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ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート プラトン著 岩田靖夫訳 「パイドン―魂の不死について」(岩波文庫)

2015年06月02日 | 書評
ソクラテスの最後の対話、永遠不滅のイデアを持つ魂は不死である 第4回

1) 序曲
ソクラテスの死後、プレイウス出身のピタゴラス派哲学者エケクラテスが、ソクラテスの臨終に立ち会ったパイドン(エリス出身のソクラテスの忠実な弟子で仲間、哲学者。ソクラテスの死後、故郷に帰り、エリス学派を創る。)が故郷エーリスへと帰る途中でプレイウスに滞在中)に、ソクラテスの最後の様子について尋ねるという設定で物語は始まる。プレイウス人はアテナイ(アテネ)に行かないのでソクラテス最後の様子を何も知らないから、エケクラテスがパイドンに根掘り葉掘り聞きだすのである。エケクラテスはまず、裁判の結果についてはプレイウス人にも伝わっていたが、その後しばらくしてから処刑が行われたのはなぜかと問いただすのであった。それにはアテナイの伝説が死刑の執行を停止したためであるという。昔クレタの王ミノスはアテナイを攻め講和の条件として、生贄の若者を9年毎にクレタ島に贈る事になった。アテネの使者テセウスが若者と共にクレタ島にわたり、若者と自分の命を救った。そのときアテナイの市民は神アポロンに、もし救うことができたら毎年デロス島の祭りに使節を派遣するという誓いを立てたのである。それで毎年デロス島の祭りに、船尾に花飾りをつけた使節の船を送り続けており、船がアテナイに帰るまでは国法の下で処刑してはいけないことになっている。裁判の前日に祭りの使節の船が出港したので、ソクラテスは裁判と処刑との間の長い時間を牢獄で過ごすことになったのである。その死刑執行猶予の間、ソクラテスの弟子たちは毎日牢獄に出かけ牢番に贈り物をして、ソクラテスとの最後の対話の時間を持った。エケクラテスとパイドンをナレーターとして、そのソクラテスと弟子たちとの対話の内容を語らしめるという一幕の舞台の設定がなされた。主役はソクラテスとケべス、シミアスの3人で、ほかにはクリトンとその息子、アポロドロス、クサンティッペ、ヘルモゲネス、エピゲネス、アイスキネス、アンティステネス、クテシッポス、メクネセノス、ハイドンデス、エウタレイデス、テルプシオンの名前が列記されている。本書の主題はケべス、シミアスがソクラテスに「霊魂があるかどうか」を問いただすことであるので、3人以外の発言はほとんどない。牢獄において毒杯を飲むソクラテスの様子は上の画に見るごとくであったろう。

(つづく)


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