ブログ 「ごまめの歯軋り」

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サブプライムローン 米金融機関の損失影響 あと半年は続く

2008年01月02日 | 時事問題
asahi.com 2008年01月02日06時38分
米金融機関の損失、さらに急増か サブプライム影響
 米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き急増で、米大手金融機関の損失計上が今年も続き、損失額はさらに膨れそうだ。今月に発表される昨年10~12月期決算では、最大手シティグループなど主要3社だけで新たに計約336億ドル(約3兆8000億円)の評価損が計上されるとの予測も浮上。日本などに持つ資産の売却や減配、人員削減が取りざたされている。
 金融大手ゴールドマン・サックスによると、10~12月期の評価損見通しはシティが187億ドルで、これまでの予測より7割増えた。メリルリンチは9割増の115億ドル、JPモルガン・チェースは2倍の34億ドルと見ている。サブプライム債権などをもとにした債務担保証券(CDO)関連の損失が膨らむためで、「危機局面が一服するまでに、あと2四半期はかかるだろう」という。

住宅融資が金融機関のドル箱

米国のサブプライムローン問題で話題になったが、住宅ローンを借り入れる人が返済してくれるリスクを考えて、金利は貸し倒れリスク分が上乗せされるので(消費者金融ほどではないが)高く設定されている。日本では10年ローンで4.1%、20年ローンで5%ぐらい。昔(1980年代)は土地価格が上昇していたので住宅ローンは借りるほうが得と云う感覚があったが、この20年以上土地価格は下がり続けている。住宅を持ちたいと云う事情と金があれば住宅を買うのはその人の価値観であるが、最も買ってはいけないのが新築マンションである。景気と云うものは如何に住宅を買わせ借金を背負わせるかによって決まるといって過言でない。国にとって、企業にとって一つの大きな集金システムになっているのです。私達は自分の意思で投資する感覚はなくとも、受動型の大きなリスク資産を背負っている。住宅ローン、生命保険、年金がそれです。これを「パッシブ型リスク資産」といい、信託投資や格式投資などは自分の意思で投資する「アクティブ型リスク資産」という。


読書ノート  五十嵐敬喜・小川明雄著 「都市再生を問う」  岩波新書

2008年01月02日 | 書評
建築無制限時代の到来 不良債権処理の切り札 第六回

規制緩和の嵐と政官財「鉄のトライアングル」(1)

こうして「都市再生緊急整備地域」では建築基準法などの規制を撤廃した「建築無制限特区」が誕生した。都市計画に関する法律には「都市三法」といって都市計画法、建築基準法、都市再開発法があり、中でも建築基準法が規制の中心であったが、同時に規制緩和の歴史でもあった。都市計画法では従来の住居地域では20メートル、その他の地域では31メートルという高さ制限に容積率を導入した。容積率は建築物の延べ床面積の敷地面積に対する割合である。日本で最初の容積率評によると第一種住居船地域では50-200%、第二種住居専用地域では100-300%、住居地域では200-400%、商業地域では400-1000%であった。ドイツでは一般住居地区では2階までで50%、商業地区では6階以上では200%である。

1969年制定の都市再開発法では駅前開発で高度利用地区制度を新設し容積率が緩和された。ところが現在の状況は大部分の都市再開発は都市再開発法によるのではなく、建築基準法によるものである。建築基準法による再開発が圧倒的に多く都市再開発法によるものは数%に過ぎない。建築基準法では1つの敷地に1つの建築物の場合は容積率の緩和が目指される。1つの大規模敷地に複数の建築物を建てるときは「総合設計制度」とかさまざまなメニューが追加されている。1982年11月に成立した中曽根内閣は、民活による都市再開発を主要政策の一つにした。「アーバンルネッサンス」と名づけた民活プロジェクトでは、国鉄用地再活用で国有地の売却による地価高騰はバブルを招いた。1986年の民活法、リゾート法、公拡法で作ったリゾート施設はいまや殆ど倒産し地方自治体の財政破綻の源になった。

