昨年末から京都と東京に出かけ、
山口華楊展、須田国太郎展、エル・グレコ展、国立近代美術館開館60周年特別記念展を鑑賞しました。
ひとつ一つの展覧会は素晴らしく、印象に残った作品も数多くありましたが、
「私はやはり今年もこの絵から出発するのだ」と思えた作品が
国立近代美術館所蔵の高山辰雄 「いだく」 です。
1977年(昭和52年 作家65歳)
改組第九回日展出品作 紙本彩色 212×198cm
この作品を目前で観たのは一昨年に続き2回目でしたが、
今回の再会にも深い感動を覚えました。
内側から光を発するような幼子の微笑み。
それを抱く二人の人の溶け合うような表情、今まさに抱く手。
生きるということの美しさと重み、そして人間のどうしようもない哀しさが
一切の無駄なく表現されている名作だと思います。
高山辰雄氏は平成19年95歳で亡くなられましたが、
作家が描き残した作品の数々は静かな、しかし鋭い力を持って、
先ばかりを急ぐ私達の歩みを一瞬に止めてしまいます。
形や色を通して感じるもの。
それこそが絵画の全てであるならば、力強くその深淵に道を進めてみよう。
「いだく」は私にその勇気を与えてくれる作品です。
立春までの冬土用の日々は寒さが厳しく、体調を崩しやすい時期だと聞きました。
皆さまどうぞ温かくおすごしくださいますように。