ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文藝散歩 坪内稔典著 「柿への旅」 岩波書店「図書」

2011年03月29日 | 書評
2010年2月号 「柿への旅」⑩ 「年取りの柿」

 坪内氏が琵琶湖の奥にある菅浦という村に行ったときの話である。菅浦で干し柿を見たとき、「ああ、もう正月がちかい」と思ったそうだ。坪内氏の実家(愛媛県)では正月の朝、三方を頂き、干し柿をたべて年を取る習慣があった。干し柿は絶対食べなければならなかった、食べないと年を取れないのだという。その干し柿の最高級品が岐阜県美濃加茂市産の「堂上蜂屋柿」である。将軍家にも献上された高級品で茶会の菓子として珍重された。食べ方はまず半分に割り、さらに2つに裂くことで4分して食べる。絶対にかぶりついてはいけない。そこで買った桐箱入りの「堂上蜂屋柿」を、見つけた孫にぱくりと2つも食われた悔しさを柿内氏は恨めしそうに書いている。私の記憶では正月の鏡餅の上には干し柿を載せるものだと思っていたが、いつのまにやら蜜柑に代わってしまった。さて皆様はどちらですか。
(つづく)


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