ブログ 「ごまめの歯軋り」

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野田又夫著 「デカルト」 岩波新書1996年

2019年09月29日 | 書評
渡良瀬遊水地

近世合理主義哲学・科学思想の祖デカルトの「方法論序説」入門書  第2回

第2講) 「方法序説」について

この本の趣旨は1637年に公刊された『方法序説」の講座であるから、出発点として『方法序説』(理性をよく導き、もろもろの学問において真理を求めるための方法についての序説)を見てゆこう。これより先1633年頃デカルトは「世界論」という自然論を書きましたが、ちょうどそのころイタリアのガリレイが「天文学対話」という著書のためにローマ法王庁の異端裁判を受け有罪とされた事件において、ガリレオはコペルニクスの地動説を支持したことに法王庁の忌避を受けたのである。「イエス会」というジェズイット教団の学校で教育を受けたデカルトは教団のやり方を熟知していたデカルトは恐怖し、「世界論」という書物は公には発行しなかった。そこでデカルトはコペルニクスの地動説には直接触れずに自分の自然科学研究である三試論「屈折光学」、「気象学」、「幾何学」の三分野の書物の序論として『方法序説』を著わした。当時学術書はラテン語で書くのが常識であったところ、この書は明晰なフランス語で書かれ、以降優れたフランス学術書・文学書の範となった。三試論よりもこの『方法序説』が単独で刊行される場合もあった。

(つづく)


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