5月の仕事が完結したら南信州を訪ねようと決めていました。
南アルプスの深南部、日本のチロルという地名にも憧れていました。
大アマゴが棲む遠山川が流れ、幾つもの険しい支流には大岩魚が棲むという。
おまけに南信州は山肉といわれる鹿や熊や兎を扱う肉屋も軒を連ねるという。
お蕎麦の産地でもある。これだけ条件が揃えばもう私にとってはサンクチュアリのような世界であるのです。
平日の夜明け前には中央高速へ。今日は運転できなくなりそうなのでZARDはやめて吉田拓郎です。拓郎を聴くと平日に旅することへの後ろめたさが不思議と薄らいでくるのです。
♪出会いや別れに慣れてはきたけれど 一人の重さが誰にも伝わらず
どこかへ旅立てば振り返りはしない それでもこの町に心をしずめたい
そうだ 元気ですよと 答えたい♪
トンネルは異次元の世界への入り口。
ここを抜ければ憧れの遠山郷、ワクワクしてきます。
トンネルを抜けると、遠山川の大支流『上村川』がお出迎え。大アマゴの臭いムンムンですなあ。
私はと言うと、この溪では一度もロッドを振ることはありませんでした。岩魚の溪でロッドを振ったあと、そして集落を巡っておじいちゃんやおばあちゃんと立ち話をしたあと、ここでのんびり鹿刺しと冷え冷えのビ-ルで至福の時を過ごしたということにしておきましょう。
このためにこそ私はこの地を訪ねたのです。たっぷりと味わいましたよ。滞在した2日の間は昼も夜も食べ続け1200グラムの鹿刺しと馬刺しが胃袋を満たしてくれました。とりわけ鹿刺しは地元の猟師さんが冬場に捕獲したもので、とろっとした舌触りと甘み、それはそれは絶品でありました。
そして河原で呑むビ-ル、五臓六腑に染み渡るのでございます。プッファァ~!
遠山郷、とりわけ『下栗の里』は急斜面にへばりつくように家々が点在する集落で『日本のチロル』と呼ばれています。
山風がことのほか強いのでしょうか。どの家の屋根にも大きな石が置かれていました。
急斜面の小さな畑で、足を踏ん張りながらおばあちゃんが野良仕事をしています。
『おばあちゃん、大変ですねえ』『ほんなこたぁねえだよ、おじいさんと食べる分だけ作ってるだけだからなぁ。年をとるとこれが楽しみでよう』『ここは風が強いんですか』『あぁ強いだわ、雨が降りゃあ崖もくどれるしなあ。おにいさんはどこから来たでぇ』『東京から釣りに来ました』『まぁよぅ、ご苦労さんですよう』ここにはまだ日本の原風景がそのまま残されているような懐かしさがありました。
遠山郷には蕎麦屋さんもたくさんありました。ここは街道沿いの『むらの茶屋』
懐かしい囲炉裏がありました。
ここの蕎麦は集落のおばちゃんたちが作っています。今でこそお蕎麦は美味しいともてはやされていますが、昔はやせた畑でしか作れない貧しさの象徴のようなものだったと、おばちゃんが話してくれました。でも、やっぱり旨いよ、おばちゃん。
遠山郷での二日間、思えば鹿刺しとお蕎麦しか食べませんでした。この食生活、実は私の理想とするものなんですねえ。釣りはたったの半日だけって何しに来たん?
