ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2011年12月14日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第72回

[197] 「風は・・・」 第3類
風は嵐。3月ごろの夕暮れにゆっくり吹き付ける雨風。以下四章は風に関する省察。

[198] 「八九月ばかりに雨にまじりて・・・」 第3類
八、九月ごろ雨に混じって吹く風は胸にくるのね。雨脚が横様に騒がしく吹くのに、ひと夏使った綿衣を生絹の単衣にかけて着るのって、この前までは単衣だけでも暑かったのに、いつの間に涼しくなったのだろうと思われて季節の変り目がおもしろい。暁に格子・妻戸を押し開けると、嵐がさっと顔にかかるのはたいへんおもしろい。

[199] 「九月つごもり十月のころ・・・」 第3類
九月末から十月のころ、空が曇って風が騒がしく吹きつけ、黄色の葉がはらはらと落ちてくるのは胸にジーンとくる。桜の葉や椋の葉は早く落ちるものよ。十月の木立の多い庭はたいへんにぎやかだ。

[200] 「野分のまたの日こそ・・・」 第3類
野分(台風)の次の日は胸に来ることばかり。立蔀や透垣などが乱れて前栽の植え込みもかわいそう。大木は倒れて枝も折れて、荻や女郎花のうえに横倒しになって臥せているのはあんまりだ。格子の壺に木の葉がわざとしたように吹き入れられているのは強い風の仕業だったのでしょうね。昨夜は寝られなかったので、遅く起きてきたらしい美しく清らかな女が小袿をかけて母屋からすこし顔をだしている、髪は吹き乱れてぼさぼさになっているのが本当に雰囲気がある。この景色を見て「むべ山風を」(古今集)と歌うのは歌心のある人だなと思われる。年頃にして17,8歳の若い女房らが生絹の単にブルーの宿直衣を着て、髪を長く丈までのばして袴のひだからちらちら髪が見え隠れして、根こそぎになっている草木を拾い集め植え直しをしているの。
(つづく)


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