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ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 管直人著 「原発ゼロの決意」  七つ森書館(2014年2月) 

2015年01月08日 | 書評
3・11原発事故対応にあたった元首相の決意 「原発は人類と共存できない」第1回

序(1)

 朝日新聞DIGITAL 2014年2月15日9時57分に、『管元首相 「根本的に間違い」 浜岡原発審査申請に』という見出しの記事があった。これは2月14日に朝日新聞の取材に応じた、管元首相の談話である。この管元首相の発言の本質は、「浜岡原発を停止させるという超法規的措置は、地震発生の可能性の高い場所に原発を設置したこと自体が誤りであったということである。浜岡原発が事故を起せば100万人単位の人の避難を必要とし、かつ新幹線、東名高速など日本の大動脈が大打撃を受け、国がつぶれるようなリスクは負いきれるものではない。高波対策をしたからと言って再稼働を申請するというのは根本的に間違っている。廃炉が最善の対策である。」ということである。原子力規制委員会が判断するのは安全技術的な面だけであって、原発事故対策や避難は政府の判断である。政府が止めた原発を安全技術面の審議だけで再稼働するのはお門違いである。安倍政権は福島原発事故から何も学ばず、原子力ムラの要求どおり再稼働に向けて動いている。という要旨を管元首相が話した。2014年2月9日の東京都知事選において、もし細川・小泉・管の3人の元首相連合で戦えば時局は大きく変わったかもしれない。都知事選と原発問題は別という、1極集中の旨さ(東京の地方収奪体制)を満喫する東京都民の身勝手さの壁は厚かった。そのような情勢の中で2月15日に本書「菅直人原発ゼロの決意」(カバーは上の図に示す)が出版された。本書の結論は実はこの2月15日の新聞記事の談話に表現されている。詳細はこれから述べるにしろ、キーワードは大体出尽くしている。日中戦争・朝鮮植民地問題に関する「河野談話」や「村山談話」を見直そうとする自民党保守本流が、この管元首相の「浜岡原発停止」という超法規措置をも見直そうとするであろう。2014年2月現在、54基全部停止している原発の再稼働問題は楽観できない情勢である。さらに安倍首相の出身地である山口県上関町原発建設計画も再燃している。上関町原発建設計画反対運動については、山秋 真著「原発をつくらせない人びとー祝島から未来へ」(岩波新書 2012年12月)で紹介した。本書の冒頭に掲げられた言葉「人工的にプルトニウムなど放射性物質を出す(核分裂型)原発は、人間とは共存できないというのが福島原発事故の教訓である」ということが、管元首相という事故当時の最高責任者であった人の反省と教訓である。管直人著 「原発ゼロの決意」という書は菅氏が書き下ろした書ではない。講演会・トークイベント・国会事故調議事録の3つの章からなる。第1章「脱原発の決意」は、2013年11月29日の「現代を聞く会・3周年記念大会」のメディア関係者を集めた講演会の記録である。第2章「3・11の首相として語ることが、私の天命」は、2012年11月10日新宿で行われた菅直人・中川右介・平野悠三氏の3人によるトークイベントの記録である。このイベントは、菅直人著「東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと」(幻冬舎新書)刊行記念として企画された。第3章「日本の病根を照らし出す」は2012年5月28日に行われた国会事故調第16回委員会「参考人質疑」の議事録から起された。内容量からいうと第3章の国会事故調議事録が約半分を占めています。この部分を除けばとにかく読みやすくできた本です。

(つづく)


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