この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『イニシェリン島の精霊』について考察してみる。

2023-01-30 22:15:11 | 新作映画
 稀にですが、この映画のことは誰よりも深く理解している、と思うことがあります。
 どの映画かというと『ガタカ』や『マーターズ』ですね。
 残念ながら『ガタカ』の考察を誰かに賛同してもらったことはないのですが、『マーターズ』の方は絶賛されたことがあります(こちら)。

 ただ、そういったことって本当に稀なんですよね。
 普段、自分は映画を観ても「さっぱりわからん!」と思うことの方が多いです。
 先日観た『ノベンバー』なんて、あらすじを読んでも、「そういった話だったっけ?」と思ったぐらいです。
 『イニシェリン島の精霊』もやっぱりよくわからなかったのですが、わからなさ加減は『ノベンバー』ほどではなかったので、自分なりに考察してみたいと思います。

 物語はイニシェリン島にすむ朴訥な男バードリックが長年の友人コルムから絶縁されることから始まります。
 コルムはバードリックにこう言います。
 お前は退屈な男だ。残りの人生を有意義に過ごすためにお前の無駄話に付き合うつもりはない。だからお前とは縁を切る、と。
 退屈な男だから縁を切るとは、いやはや、何とも傲慢な物言いですね。
 ただ、この言葉は嘘なんですよ。
 そもそもコルムはバードリックのことを嫌ってなどいません。
 そのことは、警官に殴られて怪我をしたバードリックの代わりに馬車を御したことや、バードリックのロバが死んだことを嘲笑した警官を彼に代わって殴ったことなどからわかります。
 それに残りの人生を有意義に過ごすことが目的であるなら、自分の指を切り落としたりはしないでしょう。
 逆に言えばコルムには自分の指を切り落としてでもバードリックと絶縁しなければならない理由があったと考えるべきです。
 自分の指を切り落としてでも長年の友人と絶縁しなければならない理由とは何でしょう?
 音楽や残りの人生を有意義に過ごすことではないことは明らかです。
 コルムは彼の人生において最も大切なものを守るために自分の指を切り落としたのです。
 彼の人生において最も大切なものとは何か?
 それは長年の友人であるバードリックです。
 バードリックの命を救うためであれば、コルムは自分の指を切り落とすことも厭わないでしょう。
 おそらくですが、コルムはマコーミック夫人から、バードリックを遠ざけなければ彼が死ぬ、というようなことを(はっきりとではないが)吹き込まれたのではないでしょうか。
 コルムはバードリックのことを救いたかったがために彼と絶縁したのです。
 
 今述べたことは推測に基づく仮説にすぎません。
 ヒントが少なすぎて『マーターズ』のときのような「この解釈で間違いない!」という自信はありませんが、ただ少なくと辻褄は合うと思います。
 この仮説が正しいのかどうかはわかりませんが、こういうふうに鑑賞した映画についてあれこれ考察してみるのも映画鑑賞の楽しみ方の一つではないでしょうか。
コメント
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