安倍首相が27日突然ぶち上げた「全国小中高一斉休校」の「要請」(事実上の強要)は、児童・生徒、父母、教育現場、医療・自治体関係者に衝撃と不安を広げています。
コンビニの同僚パート主婦(小5の母)は、「学童保育の方が感染の不安が大きい。一人で家に置いておくしかない」と頭を抱えていました。
武藤芳照東大名誉教授(身体教育学)は、「政府による全ての小中高校や特別支援学校への臨時休校の要請は聞いたことがなく、学校教育の歴史の中で大きな前例となるだろう」とその異常さを指摘するとともに、「突然の表明は学校現場を混乱させるだけでなく、社会の閉塞感を加速させることも懸念される。抑制ばかりを求めるのではなく、その先の展望も示し、人々が前向きになれるよう丁寧な説明に努めることが今求められる政治の役割ではなのか」(28日付沖縄タイムス)と話しています。
また、「休校は感染拡大防止に一定の効果がある」とする森田公一長崎大熱帯医学研究所所長(ウイルス学)も、「首相が感染の広がっている地域だけでなく、全国に要請したことには驚いた」(同沖縄タイムス)と、安倍首相の異常さにあきれています。
安倍首相はなぜ、こうした異常・無謀な方針を、突然打ち出したのでしょうか。
安倍氏がもともと理性的な判断力に乏しいうえ、コロナウイルス対策で「後手に回った」「クルーズ船対策を誤った」などの批判が広がっていることに感情的に反発したこともあるでしょう。しかし、それだけではないでしょう。
数日前から、IOC(国際オリンピック委員会)の元副会長で最古参委員のディック・バウンド氏が、感染防止が最優先されるとして、東京五輪開催の可否判断は「引き延ばしても3カ月」と5月下旬に延期・中止を含めて判断すべきだと述べたと報じられました。
安倍政権はこれを、「個人的な意見だ」(橋本聖子五輪担当相、26日の衆院予算委員会)として無視しようとしました。
ところが、27日の時事通信は、東京五輪の準備状況を監督するIOCのジョン・コーツ調整委員長もオーストラリア紙に、「大会を予定通り開催するかどうかの判断まで期間は約3カ月との認識を示し」、バウンド委員の意見に「反対しない」と述べたと報じました(28日付東京新聞)。
コロナウイルス対策に関する安倍政権の無知・無能は国際的に批判を浴びており、IOC内でも東京五輪開催への不安・疑問が広がっていることが否定できなくなりました。
こうした状況に対し、安倍氏が「強力なリーダーシップ」を示そうとして無分別にぶち上げたのが「全国一斉休校」ではないでしょうか。
当初、クルーズ船の感染者数を「国内感染者」にカウントしなかったり、船内対策を軽視して感染を広げた不手際。そして今回の「全国一斉休校」。対応は場当たり的で大きくぶれているようですが、一貫していることがあります。それは、安倍首相がウイルス感染対策、市民の生活や生命よりも東京五輪を優先しようとしていることです。
安倍氏にとって東京五輪は、①国威発揚②政権浮揚③天皇制強化④自衛隊誇示⑤開催後の解散・総選挙⑥その先の政権延命―という政治的思惑のるつぼです。その党利党略・私利私欲のためにどんなことがあっても東京五輪を強行しようとする。それがコロナウイルス対策での安倍政権迷走の背景ではないでしょうか。