そうそう、釣りの話もしましょうかね。
先ずは民宿『ひなた』に立ち寄って釣り券を手に入れる。人の良さそうなおばちゃんで『今日は泊まり客はいたんですか』『いやぁいねえよ。今は茶摘みで忙しいもんだで客はとらねえだ』『車は奥まで行けるかなあ』『だいじょぶだら、こないだくどれたけんども役場がなおしてくれたでね』。よし、源流帯までいけそうだ。
奥に向かう途中で仲良く散歩するおじいちゃんとおばあちゃんに会いました。『こんにちは~』『旅の人かえ~』『そうなんですよ~、奥の支流で釣ろうと思って』『釣りかえ~。うちのおじいさんは、このあたりじゃあ釣り名人だっただよう』。
心なしかおじいちゃんの顔が自慢気にほほえんだ。『おじいちゃんが一番好きだった沢はどこですか~』『そうだなぁ、諸河内だなあ。あすこは堰堤がねえし一番近いし、険しいけんどでけえ岩魚を釣ったもんだ』『じゃあ諸河内に入ってみます、ありがとうございました』『気をつけてな~』
遠山川本流の大アマゴは餌釣り師が狙います。私は岩魚、それもネイティブ岩魚に逢いたくて上流の支流へと足を踏み入れました。大自然が色濃く残る溪は、一人でいると恐怖を感じるほどの深い森の中にありました。
現地への途中には野生の猿が出没します。
カメラを向けると、こやつ、上から大きな石をころげ落としてきたんですよ。頭が良いと言うか憎たらしいと言うか、マジで切れそうになりましたねえ。『こりゃエテ候、人間をなめたらいかんぜよ!』『なんじゃと、野生をなめたらいかんぜよ!』。いやはや野猿の方が貫禄ありますな。
そして、子鹿とも遭遇です。よ~く見てくださいね。右端の杉の木の左側、ちょこんと顔を出しているのが見えませんか。可愛いでしょ、5分ほど見つめあってしまいました。さっきの野猿とは大違いです。こんな可愛い子を見ちゃったら鹿刺しなんて食べられませんよねえ、たらふく食べちゃったけどね。こんな野生動物が当たり前のように出没する自然の中にしかネイティブイ岩魚はもう残っていないのかもしれませんね。
午前7時、本流と『北又沢』の出会い。すでに浜松ナンバ-と足立ナンバ-の車が。あぁ人がいてくれて良かったぁ。ここでインスタントラ-メン2個で腹ごしらえして、ちょっとだけロッドを振ることにする。
北又沢。沢なんて名ばかりの水量豊富な澄んだ流れにため息が出てしまう。ここはアマゴの溪だが、堰堤を越えて林道を6キロ登ると岩魚の魚影の濃い源流帯が控えている。いつか釣友と溪泊しながらやってみたいなあ。アマゴには出逢えず奥へ向かった。
悪路を20分、遙か高みから流れ落ちる諸河内沢の出会いに着いた。まさに岩魚の溪である。藤の花が咲く。この季節がフライの盛期だと言われる。ネイティブに出逢えたらいいな。
ネイティブに出会う旅がここから始まる。溪の女神様、どうか私にほほえんで下さいね。
そして第一投目に飛び出したのがチビイワナくん。ちっちゃいけど見事な尾鰭だ。遠山のイワナは大和に近いといわれるがちょっとちがう。でも嬉しいなあ。
良いポイントが続きます。一投ごとに岩魚が飛び出すような気がして緊張してしまう。
落差がきつくてポイントが見つからない。こんな急峻な流れを岩魚はホントに遡行するのだろうか?
また好ポイント、でも出ない、、、でない、、、でないよう。
岩をよじ登っていると白い花、心なごむ。岩にどっかとへたり込んでマイルドセブンに火をつける。冷たい水が美味しい。もう釣れなくてもいいや。今回は鹿刺しとお蕎麦がメインだからな。心の中を言い訳が巡り始めた。
さあ、まだ先は長いぞ。気を取り直して次のポイントへ遡行する。いかにもと言うポイントが現れる。でも流れから外れたテラスのようなポイント、いかに岩魚であろうがあんなところには登れないだろうに。でも一応フライをプレゼンテ-ション、、、、、。ゆらゆら~っと、なにやら恐ろしくでっかい影が浮上して、、、。
14番のテレストリアルを吸い込んだ。すかさず合わせる。しっかりフッキングした。『きたきた~岩魚だ~、でっけ~。なんだこりゃあ。すっげ~』。一呼吸おいて岩魚は左上流へジャンプ、、、失敗、、、落差のキツイ下流へ転げ落ちて行く。やっべ~、ティペットが切れるかと思ったべさ~。かくして15分の格闘の末にランディングネツトの中へ。頭のばかでかいギョロ目の猛者は、これでも尺を越える素晴らしい面構えをしていた。『ついにネイティブの尺に出逢えたぞ~』。叫びたい気持ちをやっとの事でおさえた。
