地球上の生物の多様性を失うことは人類の生存の危機 第2回
生物多様性の一角が壊れると、どのような変異が現れるか、そしてその生物種が果たしてきた役割りの重要性は失って始めてわかるという類の話が多い。例えばインドのケオラデオ国立公園のベンガルハゲワシに異変が起こり、2003年に公園内でベンガルハゲワシの絶滅が確認された。ハゲワシは牛などの家畜の死体を食べていたが、動物用の医薬品ジクロフェナクによってハゲワシが内臓障害を起こして死ぬことがわかった。自然の清掃人であるハゲワシの数が減ると、野犬や鼠の数が増え、インドでは狂犬病が大量発生したそうだ。ただこの手の話は「風が吹いたら桶屋が儲かる」式の曖昧な因果関係の糸で構成されているので、真実かどうかはわからないことを一応頭の片隅においておく必要はある。最近都会の雀の数がめっきり減ったという話をNHKのテレビで放映していた。中国で1955年ごろ「四害追放運動」(雀、ネズミ、ハエ、蚊)があった。農作物に被害を与える雀は稲刈り時の嫌われ者であった。日本の童話「舌切り雀」もその一環の話であるが、1年間で11億羽以上も殺した結果、農産物の虫害に悩まされ全国的な大減収となったそうである。研究者の話では1羽のシジュウガラは1年間に12万匹の虫を食べるという。虫害を防ぐために農薬を散布する費用はハンパではない。「天使の分け前」を雀に与えるくらいの心のゆとりがないと、このような「1銭を儲けて、100銭を失う」事になりかねない。(どうですよくできた話でしょう) 2006年ごろカルフォニアのアーモンド農業がミツバチの大量死「蜂群崩壊症候群CCD」によって大打撃を被ったというニュースが有名になった。アメリカでは果実の受粉期にはミツバチの貸し出しというサービスがあるそうだ。アメリカではミツバチに依存する農作物の総生産額は160億ドル、ミツバチ以外の受粉生物による農業の恩恵は400-700億ドルといわれている。受粉による農作物の生産を通じて人類は年間20兆円の利益を上げている。
中南米ではランの種から発酵させて作るバニラを生産するために、ハリナシミツバチの存在が欠かせない。ところが欧州やマダガスカルではこのハチがいないため、すべて手作業で受粉させているそうだ。もし受粉生物は何らかの理由で死滅すると、その生物に受粉を頼っている植物も絶滅し、やがてその植物を食物とする動物も死に絶えるという局部的な生態系の「絶滅のドミノ倒し」が起きるのだ。人為的なミツバチによる受粉よりも、自然界の複数の天然ミツバチ群に受粉を任せた方が有効であると云う研究もある。なぜなら特定のミツバチ群が減少しても他のミツバチ群ががんばってくれるからだ。それには農薬を使わない有機農法を行なうことが基本である。それとハチ群の生態圏が違うと、花粉の遺伝的多様性が高まり、病虫害にも強くなるという1石2鳥という付録までつくそうだ。2002年スミソニアン熱帯研究所ではコーヒー畑で実験をして収量が50%増加した事を発表した。人間が栽培している農作物1500種のうち、約30-70%が動物の受粉に頼っているが、その受粉生物(昆虫が多い)が農薬など化学物質によって世界各国で減少していることが問題なのだ。
(つづく)
生物多様性の一角が壊れると、どのような変異が現れるか、そしてその生物種が果たしてきた役割りの重要性は失って始めてわかるという類の話が多い。例えばインドのケオラデオ国立公園のベンガルハゲワシに異変が起こり、2003年に公園内でベンガルハゲワシの絶滅が確認された。ハゲワシは牛などの家畜の死体を食べていたが、動物用の医薬品ジクロフェナクによってハゲワシが内臓障害を起こして死ぬことがわかった。自然の清掃人であるハゲワシの数が減ると、野犬や鼠の数が増え、インドでは狂犬病が大量発生したそうだ。ただこの手の話は「風が吹いたら桶屋が儲かる」式の曖昧な因果関係の糸で構成されているので、真実かどうかはわからないことを一応頭の片隅においておく必要はある。最近都会の雀の数がめっきり減ったという話をNHKのテレビで放映していた。中国で1955年ごろ「四害追放運動」(雀、ネズミ、ハエ、蚊)があった。農作物に被害を与える雀は稲刈り時の嫌われ者であった。日本の童話「舌切り雀」もその一環の話であるが、1年間で11億羽以上も殺した結果、農産物の虫害に悩まされ全国的な大減収となったそうである。研究者の話では1羽のシジュウガラは1年間に12万匹の虫を食べるという。虫害を防ぐために農薬を散布する費用はハンパではない。「天使の分け前」を雀に与えるくらいの心のゆとりがないと、このような「1銭を儲けて、100銭を失う」事になりかねない。(どうですよくできた話でしょう) 2006年ごろカルフォニアのアーモンド農業がミツバチの大量死「蜂群崩壊症候群CCD」によって大打撃を被ったというニュースが有名になった。アメリカでは果実の受粉期にはミツバチの貸し出しというサービスがあるそうだ。アメリカではミツバチに依存する農作物の総生産額は160億ドル、ミツバチ以外の受粉生物による農業の恩恵は400-700億ドルといわれている。受粉による農作物の生産を通じて人類は年間20兆円の利益を上げている。
中南米ではランの種から発酵させて作るバニラを生産するために、ハリナシミツバチの存在が欠かせない。ところが欧州やマダガスカルではこのハチがいないため、すべて手作業で受粉させているそうだ。もし受粉生物は何らかの理由で死滅すると、その生物に受粉を頼っている植物も絶滅し、やがてその植物を食物とする動物も死に絶えるという局部的な生態系の「絶滅のドミノ倒し」が起きるのだ。人為的なミツバチによる受粉よりも、自然界の複数の天然ミツバチ群に受粉を任せた方が有効であると云う研究もある。なぜなら特定のミツバチ群が減少しても他のミツバチ群ががんばってくれるからだ。それには農薬を使わない有機農法を行なうことが基本である。それとハチ群の生態圏が違うと、花粉の遺伝的多様性が高まり、病虫害にも強くなるという1石2鳥という付録までつくそうだ。2002年スミソニアン熱帯研究所ではコーヒー畑で実験をして収量が50%増加した事を発表した。人間が栽培している農作物1500種のうち、約30-70%が動物の受粉に頼っているが、その受粉生物(昆虫が多い)が農薬など化学物質によって世界各国で減少していることが問題なのだ。
(つづく)