ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

捕鯨禁止を求める環境保護団体とオーストラリア政府の共同謀議の怪

2008年01月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年01月19日00時35分
活動家、別の捕獲船襲撃 引き渡し直後に
米国の環境保護団体・シー・シェパードの活動家2人が日本鯨類研究所の捕獲調査船、第2勇新丸に侵入し一時拘束された問題で、シー・シェパードの船が18日午前2時ごろ、南極海上で姉妹船の第3勇新丸に再び近づき、悪臭を放つ液体の入った瓶約10個を投げ込んでいたことがわかった。約3時間前に第2勇新丸が活動家2人の身柄を豪政府に引き渡したばかりだった。

オーストラリア政府の捕鯨禁止政策と日本の鯨捕獲調査の衝突  トラブルを誘起して日本の非道さを世界にアッピールすることが目的  日本は挑発に乗せられてはいけない 国際法廷への提訴が妥当
参考までにミナミマグロと国際裁判について記す。  
日本の海洋資源の持続的利用という基本的な考え方に対して、オーストラリア、ニュージランドは環境保護政策から漁業の禁止と資源保護に優先度を置いた。まだ資源はあるとする日本と資源は無いとする考えの溝は平行線をたどり、オーストラリア、ニュージランド政府は1998年、1999年に日本が強行した調査漁業の差し止めを要請して国連海洋法裁判所(ITLOS)へ提訴した。1999年8月27日には日本の調査漁獲禁止というITLOSの命令が出されたが、日本は国連海洋法仲裁裁判所を設置して命令の妥当性を争い、2000年8月4日ITLOSには管轄権はなくミナミマグロ保存条約関係各国で話し合うべきであると言う判決が出され日本は全面勝訴した。日本はミナミマグロ保存委員会の機能強化策として科学委員会と諮問委員会を設置し科学的資源評価法の指導権を発揮した。と同時に条約国は韓国、台湾等の海賊船追放を強化するため、韓国、台湾の条約枠組み参加を勝ち取った。  

日銀新総裁候補  自民・民主で模索

2008年01月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年01月19日03時00分
与野党、複数案で調整 日銀新総裁 空白回避へ事前協議
 3月に任期満了を迎える日本銀行の福井俊彦総裁の後任人事で、民主党は18日、政府・与党から候補者の提示を受けたうえで、党独自の候補者も提案して協議する方針を固めた。政府・与党は武藤敏郎副総裁の昇格を軸に調整する意向だが、国会不同意になれば空席となるため、民主党側に事前協議を求めている。民主党も総裁の空白期間は避けるよう協議に応じる方針で、与党と民主党は複数案をもとに調整を進めることになりそうだ。
 小沢氏は18日、旧大蔵省出身の藤井裕久党税制調査会長とも協議し、具体的な人選に着手。党内では、財務省など官僚出身という理由だけで反対しないが、「財金分離の原則から、財務当局の事務最高責任者がなるのは違和感がある」(岡田克也副代表)として、財務事務次官経験者は避けるべきだ、などという基準が挙がっている。

日銀のお仕事は金利の監視役、紙幣の印刷役 
国会承認人事はねじれ国会で面白くかつ透明になる

高級ワインなら満足感がえられる

2008年01月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年01月19日07時22分
高級ワイン、飲むと脳が満足? 米研究者が論文発表
 高級とされるワインを飲むと、おいしいと感じやすいだけでなく、脳が経験的に値段に反応して満足感を得やすい傾向があると分かった。米カリフォルニア工科大の研究者がこのほど専門誌に研究論文を発表した。 研究者は20人にさまざまな値段を付けたワインを試飲してもらった。その結果、全員がたとえ同じワインであっても、高額な値段を付けられた方をおいしいと回答。同時に脳の働きを調べたところ、「高級」と言われたワインを飲む際には無条件に、脳の満足感や喜びを促す部分の活動が著しく活発化していることが確認された。(時事)

脳科学の研究ではなく、消費者行動(心理)で説明できる。
理性と感情のダンスー行動経済学最前線ー神経経済学の誕生 友野典男著「行動経済学」より
「経済人は感情に左右されず、専ら感情で動く人種である。経済人は市場は重視するが、私情や詩情には無縁である。金銭に触れるのは好きだが、人の心の琴線にふれることはない。」と友野氏の面白い表現がある。近年心理学や神経科学者によって感情の積極的な役割、即ち感情がなければ適切な判断や決定ができなことが解明されつつある。すなわち「感情が主導してあとから合理的な判断がついてくる」と主張するのである。あらゆる知覚にも何らかの感情が伴い、茂木氏が提唱する「クオリア」の世界があるようだ。判断や決定はシステムⅠに属する感情や直感と、システムⅡに属する思考との共同で行われる。経験による快・不快の身体感覚が、推論や意思決定では重要な役割を演じる。これをソマティックマーカという。これら人間の意思決定行動についての理解を深めようとする神経経済学なるものが提唱されている。感情を支配する大脳辺縁系で感情や好悪などの判断に関わるのは海馬や扁桃体、帯状回、側座核である。また快の感覚を生むシステムを報酬系といい、脳幹の腹側被蓋野が刺激されて側座核、前頭前腹内側皮質、眼窩前皮質、前帯状回皮質に情報が伝えられドーパミンと神経伝達物質が放出される。

