錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

中村錦之助伝~「いろは小唄」

2013-05-02 12:52:04 | 【錦之助伝】~スター誕生
 錦之助は東京のコロンビアのスタジオで『唄ごよみ いろは若衆』の主題歌を二曲吹き込んだ。ところが、錦之助自身の歌声でレコードとして発売されたのは「いろは小唄」一曲であった。もう一曲の主題歌「投げ節弥之の唄」は、映画のストーリーに関わる重要な歌だったが、こちらは歌手を村岡十九夫(コロンビア専属の歌手)に替えて録音し直し、レコードでは「いろは小唄」のB面にした。なぜ歌手を替えたか。おそらく、錦之助がうまく歌えなかったからだと思う。錦之助自身が吹き込んだ歌を聞いて、この歌のほうはレコードにして出すことを断ったのかもしれない。
 映画の中で唄うシーンは、錦之助自身が唄った録音テープをプレイバックして、撮影したが、錦之助は「まったくイヤな思いでした」と語っている。公開された映画の中で、「投げ節弥之の唄」は村岡十九夫が吹き替えで唄ったと思われるが、この映画はもう見られないので、確かかどうか分からない。
 錦之助は、昭和30年2月に『越後獅子祭り やくざ若衆』の主題歌もレコードにして出しているが、錦之助が歌をレコードにしたのは、「いろは小唄」と「やくざ若衆」の二曲だけである。映画の中では、初の現代劇『海の若人』でも錦之助は主題歌を唄っているが、これはレコード化されていない。
 昭和29年頃のレコード事情に関して私は詳しくないが、この頃は78回転のSP盤から33.3回転のLP盤に切り替わっていった頃だったと思うが、まだSP盤が主流であった。45回転のシングル版、いわゆるドーナツ盤が発売され、普及するのは昭和30年代に入ってしばらく経ってからだと思う。
 ところで、錦之助の「いろは小唄」と村岡十九夫の「投げ櫛弥之の唄」は、SP盤でコロンビアから昭和29年8月に発売されている。1000枚ほどはリリースされたのではなかろうか。以前、「平凡」か「明星」で読んだ覚えがあるのだが、映画俳優が唄った歌謡曲のレコードとしては、上々の売り上げだったという。
 以前、オークションでそのSP盤が売りに出ていたことがあって、その時買おうかと思ったが、結局買わなかった。現在は、そのSP盤を復刻したCDが発売されている。「SP盤復刻による日本映画主題歌集(戦後編)」というシリーズで、VOL.12に「いろは小唄」も「投げ節弥之の唄」も収録されている。この中には、『満月狸ばやし』の主題歌である「狸十三夜」(コロムビア・ローズ)と「恋の風ぐるま」(高千穂ひづる)も入っているので、錦之助ファンにとっては必聴盤だと言えよう。またVOL.13には、「やくざ若衆」(中村錦之助)が入っている。



 私は、このCDを持っていないが、購入した知人が錦之助の唄った二曲だけカセットに録音してくれたので、それをたまに聴いている。錦之助は、力むこともなく、涼しげにさらりと唄っているが、声はかなり高い。錦之助の歌は、うまくもないが、下手でもないといった感じである。
 錦之助は、自分の歌をレコードにしたことを後悔し、レコードを全部、買い集めて回収したいと思ったというが、錦之助が恥ずかしく思うほどひどいものではない。
 錦之助は、歌が好きで、春日八郎の「お富さん」などをよく口ずさんでいたというが、プロ歌手でもないのに、軽はずみにレコードにしてしまったことを後悔したのだろう。
 『越後獅子祭り けんか若衆』でもう一度唄って、それ以後は主題歌はプロ歌手に任せ、自分で唄うことはなくなった。




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2 コメント

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錦ちゃん (のぶこ)
2017-01-28 17:32:50
レコード持っています❗
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おもかじ、取り舵、とも綱取りて……の歌詞が知りたい!覚えていません。 (那須悟)
2018-05-06 08:46:21
ご存じの方、教えてください。
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