ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 大澤真幸著 「夢よりも深い覚醒へー3.11後の哲学」  岩波新書

2012年11月28日 | 書評
倫理の破壊をもたらした大惨事の後に、原発への根源的な問い 第1回

序(1)
 2011年3月11日の東日本大震災と福島第1原発事故発生の1周年を契機に、本書は2012年3月6日に岩波新書として発刊された。3.11後の1年間に、関係する本を特に原発に関する本を多く読んだ。本書はちょっと異色の切り口である。行政や政治、経済や科学技術という取り扱い方ではなく、哲学的・形而上学的というか、宗教的な意味合いも含まれている。本書のあとがきに「われわれは、その超えた何か、それ以上のものを言葉にし、それに対応した事を要求すべきではないだろうか」と述べている。そして書名が「夢よりも深い覚醒」という詩的な表現をとっている。この題名を補足して表現すると「夢が暗示するよりも深いレベルで覚醒せよ」ということであろう。3.11の出来事は悪夢だと思う人もいるが、悪夢だとして喉元すぎれば何とかで希釈されるべきことではなく、その夢から現実へ逃避するのではなく、夢により深く内在するようにして覚醒しなければならない。3.11の意味・意義を深く知れということである。こういう考え方をする人は哲学者に違いないが、大澤真幸氏については私はよく知らないのでプロフィールを調べた。大澤 真幸(1958年10月15日 -生まれ、長野県松本市)は、日本の社会学者、専攻は数理社会学、理論社会学、比較社会学・社会システム論だという。東京大学文学部社会学科卒業後、1987年東京大学大学院社会学研究科博士課程卒業し同年4月~1990年までの間東京大学文学部助手を勤める。その後、千葉大学文学部講師・助教授、1997年京都大学人間・環境学研究科助教授となり2007年同研究科教授になった。ところが、2009年9月1日付で突然辞職した。理由は世間でいうところによるとセクハラらしい。その後思想家として文筆業で復活した。2007年『ナショナリズムの由来』で毎日出版文化賞受賞。個人誌『大澤真幸THINKING「O」』(左右社 、2010年3月より)を発行している。主な著書には、『資本主義のパラドックス――楕円幻想』(新曜社、 1991年)、『虚構の時代の果て――オウムと世界最終戦争』(ちくま新書、1996年)、『「不気味なもの」の政治学』(新書館、2000年)、『帝国的ナショナリズム――日本とアメリカの変容』(青土社、2004年)、『不可能性の時代』(岩波新書 、2008年)、『社会は絶えず夢を見ている』(朝日出版社、2011年)、『近代日本のナショナリズム』(講談社選書メチエ、2011年)などがある。ということで大澤真幸氏は社会学者であった。
(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