やっぱりいるんだよなあ、すごい沢だよなあ。興奮冷めやらぬままネットの中の岩魚に見とれていると、ふと山わさびが目に入った。おう、これはグットタイミング。『だっ、旦那、わっ、ワサビなんか摘んでどうすんの?』『決まってるじゃん、これで刺身喰ったら旨いんだぜ』『まっ、まさかオイラを喰おうってんじゃねえでしょうね』『もちろん喰うんだよ、刺身でな~』『やっ、やめた方がいいっすよ。オイラきのうヤモリくったしぃ、蛭もくったしぃ、毒虫だって食ったんだかんね。もしオイラを喰ったら旦那も死んじゃうんだかんね。知らないんだかんね』もちろんリリ-スしましたとさ。
こうなったらもう一匹出会いたい。さらに急峻になる溪を遡る。そして二股、ここから流れは少し細くなる。が、ここからが本命だとさっきのおじいちゃんから教えてもらった。
水量の少し多めの左の溪を遡行することにする。このながれも好ポイントが随所に現れる。15分ほど遡行したであろうか、、、こんな、、、めくるめく出逢いがあろうなんて、、、期待はしていたものの、、、叶うなんて思ってもみなかった、、、溪の女神はいたんだ、、、ほほえんでくれたんだ、、、そしてネイティブが、、、尺岩魚が、、、、いてくれたんだよ。
とても優しい顔つきの雌岩魚だろうか。しかし、急峻な流れに鍛えられた胸ビレも尾ビレも逞しくて見事だ。この子に逢いたくてここまでやってきたんだ。あっけなく夢が叶った。もうこの溪に思い残すことはない。かくして半日だけの溪の旅は終りを告げた。あとの1日半は美味しいビ-ルの時間を楽しもう。恋いこがれていたネイティブを惜別の想いで元の流れにリリ-スした。『さようなら。ありがとね』
逞しい溪魚を育む遠山の溪のチカラを見せつけられた旅となりました。
帰り道にもう一度『日本のチロル』の全景を眺めながら今日の釣りを振り返りました。あの遙か谷底に遠山の流れがありました。ついさっきまで、あの谷底にいたんだなあ。
奥深い溪と、おじいちゃんおばあちゃんに感謝しながら遠山を後にしました。
そして、旅の締めくくりは駒ヶ根『南信州ビ-ル工房』
地ビ-ル4種類と馬刺し。ワンパタ-ンと言われようがいいのです。旨いんですから。今日は山葡萄の樽仕込みワインも味わいました。これを口に含んだ瞬間、生まれ育ったふる里のおじちゃんたちが造った山葡萄の密造酒の香りが蘇りました。あのおじちゃんたちも殆どが既に黄泉の国の人となってしまっているのです。
満足したあとは『こまくさの湯』
ここで偶然にもヨ-デリストの小山義和さんのミニライブに出逢えたのです。
日本のチロルを訪ねて、その旅の終りに本物のヨ-デルを聴くことができるなんて。なんて幸運、なんてドラマチックな旅の終りでしょうか?またまた地ビ-ルの爽やかなのどごしを味わいながら1時間のライブに酔いしれたのでした。
太田切川の流れを聞きながらテラスでビ-ル。
冷や奴ともつ煮込みとヨ-デル、ちょっとミスマッチ?
太田切からの木曽駒が岳、宝剣岳の勇姿。またいつの日か、あの山を踏みしめたいなあ。
遠山の旅、夢のような旅でした。
夢が叶えられたことに心から感謝したいと思います。ありがとね。
そして最後までご覧頂きましてありがとうございました。
南アルプスの深南部、日本のチロルという地名にも憧れていました。
大アマゴが棲む遠山川が流れ、幾つもの険しい支流には大岩魚が棲むという。
おまけに南信州は山肉といわれる鹿や熊や兎を扱う肉屋も軒を連ねるという。
お蕎麦の産地でもある。これだけ条件が揃えばもう私にとってはサンクチュアリのような世界であるのです。
平日の夜明け前には中央高速へ。今日は運転できなくなりそうなのでZARDはやめて吉田拓郎です。拓郎を聴くと平日に旅することへの後ろめたさが不思議と薄らいでくるのです。
♪出会いや別れに慣れてはきたけれど 一人の重さが誰にも伝わらず
どこかへ旅立てば振り返りはしない それでもこの町に心をしずめたい
そうだ 元気ですよと 答えたい♪
トンネルは異次元の世界への入り口。
ここを抜ければ憧れの遠山郷、ワクワクしてきます。
トンネルを抜けると、遠山川の大支流『上村川』がお出迎え。大アマゴの臭いムンムンですなあ。
私はと言うと、この溪では一度もロッドを振ることはありませんでした。岩魚の溪でロッドを振ったあと、そして集落を巡っておじいちゃんやおばあちゃんと立ち話をしたあと、ここでのんびり鹿刺しと冷え冷えのビ-ルで至福の時を過ごしたということにしておきましょう。
このためにこそ私はこの地を訪ねたのです。たっぷりと味わいましたよ。滞在した2日の間は昼も夜も食べ続け1200グラムの鹿刺しと馬刺しが胃袋を満たしてくれました。とりわけ鹿刺しは地元の猟師さんが冬場に捕獲したもので、とろっとした舌触りと甘み、それはそれは絶品でありました。
そして河原で呑むビ-ル、五臓六腑に染み渡るのでございます。プッファァ~!