建築基準法の容積率や規制緩和は「通達」で行えるのである。国会審議は不要で、官僚内閣制といわれるわけである。バブル崩壊後一時期、海部内閣や宮沢内閣では容積率を引き下げることも検討されたが、その動きも空しく、1994年の建築基準法の改正で「不算入」制度が導入された。マンションなどの共有部分は容積率から除外するのである。そして「地下室の不算入」では傾斜地の玄関より下の部分は容積率に算入しないというマジックが導入された。そして最後の手品は「空中権の移転」である。容積率に満たない隣接する建築物の空中の権利を買うのである。もっとインチキなのは離れた街の建築物の空中権も買える「特例容積率適用区域制度」が2000年に導入された。これで東京駅周辺は900%の容積率が1300%にまで拡大できるのである。なんでもありのご都合主義特例である。そして半官半民の「民間都市開発推進機構」は、開発事業への出資、社債買取、債務保証、無利子貸し付けなどの優遇措置をとり、事業者は失敗しても最後は税金で尻拭いをしてもらえるのである。まさに至れり尽くせりの企業優遇策ではないか。

文芸散歩 卜部兼好 「徒然草」 岩波文庫

2008年01月02日 | 書評
日本の随筆文学の最高峰 第四十六回(第216段から第220段)

第二百十六段 「最明寺入道、鶴岡の社参の次に、足利左馬入道の許へ・・・・」
執権北条時頼が鎌倉の重臣足利義氏の邸に寄られた時、義氏は饗応してもてなした。そのとき時頼はいつも贈ってもらう足利の染物が見たいと言うので、小袖に仕立てて後で届けたと言う話。これで兼好は何が言いたいのか複雑な気持ち。幕下の者に贈物を要求する時頼と言う構図では前段の話と矛盾する。

第二百十七段 「或大福長者の云はく、人は万をさしおいて・・・・」
この段は国富論とおなじ。人間の欲を満たすために財は必要だが、道理を守り財を浪費しない実業の精神を説いている。しかし兼好の最後の落ちが強引である。180度回転させればこの理は無欲の世界に通じるというが、ちょっと矛盾した話でこの段は分裂している。

第二百十八段 「狐は人に食いつくものなり。堀川殿にて、舎人が寝たる足を狐に食はる・・・・」
狐に食いつかれると云う話。鎌倉時代は狐が人をだますのではなく食うのですか。野犬のまちがいではないですか。本当に兼好さんは信じていたのか。

第二百十九段 「四条黄門命ぜられて云はく、竜秋は、道にとりては、やんごとなき者なり・・・・」
南朝の重臣藤原隆資が笛の名人竜秋の言葉「笛の五の穴だけが平均律で配置されているの少しはなして吹かなければ厭な音になる」に感じ入ったが、景茂は笛には息の吹き方に調性が込められているので、すべての穴も心して吹かないといけない。五の穴だけではないというらしい。道には道の深い世界があると云うことを知るべしという教訓か。

第二百二十段 「何事も、辺土は賎しく、かたくななれども、天王寺の舞楽のみ都に恥じず・・・・」
前段の続いて楽の調律の話。天王寺の舞楽が優れているのは、聖徳太子の頃の調律基準を守っているからいい音が出せるという。また鐘の音は黄鐘調で祇園精舎の諸行無常の音だと云うことは音楽理論音痴の私には全く分からない。音を平均律で割りふったから音の美しさが失われ、純調の音をよしとする人もいる。

自作漢詩 「年改」

2008年01月02日 | 漢詩・自由詩

三元淑気啓晨     三元淑気 晨扉を啓く

四時晴風春正     四時晴風 春正に帰る

磨墨今朝新雪鬢     墨を磨る今朝 新雪の鬢
 
升堂去歳旧征      堂に升る去歳 旧征衣

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(赤い字は韻:五微  七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 テデスコ 「ゴヤによる24のカプリチョス」作品195

2008年01月02日 | 音楽
テデスコ 「ゴヤによる24のカプリチョス」作品195 
ギター山下和一 1991 クラウンクラシック

ゴヤの晩年の絵画は人間の醜悪さ、エゴ、愚かさを抉り出す銅版画に特徴がある。CDカバーはゴヤの80枚のカプリチョス「気まぐれ」(1979年)のなかから選んだ24枚にテデスコが作曲したギター曲の一枚である。糸のないギターを爪弾く猿とそれに聞き入るロバ(つまり裸の王様)の構図である。