ブログ 「ごまめの歯軋り」

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美術散歩 朽木ゆり子著 「フェルメール全点踏破の旅」 集英社新書ビジュアル版

2008年09月01日 | 書評
17世紀オランダの風俗画家フェルメールの全作品 第33回
フェルメール絵画30: 「窓辺で水差しを持つ女」  米国 ニューヨーク メトロポリタン美術館

 ニューヨーク メトロポリタン美術館にはフェリメールの絵が5枚ある。いずれも寄贈されたものである。フェルメールは死後200年間忘れられた存在であったのだが、19世紀末フランスの美術評論家トレ・ビュルガーによって再発見され注目を浴びるようになった。アメリカは20世紀に入って、世界の産業・経済の中心として膨大な富を集積し。その財力で美術品を買いあさった。現在フェルメールの絵の1/3はアメリカにある。ヘンリー・マーカンドという銀行家は「窓辺で水差しを持つ女」ほか3枚のフェルメールの絵を買い、全点をメトロポリタン美術館に寄贈した。 「窓辺で水差しを持つ女」の絵は室内に一人の女性が立っている姿を描いているフェルメール定番の構図である。左のステンドグラス風窓から光が差し込み、室内は全般に比較的明るい。オランダの風俗画では身繕いの構図は女性の清さを象徴するための構図とみなされていた。女は化粧か手を洗うための水差しに左手をかけ、右手を窓を開けるようにかけている。水を棄てるためか、これから窓を開けて化粧するためかよくわからない。行為の順序だては別にして、フェルメールが表現しようとしたのは光と色のバランスや調和にあった。紫色のドレスが高貴な女性のように美しく、白い肩掛けと頭巾が清潔そのものである。テーブルの赤いクロスが実に豪華な雰囲気を演出している。壁にかけたヨーロッパ地図は壁に同化しているの気にならない。美しいの一言ですべてが表現できる。特に見事な技法は水盤にテーブルクロスの緋色模様が映りこんでいるところで、にくいまでの腕である。女性が何を考えているかというような物語は想像に任せよう。


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