遠山郷、とりわけ『下栗の里』は急斜面にへばりつくように家々が点在する集落で『日本のチロル』と呼ばれています。
山風がことのほか強いのでしょうか。どの家の屋根にも大きな石が置かれていました。
急斜面の小さな畑で、足を踏ん張りながらおばあちゃんが野良仕事をしています。
『おばあちゃん、大変ですねえ』『ほんなこたぁねえだよ、おじいさんと食べる分だけ作ってるだけだからなぁ。年をとるとこれが楽しみでよう』『ここは風が強いんですか』『あぁ強いだわ、雨が降りゃあ崖もくどれるしなあ。おにいさんはどこから来たでぇ』『東京から釣りに来ました』『まぁよぅ、ご苦労さんですよう』ここにはまだ日本の原風景がそのまま残されているような懐かしさがありました。
遠山郷には蕎麦屋さんもたくさんありました。ここは街道沿いの『むらの茶屋』
懐かしい囲炉裏がありました。
ここの蕎麦は集落のおばちゃんたちが作っています。今でこそお蕎麦は美味しいともてはやされていますが、昔はやせた畑でしか作れない貧しさの象徴のようなものだったと、おばちゃんが話してくれました。でも、やっぱり旨いよ、おばちゃん。
遠山郷での二日間、思えば鹿刺しとお蕎麦しか食べませんでした。この食生活、実は私の理想とするものなんですねえ。釣りはたったの半日だけって何しに来たん?
そうそう、釣りの話もしましょうかね。
先ずは民宿『ひなた』に立ち寄って釣り券を手に入れる。人の良さそうなおばちゃんで『今日は泊まり客はいたんですか』『いやぁいねえよ。今は茶摘みで忙しいもんだで客はとらねえだ』『車は奥まで行けるかなあ』『だいじょぶだら、こないだくどれたけんども役場がなおしてくれたでね』。よし、源流帯までいけそうだ。
奥に向かう途中で仲良く散歩するおじいちゃんとおばあちゃんに会いました。『こんにちは~』『旅の人かえ~』『そうなんですよ~、奥の支流で釣ろうと思って』『釣りかえ~。うちのおじいさんは、このあたりじゃあ釣り名人だっただよう』。
心なしかおじいちゃんの顔が自慢気にほほえんだ。『おじいちゃんが一番好きだった沢はどこですか~』『そうだなぁ、諸河内だなあ。あすこは堰堤がねえし一番近いし、険しいけんどでけえ岩魚を釣ったもんだ』『じゃあ諸河内に入ってみます、ありがとうございました』『気をつけてな~』
遠山川本流の大アマゴは餌釣り師が狙います。私は岩魚、それもネイティブ岩魚に逢いたくて上流の支流へと足を踏み入れました。大自然が色濃く残る溪は、一人でいると恐怖を感じるほどの深い森の中にありました。
現地への途中には野生の猿が出没します。
カメラを向けると、こやつ、上から大きな石をころげ落としてきたんですよ。頭が良いと言うか憎たらしいと言うか、マジで切れそうになりましたねえ。『こりゃエテ候、人間をなめたらいかんぜよ!』『なんじゃと、野生をなめたらいかんぜよ!』。いやはや野猿の方が貫禄ありますな。
そして、子鹿とも遭遇です。よ~く見てくださいね。右端の杉の木の左側、ちょこんと顔を出しているのが見えませんか。可愛いでしょ、5分ほど見つめあってしまいました。さっきの野猿とは大違いです。こんな可愛い子を見ちゃったら鹿刺しなんて食べられませんよねえ、たらふく食べちゃったけどね。こんな野生動物が当たり前のように出没する自然の中にしかネイティブイ岩魚はもう残っていないのかもしれませんね。
午前7時、本流と『北又沢』の出会い。すでに浜松ナンバ-と足立ナンバ-の車が。あぁ人がいてくれて良かったぁ。ここでインスタントラ-メン2個で腹ごしらえして、ちょっとだけロッドを振ることにする。
北又沢。沢なんて名ばかりの水量豊富な澄んだ流れにため息が出てしまう。ここはアマゴの溪だが、堰堤を越えて林道を6キロ登ると岩魚の魚影の濃い源流帯が控えている。いつか釣友と溪泊しながらやってみたいなあ。アマゴには出逢えず奥へ向かった。
悪路を20分、遙か高みから流れ落ちる諸河内沢の出会いに着いた。まさに岩魚の溪である。藤の花が咲く。この季節がフライの盛期だと言われる。ネイティブに出逢えたらいいな。
ネイティブに出会う旅がここから始まる。溪の女神様、どうか私にほほえんで下さいね。
そして第一投目に飛び出したのがチビイワナくん。ちっちゃいけど見事な尾鰭だ。遠山のイワナは大和に近いといわれるがちょっとちがう。でも嬉しいなあ。
良いポイントが続きます。一投ごとに岩魚が飛び出すような気がして緊張してしまう。
落差がきつくてポイントが見つからない。こんな急峻な流れを岩魚はホントに遡行するのだろうか?
