地球上の生物の多様性を失うことは人類の生存の危機 第1回
2010年3月カタールのドーハで開かれたワシントン条約締結国会議において、クロマグロの取引禁止の可否が大きな議題となり、日本代表は防戦に成功したとはいえ、同じことが今後も議論されないことはないだろう。なぜなら世界の海からマグロが激減していることは事実なのだから、日本は持続的漁業の可能性を実地で示さなければ、クロマグロのみならず、南マグロも含めてマグロが絶滅種に指定され、漁獲が禁止されることは時間の問題である。これまでの倫理では人間が生存することが最優先であって、利益の対象となる生物が減るのは許され、また開発によって付随的に生物数が減少することは2の次に考えてよいという了解であったと思う。さて今ではこのような人間中心主義に基づく破壊的な考えは許されない。人類の持続可能的発展の考えが主流となってきた。グローバル地球環境問題において、地球温暖化防止と生物多様性は極めて似通った問題を含む。根っこが同じであるからだ。地球人口の無制限な爆発と近代化に必要な地球資源の無制限な開発が、地球自体の生存を危くするような状況であると認識されるようになったからだ。しかし開発途上国からすると、そのように考えること自体が先進国の資源独占とエゴと映り、各国の対策の足並みが一向に揃わない。本書は地球環境問題のなかで生物多様性問題だけを取り上げているが、ことが食資源にからむだけに途上国の反発と先進国のエゴが著しく対立して、地球温暖化対策以上に状況は深刻である。
著者のプロフィールを紹介する。著者の井田徹治氏は共同通信社の科学記者で、環境と開発の問題を長く取材し、気候変動枠組み条約締結国会議やワシントン条約締結国会議など海外での取材活動に基づいたレポートを多く書いている。主な著書には、「大気から警告ー迫り来る温暖化の脅威」(創芸出版)、「データで検証ー地球の資源ウソ・ホント」(講談社ブルーバックス)、「サバがトロより高くなる日」(講談社現代新書)、「カーボンリスクーCO2で地球のビジネスルールが変わる」(北星堂書店)、「ウナギ地球環境を語る魚」(岩波新書)などがある。
(つづく)
2010年3月カタールのドーハで開かれたワシントン条約締結国会議において、クロマグロの取引禁止の可否が大きな議題となり、日本代表は防戦に成功したとはいえ、同じことが今後も議論されないことはないだろう。なぜなら世界の海からマグロが激減していることは事実なのだから、日本は持続的漁業の可能性を実地で示さなければ、クロマグロのみならず、南マグロも含めてマグロが絶滅種に指定され、漁獲が禁止されることは時間の問題である。これまでの倫理では人間が生存することが最優先であって、利益の対象となる生物が減るのは許され、また開発によって付随的に生物数が減少することは2の次に考えてよいという了解であったと思う。さて今ではこのような人間中心主義に基づく破壊的な考えは許されない。人類の持続可能的発展の考えが主流となってきた。グローバル地球環境問題において、地球温暖化防止と生物多様性は極めて似通った問題を含む。根っこが同じであるからだ。地球人口の無制限な爆発と近代化に必要な地球資源の無制限な開発が、地球自体の生存を危くするような状況であると認識されるようになったからだ。しかし開発途上国からすると、そのように考えること自体が先進国の資源独占とエゴと映り、各国の対策の足並みが一向に揃わない。本書は地球環境問題のなかで生物多様性問題だけを取り上げているが、ことが食資源にからむだけに途上国の反発と先進国のエゴが著しく対立して、地球温暖化対策以上に状況は深刻である。
著者のプロフィールを紹介する。著者の井田徹治氏は共同通信社の科学記者で、環境と開発の問題を長く取材し、気候変動枠組み条約締結国会議やワシントン条約締結国会議など海外での取材活動に基づいたレポートを多く書いている。主な著書には、「大気から警告ー迫り来る温暖化の脅威」(創芸出版)、「データで検証ー地球の資源ウソ・ホント」(講談社ブルーバックス)、「サバがトロより高くなる日」(講談社現代新書)、「カーボンリスクーCO2で地球のビジネスルールが変わる」(北星堂書店)、「ウナギ地球環境を語る魚」(岩波新書)などがある。
(つづく)