ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月26日 | 書評
地下構造組成探索計画(IBM1-5) 

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第9回

3) プロジェクトIBM-海で生まれる大陸(その3)

こうした結果から筆者らは地殻の進化モデルを次の4段階論で構成した。上図を参考にしながらモデルを説明する。
①島弧玄武岩質マグマの生成と海洋地殻の変質: プレートの沈み込みによってマントルで発生した玄武岩質マグマが固結し、既存の海洋地殻を置き換えながら玄武岩質初期島弧地殻を作り出す。
②玄武岩質マグマの底付と貫入: マントルで発生したマグマが、島弧地殻直下まで上昇し、地殻の底から地殻内へ貫入する。
③島弧地殻の融解と流紋岩質マグマと融解残渣の形成: 弧のマグマはマントルヘッジにおいて、地殻物質のソリダスより高温(1300度)であるため、玄武岩質地殻は部分溶解し、二酸化ケイ素が75%の流紋岩質マグマと約47%の融解残渣に分離する。
④流紋岩質マグマと玄武岩質マグマの混合による安山岩質中部地殻の形成: この流紋岩マグマとマントルから供給される玄武質マグマが混合・固結して代表的な大陸地殻(二酸化ケイ素約60%、深成岩の名は閃緑岩)が作られる。
 このモデルで重要なことは、玄武岩質初期地殻が部分融解して安山岩質の中部地殻を作る過程で、多量の融解残渣が発生することである。生み出された融解残渣は地殻の中に納まっているのではなく、ホモ面を落ちて最上部マントル層に吸収されるのである。IBM弧の地殻構成組成の分析によって、マントルで作られた玄武岩質マグマの固結や再融解とマグマの混合によって、IBM弧では安山岩質の地殻が成長することが分かった。ホモ面は一般に玄武岩質の地殻とカンラン岩質のマントルの境界をなすリジッドな境界である。しかし融解残渣はリークする性質がある。島弧地殻全体は次第に二酸化ケイ素量が増えて、大陸地殻へ進化するのである。この段階では二酸化ケイ素量が少ない溶融残渣が島弧地殻の底に大量に付着している。この層はP波伝播速度の低い層で、まだ大陸地殻とは言えない。この層が剥落して(デラミネーション)、マントルに吸収されなければならない。島弧がさらに大陸を作るには、大陸地殻との合体が必要である。図-1に見るようにIBM弧を乗せたフィリッピン海プレートは、南海トラフからユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。これによる歪みが近未来的に巨大地震の原因である。このプレート境界は伊豆半島の北の陸域にぶつかっている。IBM弧が四国海盆に比べて軽いため「本州伊豆衝突帯」で滑り込めずに衝突している。この様子を図―11に示した。衝突帯にある丹沢山地マグマは500年前に作られ、IBM弧は丹沢岩帯に接着されたのである。

(つづく)


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