また好ポイント、でも出ない、、、でない、、、でないよう。
岩をよじ登っていると白い花、心なごむ。岩にどっかとへたり込んでマイルドセブンに火をつける。冷たい水が美味しい。もう釣れなくてもいいや。今回は鹿刺しとお蕎麦がメインだからな。心の中を言い訳が巡り始めた。
さあ、まだ先は長いぞ。気を取り直して次のポイントへ遡行する。いかにもと言うポイントが現れる。でも流れから外れたテラスのようなポイント、いかに岩魚であろうがあんなところには登れないだろうに。でも一応フライをプレゼンテ-ション、、、、、。ゆらゆら~っと、なにやら恐ろしくでっかい影が浮上して、、、。
14番のテレストリアルを吸い込んだ。すかさず合わせる。しっかりフッキングした。『きたきた~岩魚だ~、でっけ~。なんだこりゃあ。すっげ~』。一呼吸おいて岩魚は左上流へジャンプ、、、失敗、、、落差のキツイ下流へ転げ落ちて行く。やっべ~、ティペットが切れるかと思ったべさ~。かくして15分の格闘の末にランディングネツトの中へ。頭のばかでかいギョロ目の猛者は、これでも尺を越える素晴らしい面構えをしていた。『ついにネイティブの尺に出逢えたぞ~』。叫びたい気持ちをやっとの事でおさえた。
やっぱりいるんだよなあ、すごい沢だよなあ。興奮冷めやらぬままネットの中の岩魚に見とれていると、ふと山わさびが目に入った。おう、これはグットタイミング。『だっ、旦那、わっ、ワサビなんか摘んでどうすんの?』『決まってるじゃん、これで刺身喰ったら旨いんだぜ』『まっ、まさかオイラを喰おうってんじゃねえでしょうね』『もちろん喰うんだよ、刺身でな~』『やっ、やめた方がいいっすよ。オイラきのうヤモリくったしぃ、蛭もくったしぃ、毒虫だって食ったんだかんね。もしオイラを喰ったら旦那も死んじゃうんだかんね。知らないんだかんね』もちろんリリ-スしましたとさ。
こうなったらもう一匹出会いたい。さらに急峻になる溪を遡る。そして二股、ここから流れは少し細くなる。が、ここからが本命だとさっきのおじいちゃんから教えてもらった。
水量の少し多めの左の溪を遡行することにする。このながれも好ポイントが随所に現れる。15分ほど遡行したであろうか、、、こんな、、、めくるめく出逢いがあろうなんて、、、期待はしていたものの、、、叶うなんて思ってもみなかった、、、溪の女神はいたんだ、、、ほほえんでくれたんだ、、、そしてネイティブが、、、尺岩魚が、、、、いてくれたんだよ。
とても優しい顔つきの雌岩魚だろうか。しかし、急峻な流れに鍛えられた胸ビレも尾ビレも逞しくて見事だ。この子に逢いたくてここまでやってきたんだ。あっけなく夢が叶った。もうこの溪に思い残すことはない。かくして半日だけの溪の旅は終りを告げた。あとの1日半は美味しいビ-ルの時間を楽しもう。恋いこがれていたネイティブを惜別の想いで元の流れにリリ-スした。『さようなら。ありがとね』
逞しい溪魚を育む遠山の溪のチカラを見せつけられた旅となりました。
帰り道にもう一度『日本のチロル』の全景を眺めながら今日の釣りを振り返りました。あの遙か谷底に遠山の流れがありました。ついさっきまで、あの谷底にいたんだなあ。
奥深い溪と、おじいちゃんおばあちゃんに感謝しながら遠山を後にしました。
そして、旅の締めくくりは駒ヶ根『南信州ビ-ル工房』
地ビ-ル4種類と馬刺し。ワンパタ-ンと言われようがいいのです。旨いんですから。今日は山葡萄の樽仕込みワインも味わいました。これを口に含んだ瞬間、生まれ育ったふる里のおじちゃんたちが造った山葡萄の密造酒の香りが蘇りました。あのおじちゃんたちも殆どが既に黄泉の国の人となってしまっているのです。
満足したあとは『こまくさの湯』
ここで偶然にもヨ-デリストの小山義和さんのミニライブに出逢えたのです。
日本のチロルを訪ねて、その旅の終りに本物のヨ-デルを聴くことができるなんて。なんて幸運、なんてドラマチックな旅の終りでしょうか?またまた地ビ-ルの爽やかなのどごしを味わいながら1時間のライブに酔いしれたのでした。
太田切川の流れを聞きながらテラスでビ-ル。
冷や奴ともつ煮込みとヨ-デル、ちょっとミスマッチ?
