山のメ-ルを頂いていたものと思います。

メ-ルの存在に気づかず、しかもご返信もせずに本当に申し訳ありませんでした。
中にはリンクのお知らせもあったものと推察しております。

さて、メ-ルですが、このパソコンは業務用のため可成り厳重なセキュリティを施してあるようで(実は私には良くわからないのですが)メ-ルを開くのにもそれなりの手間がかかるようでして、結局はコンピュ-タのディ-ラ-さんからは『メ-ルを開かないように』と言う指示がありました。

よって、その指示に従って今後もメ-ルを開かないことにさせて頂きます。今までにメ-ルを頂いた方々には本当に申し訳ございませんが何卒ご理解頂きたく宜しくお願い致します。

さて、今後メ-ルが必要な際には下記のアドレスに送信して頂ければ幸いです。

私の無知のために折角メ-ルを頂きながらご返事もせずご無礼致しましたことを心よりお詫び申し上げます。



以上、お詫びとお知らせまで

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ちょっとだけ 釜瀬

2007-08-05 16:26:33 | フライフィッシング
きょうは塩川の支流『釜瀬川』を訪ねました。ちょうど一年ぶりの釜瀬です。上流部は緑濃い山岳渓流の様相を呈していて、いつ来ても溪相の素晴らしさに変わりはありません。今日は限られた時間、ちょっとだけ釜瀬で遊びました。

午前5時半入溪。いやぁ、ちと遅かったかぁ~!
車止めにはすでに2台の車がありました。先行者は何人いるのだろうか?
小さい溪だから、いつになくハイプレッシャ-の釣りになりそうだ。気が滅入ってきちゃったよ。

先ずは穏やかな流れから始まります。まあ、この緑の溪に遊べるだけで良しとしましょうかね。



今日は6フィ-ト5インチの改造ロッドを使います。
フライは#12のテレストリアル、CDCウイングの『STスペシャル』、ここ2年ほど夏場には好んで使用しています。これがまた結構きくのです。



しばらくは林間の穏やかな流れが続きます。
すぐ前に先行者がいるのかな、反応は全くありません。



この釜瀬はヤマメとアマゴと岩魚の混棲の溪です。下流はヤマメやアマゴ、上流は岩魚が多く、最上流部の細流には腹の黄色い居着きの岩魚が生息しています。ここも良いポイントではありませんか?でも反応は全くありません、きびしいなぁ。



徐々に落ち込みが現れて山岳渓流の様相を呈してきました。
ここでフライを同じSTスペシャルの#16にサイズダウン。先行者の竿抜けポイントを丁寧に探っていきましょう。



やっと出てくれましたよ~、あの肩から。ちびヤマメでもうれしいなあ!



大岩ごろごろの大好きな落ち込みが連続してきました。きっと岩魚が、木々の枝から落ちてくる餌を虎視眈々と待ちかまえているはずなのです。



反応がな~い。
もうお腹いっぱいなのかな?先行者に荒らされちゃったのかな?岩魚よ、お願いだから虎視眈々と待っていておくれ。いつものゆったりモ-ドから、久しぶりにホントに本気のやる気モ-ドに変わります。



ここでフライを#16のブラックパラシュ-トにチェンジ。
どうしても出ないときの最後の最後の、私にとっての必殺フライです。どんなにプレッシャ-が高くても、どんなにお腹いっぱいでウゲ~ップな~んていってる岩魚でも、いくらツワリのひどい雌岩魚でも、夕べ彼女と夜更かしして眠った~い岩魚でも、このブラックパラシュ-トを目の前に置かれたら、もう辛抱たまりましぇ~んとカブリついてくるのですな。



お願いだから岩魚ちゃん、どうかお顔を見せて頂戴ね。



ここで出なかったら、もう釜瀬になんて来てあげないからね、、、、。



ムッヒッヒ、グフフフッ、やっぱり辛抱たまらず来てくれちゃったのねぇ!
あの大岩の蔭でブラックパラシュ-トをまちこがれてたのね。ねえ岩魚クン、これで分かったでしょ、きれいな花には痛った~いトゲがあるってこと。旨そな餌には怖い怖~いハリがあるってことが。オイラのように優しそうな男だって、たやすく信じてはいけないのだよ。



更に遡行すると程なく分流地点へ。ここからは流れがちょっと細くなって居着きの岩魚の溪に変わります。只今8時半、残念無念もう時間切れとなりました。



今度は平日に、もう一度ゆっくりやってみたいものです。



瑞籬山が私の帰りを手を振って見送ってくれました。




あぁ、せっかく釜瀬まで来たのに。
増富温泉にも浸からずに、ビ-ルも呑まずに、そしてお蕎麦も食べずに帰るなんて、こんなに満たされない釣行なんて許せないことなのでございます。でも今回は時間がないので仕方ありませんな。男はつべこべ言わずに帰るのです。


釜瀬の岩魚よ、オイラと遊んでくれてアリガトネ。




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