ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 広井良典著 「ポスト資本主義ー科学・人間・社会の未来」 (岩波新書 2015年6月)

2016年09月06日 | 書評
拡大・成長を追い求める超資本主義の限界と、定常化・持続可能な福祉社会の構想 第1回

序(その1)

 本書の題名「ポスト資本主義」をみて、てっきり経済学者が書いた本かなと思って購入し読んだ。本書末尾にある著者紹介をみて、そして序章を読んで、この書は文明論・人文科学・科学史そして広くは哲学の範疇にあることがすぐにわかりました。著者広井良典氏のプロフィールを見てみよう。1961年岡山に生まれ、1984年東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)。1986年同大学総合文化研究科修士課程修了、厚生省に入省。1996年千葉大学法経学部助教授となり、2001年より1年間マサチュセッツ工科大学(MIT)に留学し、2003年千葉大学教授となる。専攻は公共政策、科学哲学。社会保障、医療、環境、地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。環境・福祉・経済を統合した「定常型社会=持続可能な福祉社会」を提唱。  『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で第9回大佛次郎論壇賞受賞。この他『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)で第40回エコノミスト賞、2008年第34回山崎賞受賞。厚生省・総務省・国土交通省・文科省など政府機関や地方自治体の各種の委員を歴任し、幅広い政策を提言する。主な著書には、『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)、『定常型社会―新しい「豊かさ」の構想』(岩波新書、2001年)、『死生観を問いなおす』(ちくま新書、2001年)、『生命の政治学―福祉国家・エコロジー・生命倫理』(岩波書店、2003年)、『持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想』(ちくま新書、2006年)、『グローバル定常型社会 地球社会の理論のために』(岩波書店 2009年)、『コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来』(ちくま新書、2009年)、『人口減少社会という希望――コミュニティ経済の生成と地球倫理』(朝日新聞出版、2013年)などがある。ようするに政策科学という分野における論客という立場(御用学者、知的エリート)であろう。そこで広井氏が関わった御用学者としての審議会の一覧を示しておこう。これから大体の仕事のやり方が伺えて興味深い表である。(売れっ子芸者みたいにたくさんの座敷がかかっていますね、これで勉強する時間があるのですか?)
* 21世紀COE「持続可能な福祉社会に向けての公共研究」拠点リーダー(2004年 - 2009年)
* トヨタ財団地域社会プログラム委員(2004年 - 2008年)
* 国際協力機構 (JICA) 社会保障分野課題別支援委員会委員(2005年 - )
* 日本医療政策機構理事(2005年 - )
* 環境省・超長期ビジョン検討会委員(2006年 - 2007年)
* 横浜市経営諮問委員会委員(2006年 - )
* 国際協力機構 (JICA) 中国農村社会養老保険制度整備調査団アドバイザー(2006年 - 2009年)
* 文部科学省科学技術・学術審議会専門委員(脳科学委員会)(2007年 - )
* 朝日新聞・書評委員(2008年 - 2010年)、論壇委員会委員(2010年)
* 教育再生懇談会委員(2009年)
* 国土交通省・土地利用計画制度研究会委員(2009年 -10年)
* 内閣府・幸福度に関する研究会委員(2010年 -13年)
* 朝日新聞・ニッポン前へ委員会委員(2011年-13年)
* 東京都荒川区・自治総合研究所客員研究員(2011年 - )
* 横浜市・環境未来都市推進会議委員(2011年- )
* 内閣府・総合特区評価・調査検討会委員(2011年 - )
* 厚生労働省・統合医療のあり方に関する検討会委員(2012年 - 13年)
* 総務省・緑の分権改革の効果の評価手法に関する研究会委員(2012年-)

 次に私が本書のような観点で読んだ書物のリストを年代順に下に示す。
① 松谷明彦著 「人口減少社会の設計」(中公新書 2002年)
② 岩井克人著 「21世紀の資本主義」(ちくま学芸文庫 2006年)
③ スチュアート・カウフマン著 米沢芙実子訳 「自己組織化と進化」(ちくま学芸文庫 2008年)
④ 上野千鶴子・辻本清美著 「世代間連帯」(岩波新書 2009年)
⑤ 濱口桂一郎著 「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」 (岩波新書 2009年)
⑥ 白波瀬佐和子著 「生き方の不平等」(岩波新書 2010年)
⑦ 小野善康著 「成熟社会の経済学」(岩波新書 2012年)
⑧ 服部茂幸著 「新自由主義の帰結」(岩波新書 2013年)
⑨ 阿部彩著 「子どもの貧困Ⅱ」(岩波新書 2014年)
⑩ 水野和夫著 「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書 2014年)
⑪ 杉山伸也著 「グローバル経済史入門」(岩波新書 2014年)

(つづく)