錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

錦之助映画祭り2010日誌(11月16日)

2010-11-17 05:28:01 | 錦之助映画祭り
 初日の第一回目の上映開始に間に合うように新文芸坐へ行く。2010年錦之助映画祭りの皮切りは、10時45分からの『殿さま弥次喜多』。10時半ちょっと前に到着。私は新文芸坐の会員なので入場料は1000円。会員カードを見ると、75ポイント貯まっている。確か昨年の11月に更新したので、一年間に75日来場したということだ。私は主催者なので顔パスでも入れるが、ちゃんと入場料を払って中に入ることにしている。映画館の興行成績が少しでもプラスになるようにと思い、ずっと入場料を払いつづけている。
 入り口で館主の永田さんに「今日からよろしくお願いします」と挨拶。ロビーで錦之助映画ファンの会の会員(10名ほど)や知り合いと顔を合せる。みんなワクワクしている。私も同じ。
 お客さんの入りはまずまず。思っていたよりずっと多い。5割以上の入り。新文芸坐は定員266名なので、150名近くはいたと思う。美空ひばりファンと思われる方も何人かいらしていた。
 『殿さま弥次喜多』は、クレジットタイトルの後、まず家老の杉狂児が出てきて、その後すぐ、殿さま姿の晴れやかな錦之助が登場する。真正面からの錦ちゃんのバストショットで、もう、あっという間に「錦之助映画祭り」が始まったという実感が湧いてくる。「やっぱり錦之助はいいなー。惚れ惚れするよなー」と、声には出さず、心の中で独り言を言いながら、映画の中に引き込まれていく。沢島監督のこの映画、主義も思想もない、ただ会話の面白さとドタバタだけを楽しめばよいといった娯楽作品である。いかにも東映調の、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、家族みんなで楽しめる映画である。今観ると、受けねらいが失敗した箇所やカットつなぎが雑な部分があちこち目立つが、そこは勢いとスピードでカバー。ストーリーもあれよあれよと展開していくので、馬鹿馬鹿しいと思う暇もなく、見終わってしまう。私は、この映画を十数回は観ていると思うが、なぜか見飽きることがない。
 『殿さま弥次喜多』で、私が好きな場面を挙げると……、
疾走する荷車の上で錦ちゃんと賀津雄ちゃんが「舌噛んじゃった」と言う場面、焼き芋屋の屋台を丘チンと賀津雄ちゃんが引きながら語り合う夜道の場面、ひばりちゃんが錦ちゃんの殿さまの口真似をうっとりして聞き惚れる場面、そしてクライマックス、花の吉原で錦ちゃんと賀津雄ちゃんが二人助六に扮して出てくる場面、雪代敬子さんの花魁が登場する場面、錦ちゃんのスピード感あふれるチャンバラシーン、など。
 この映画、最後は錦ちゃんのにっこり笑った顔の大アップで終るが、これがファンにとってはたまらなく良い。なんとも言えない幸福な気持で胸がいっぱいになる。

 『殿さま弥次喜多』を見終り、館内を出て近くのそば屋で昼食をとる。朝食を抜いて来たので、空腹だったから。それから、銀行へ行って振込みを済ませ、古本屋で時間をつぶす。『股旅三人やくざ』が終る頃、映画館へ戻る。映画を観終わった漫画家のNさんと今日知り合ったKさんという女性とまた外へ出て、パルコの上のレストランで1時間ほど歓談。入江若葉さんから電話あり。『股旅三人やくざ』の開始時間にちょっと遅れるとのこと。内田有作さんから電話あり。映画館に来ているとのこと。急いで戻り、ロビーで、有作さんに会う。円尾さん、高橋さん、杉山さんを交え、しばらく話す。
 若葉さんがいらしたので、館内に案内。『股旅三人やくざ』はオムニバスで三話あるが、若葉さんは全部ご覧になるとのこと。有作さんと杉山さんと私は途中入場して、錦ちゃんが出演する第三話だけ観る。
 『股旅三人やくざ』は、同じ沢島監督作品であるが、『一心太助』や『殿さま弥次喜多』とは作り方が違い、芸術路線を狙っている。第一話と第二話はシリアスで、沢島演出の奔放な個性が発揮できないままに終っている。あまりにも正攻法すぎるのだ。主演男優に魅力がないこと、笠原和夫と中島貞夫の脚本がストーリーを頭でこねくりすぎていることが、第一話と第二話をつまらなくした要因だと思う。錦ちゃん主演の第三話だけが飛びぬけて面白い。脚本は野上龍雄。喜劇も抜群にうまい錦ちゃんの面目躍如たる作品である。すっぴんの錦ちゃんで、あの情けない顔の表情といい、ユーモラスな身振り手振りといい、カッコ悪さをあんなにうまく表現できる俳優は、錦ちゃんをおいて他にない。 
 第三話は、お客さんの笑い声が絶えず、愛嬌たっぷりな錦ちゃん、まさにエンターテナー錦之助を、十二分に堪能されたと思う。若葉さんの素朴な村娘も良かった。この二人が、武蔵とお通を演じた同じ俳優だとは、とうてい思えないのだ。
 映画が終り、若葉さんに感想を聞く。錦之助さんの名演には本当に感動したとのこと。『股旅三人やくざ』をスクリーンでご覧になるのは久しぶりだったそうで、とても新鮮で、今思うと、あんなに素晴らしい錦之助さんと共演していた自分があの頃はよく分かっていなかったとおっしゃっていた。若葉さんを池袋の駅の近くで見送ってから、有作さんと私の二人きりで、飲みに行く。11時過ぎの閉店まで飲んで話す。有楽町線の飯田橋まで有作さんと一緒に帰り、別れる。
 充実した一日だった。


  


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