太田切からの木曽駒が岳、宝剣岳の勇姿。またいつの日か、あの山を踏みしめたいなあ。
遠山の旅、夢のような旅でした。
夢が叶えられたことに心から感謝したいと思います。ありがとね。
そして最後までご覧頂きましてありがとうございました。
『あぁ強いだわ、雨が降りゃあ崖もくどれるしなあ。おにいさんはどこから来たでぇ』『東京から釣りに来ました』『まぁよぅ、ご苦労さんですよう』
↑一瞬、ツッコミを入れたくなりました。。。(^^;
おにいさんは「渓住期」ということでしょうね。
大物のすむ渓、遠山の噂は以前から聞いてました。
一度行ってみたいと思ってました。
最近少し場荒れしてるともいわれてるようですが、写真で見るとまだまだ大丈夫そうですね。
聖岳の反対側の大井川の源流地帯には10数年前釣行したことがあるんですが、崩落と場荒れがひどくてガッカリしたことがあります。
遠山川水系には既に幾つものダム、堰堤が有るようですが、あらたに北又渡下流域に堰堤を3ヶ所も造る計画があるようです。
せっかくの豊かな自然が一つずつ破壊されてゆくのは本当に残念でたまりません。
欧米では逆に既存のダムを壊して自然本来の姿に戻す計画が実行され始めてるというのにね。
わが日本は・・・・・???
時々は旅も良いですよ。
♪あなたの人生が いくつもの旅を経て
帰る日くれば 笑って迎えたい
私も今また 船出の時です
言葉を選んで 渡すより
そうだ 元気ですよと 答えよう♪(拓郎)
各地の溪を釣られてる、さすがです。
遠山の支流も堰堤が築かれているものが多いようですが、また堰堤を築くのですか?
ホントにやめて欲しいですね。
地元の方の話によれば、北又沢の源流帯と、本流の源流帯まで入れば結構まだネイティブの魚影が濃いそうです。
hanさんなら、いずれ入るんでしょうね、お店休んでまで、、、。
しかし尺岩魚初めてなんですか?。
郡上ではカゲロウがいっぱい飛びだして、くもの巣もできてちょっとやりにくいですが、フライやテンカラが良さそうです。
恥ずかしながらネイティブの尺イワナは初めてなんですよ。(多分ネイティブだと思うのですが)
tooさんは郡上に近くて幸せですね。
大アマゴや大イワナがいるのでしょうね。
息子さんとの釣りバトルのレポ、楽しみにしていますね~。
いやあ旅は良いですね。
南アルプスも中央アルプスも良いですよね。
masaさん、鮎が一段落したら旅に出ましょう。
旅は男のロマンですたいね。
その前に腰をしっかり治しましょうね。
腰は男の命ですたいね。
こんな出会いがあるからこそ、釣りはやめられなくなっちゃうんでしょうね♪
70歳を過ぎた高崎さんが自叙伝を書く際、『思い出の一匹』といった題名が目に浮かびます。
・・・この一匹が生涯最後の尺モノになろうとは・・・
こんな締め括りにならないことを祈っておりますね(^-^)
羨まし過ぎる僕でした。ああ、遠征したい!
ここの地ビールは旨いですよね!僕も行く度に飲んじゃいます。
あの有名なカツ丼は今回は食べなかったのですか?
酔っぱれー運転には注意いたしやしょう。
羨まし過ぎる僕でした。ああ、遠征したい!