読書ノート 武田邦彦著 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか 2」 洋泉舎

2008年01月19日 | 書評
地球温暖化、バイエタノール、ペットリサイクルの環境問題のウソ

地球温暖化防止枠組み条約「京都議定書」(1997年)での欧州・米国の政治的狙い (4)

地球温暖化防止条約が斯くも政治的問題に変形されたといえども、誠実に努力すれば本当に地球温暖化防止に役立つのかと云う疑問が湧く。この節では「地球温暖化に関する政府間パネル」IPCCが2007年2月に出した第4次報告書にしたがって地球温暖化予測を見て行こう。第4次報告書第一作業部会報告(英文)はhttp://www.ipcc.ch/ipccreports/ar4-wg1.htmで閲覧できる。IPCCと云う機構は1988年に設立された国際的気候変動研究機構であり、研究者の集まりで現在の科学的見解を知る上で欠かせないものである。科学的議論はここから始めなければならない。メディアや環境省や専門家はここから都合のいいデータのみを切り抜いて発表するので、おかしいと思ったらIPCCの報告書で検証すべきである。気象庁から第4次報告書第一作業部会報告書(日本語訳)「政策決定者向け要約」が出されている。こちらは日本語なのでお勧めする。URLはhttp://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.htmlである。先ず過去百年(1906-2005)の地球の温度は0.74℃上がった(詳細に言えば1900前後と1940年から1970年までは寒冷期があった)。地球温暖化の原因は7%が太陽活動で、93%が人間の活動である。炭酸ガスの影響は53%、メタンやフロンの影響が31%、オゾン層破壊が10%である。地球温暖化の原因のうち炭酸ガスの影響は0.93×0.53=0.49であり、ほぼ半分が人間が出す炭酸ガスによる。IPCC内部でも異論があるが、異論は記述されている。海面水位は過去40年(1961-2003)で70mm上がった。毎年1.8mmの上昇と云うことになる。海面上昇の原因は海水の温度による膨張が0.42mm、大陸の氷河の溶融が0.5mm、南極やグリーンランドの氷床の溶融は0.19mmとされる。いつもテレビに出てくるクリーブランドの氷床崩落映像(季節的な通常現象)は映像効果を高める故意の誤報か錯覚の報道である。北極の氷床はもともと水の中にあるのでアルキメデスの原理で解けても容積は変化しない。(厳密には密度の温度依存で寧ろ縮小し水位は下がる)そこで結論であるが、過去40年間の海面上昇は70mm(100年では160mm)、これを大きいと云うのか、なんだそんな程度かと云うのかは読者の理性に任せる。いずれにせよ地球表面の大変動という事態は経験したことがない。


文芸散歩 日本の乱世  室町時代を歩く

2008年01月19日 | 書評
戦乱に明け暮れた南北朝から戦国時代、混乱の中から豊かな日本文化が興った室町期

2) 山崎正和著 「室町期」 講談社文庫  第2回

本書「室町期」(講談社文庫)は1974年朝日新聞社から刊行された。著者は1963年戯曲「世阿弥」によって、将軍義満を光の存在とし世阿弥を影の存在とする、乱世の世における芸術の存在理由を追求した劇作家でもある。しかし私は劇作家よりは評論家としての山崎氏を読んできた。陰のような室町幕府の将軍の存在と乱れに乱れた戦乱の武将の戦いばかりが目立つ中世は分りにくい時代であった。この「中世」と云う言葉も正しくない。中世は平安時代から鎌倉じだいをさし、室町時代は近世と云うほうが正しい。この14、15世紀の時代は世界史的にはルネッサンス期に相当し、山崎正和氏の「室町期」は明らかに室町から戦国時代を文化的にはルネッサンスとして日本的文化の開花期としている。そして政治経済史的には、中央集権体制から分裂小国家群の乱立と価値観の多様的並立、貨幣経済の成立と商人・土豪といった中間階層の自立と捉えている。したがって本書は前半が室町期の政治・社会史、後半が文化史という構成である。勿論本書の主眼が文化史にある事は当然である。