ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 真藤宗幸著 「司法官僚ー裁判所の権力者たち」 岩波新書

2010年08月02日 | 書評
最高裁判所事務総局の司法官僚 第9回

3)司法官僚の支配の実態 第2回

 戦後第1回目の判事任命の時期1956年ごろに事務総局は裁判官に対する人事評価をスタートした。この時期に合わせて事務総局が基礎を固めたと理解される。毎年事務総局は裁判官指名名簿には、約100人の判事補任官者に加えて、10年区切りの再任者をいれて総計300名ほどの名簿を作る。一方裁判官の移動転勤は判事補が3年毎、それ以降は4年または5年での移動とされている。この移動には報酬の号棒引き上げ(昇給)が伴う。移動計画は本人の希望を入れて作られ、本人の同意を必要とする。1998年まで人事評価は「考課調査表」に上級者が記入する仕組みであるが、当たり障りのないことが記入されているのみで、事務総局も信頼を置いていなかったようだ。どうも情報は高裁長官など別のルートを参照していた。2000年度司法制度改革審議会の意見書を受けて最高裁は2004年「裁判官の人事評価に関する規則」を定めた。自己評価書の提出を受け面接を行い、長官や所長を評価者として新たな人事評価をおこなうことになったが、自由記載の評価書もまた当たり障りのないことしか記入されておらず「透明性・客観性のある人物評価」とは到底いえない代物であるそうだ。人事評価とは民間会社でも同じようなシステムでやっているが、昇給やボーナス査定に参考として一瞥されるだけのもので、結局は成功報酬的な側面が強い。裁判所の人事は成績評価が不明なので余計に人事評価は客観性を欠くのは宿命であろうか。

 2003年最高裁は、司法制度改革審議会一般規則制定諮問委員会の答申を受けて「下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則」をつくった。最高裁の密室作業にルールを導入せよというものである。指名諮問委員会には中央委員会と地域委員会の2本立てにして中央作業部会を中央委員会の補佐に当たるということである。作業部会はリストから重点審議者をきめ審議する。最高裁は指名候補者(任官希望者)と経歴書を白紙で送る(コメントをつけない)と、法曹と非法曹委員の中央委員会メンバーが適任かどうかを決定する。最高裁名簿と異なる場合は本人に理由を開示する。さてどこまで中央・地域委員会が実質審議が出来るかどうかにかかっている。
(つづく)


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