ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 橘木俊詔著 「日本の教育格差」 岩波新書

2011年08月10日 | 書評
教育格差を経済的視点からみると 第6回

2)家庭環境の影響力(1)

 学歴を決定する要因として、本人が生まれ育った家庭環境に影響力に比重が高まっている。大学の授業料は本人負担が原則であるので、家計所得の大きさが子供の大学進学率に大きな影響を及ぼすことは容易に推測される。両親の年収と、高校卒業後の大学進学率、専門学校進学率、浪人、就職率の関係を調査した東大大学院の結果では、年収200万円では各々、35%、25%、5%、35%であるが、年収600万円では50%、20%、6%、20%で、年収1000万円では65%、16%、8%、11%で、年収1200万円では75%、10%、12%、5%である。総じて言えば、年収が多いと大学進学率は増大し、専門学校進学率、就職率は低下する傾向が明白であった。年収に比例して大学進学率は35%から75%へ増大し、就職率は35%から5%に低下した。貧しい家庭の子弟は大学進学と就職が相半ばしていたが、高額所得家庭では圧倒的に大学進学率が高い。社会移動が閉鎖的であると、親と子供の職業が同じになり、社会異動が開放的であるとは親とこの職業選択が異なることである。日本が格差閉鎖社会に入ったのではないかという主張がなされる。親の所得が子供の学力形成に影響し、教育水準の決定(教育格差の固定化)につながる恐れがあるというのである。文部省の調査によると、小学校6年の学力試験の結果を親の年収で整理すると、国語、算数とも正解率が見事に親の年収と比例関係が見られた。あまりに見事なので帰って疑いたくなるほどである。年収700万円が丁度正解率の平均を示す。ある年収以上では正解率はばらけるのではないか(後は子供の能力次第)と思い勝ちだが、とんでもないどこまでも年収と正解率は比例して向上している。こんな統計データがどうして取れるの不思議だ。学力テストの答案用紙に親の年収を記入するのか、親の源泉徴収書を貼り付けるのか、文部省の役人が後で国税局へ行って受験子弟の親の年収を徹底的に調べたのか、どうして調べたのか興味津々である。それはさておき、親には「学歴下降回避願望説」や「名門度上昇志向説」や「インセンティブ・デバイド説」があって、子供だけには自分よりよい教育と学歴を与えたいという願望があり、無理をしてでも教育熱心になる心理があるはずだ。ところが現実は親の収入に見事に比例して子供の学力が決定されている。
(つづく)


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