アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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闘う労働組合・関生への弾圧と日本社会

2024年04月02日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
   

 31日深夜(0:50~1:50)、MBSテレビ(TBS系)の「ドキュメント24」で、「労組と弾圧・関西生コン事件の真実」が放送されました(写真は同番組から)。

 連帯ユニオン関西生コン支部、通称関生。ミキサー車運転手の労働組合です。創立は1965年。年々組合員は増え、賃金はじめ労働条件の改善をかちとってきました。

 関生がそうした成果をあげることができたのは、産業別労働組合だからです。日本の労働組合の主流は企業別組合ですが、中小企業の生コン業界の関生は、企業の壁を越えて労働者が結集する産別組合です。経営側とも良好な関係を築き、企業の業績向上の力にもなってきました。

 その状況が一変したのは、2017年ごろからでした。17年12月のゼネストに対し企業側は「出荷妨害」を演出し、多くの組合員が逮捕され、10人が有罪判決を受けました(大阪ゼネスト事件)。

 京都でも2019年6月、「加茂生コン」の労働者4人が不当逮捕され、4カ月間酷暑の独居房に拘留されました。京都府警は取り調べの中で、釈放と引き換えに組合脱会を迫りました。

 卑劣な弾圧に屈しなかった吉田修さんは大阪高裁で無罪判決を勝ち取りました(写真中)。しかし検察は上告し、最高裁は無罪判決を破棄して審理を差し戻しました。

 関西各地で関生に対する弾圧が行われ、逮捕者は延べ81人に上りました。そのうち31人が裁判で闘い、10人が無罪判決を勝ち取りました。日本の裁判では画期的な勝率です。

 その一方、警察の弾圧・懐柔によって組合員は約10分の1になりました。

「裁判には勝っても、組合員の人生は奪われ、組織は壊される。それが組合弾圧だ」。勝利集会で湯川裕司支部長はこう訴えました(写真右)。

 吉田美喜夫。立命館大名誉教授(前総長)は、「憲法で「労働組合の活動」「団体交渉」「争議行為」が保障されている。労働法を勉強してきた者として(関生への弾圧は)見過ごすわけにいかない」と事態の重大さを指摘します。

「闘う労働組合がうとんじられ、弾圧される。この現実から目をそらしてはならない。働く者の自由と権利がこの国から奪われないために」―番組はこのナレーションで終わりました。

 連合の発足を機に労働運動の右傾化が急速に進み、ストライキもまれになった日本。そんな中で関生は本来の労働運動を追求し成果を上げてきました。だからこそ国家権力は関生を目の敵にし警察・司法を使って弾圧してきました。

 この背景には、利益のために労働者を犠牲にする新自由主義があります。そしてそれに取り込まれ、ストライキ・労働組合を嫌悪する日本市民の権利意識の稀薄さがあります。
 関生弾圧はこうした日本の根本問題が噴出したものであり、関生組合員の闘いはそれに抗って労働者・人間の権利と尊厳を守る闘いです。

 なお、こうした優れたドキュメントが制作されたことはたいへん評価されますが、その放送がこの時間帯であるところに、日本のメディア状況が表れています。こうした番組こそ、ゴールデンタイムに放送すべきです。

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